2008年12月01日

発達段階に応じた指導とニセ科学3

の続きです。

この話題、ずーっと気にはなっているのですが、悶々とするばかりでなにも書けず。このエントリの最後にご紹介しますが、何人かの教職経験者や現職の教員の方の議論への参加もあって、かなり膨大な量のテキストが書かれています。さまざまな論点が上がっており、おそらく、単行本ぐらいのボリュームがあります。これをいきなり読みこなすのは至難の業で(それどころか、追っていくのもかなり大変)なので、黒猫亭さんの提起した問題の要約を再度ご紹介します。
黒猫亭さんの疑問は、極論化すると「【1】どれほど理想的な環境にあっても、『受け手の程度を踏まえて教える』という方法は、一定の『誤りの混入』を許すのではないか」「【2】教えることに慣れている者は、『誤りの混入』にも慣れ、その問題を軽視するようになるのではないか」「【3】その結果、ニセ科学的なものなどが入り込みやすくなる事態が起きるのではないか」
でこう要約したときに、黒猫亭さんからご意見はいただいているものの、まあ大筋では合っているんだと思っています(いただいているご意見については、2のコメント欄をどうぞ)。

ただ、最近のやりとりを読むに、ぼくには本題と異なると思われる部分でちょっと気になる話題があるので、本日は交通整理のつもりでそこら辺について少し。うまくできるかどうかわからないけど。


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posted by 亀@渋研X at 02:48 | Comment(30) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 発達段階に応じた指導とニセ科学3

「水からの伝言」は、なぜ授業に用いられたのか

実際に小2・道徳の研究授業で『水からの伝言』を教材にしてしまった教員の方に、お話をうかがったことがあります。そのときに聞いた内容に基づいて、順不同で「どうして授業に使ったか」を、ちょっと列挙しておきましょう。おひとりだけの例だということにご注意ください。また、わたしの推測も含みますが、その場合は末尾にそれを示しました。

  • 合目的的:「ことば使いを正す」という目的に適っていると思えた
  • 合目的的:ビジュアルがわかりやすく、教材に好適に思えた
  • 共感:自分自身が写真に感動した。そういうものを教材にする方が説得力があると考えた
  • 類推:「植物に音楽を聴かせるとよく育つ」という話と類似すると思った
  • 信頼性:「実験で確かめられている」と書かれていた
  • 信頼性:多数の実践例がある(TOSSを指すのかどうかは不明)
  • 信頼性:商業出版物になっている
  • 簡便性:指導案としてできあがっているので使いやすい(推測)
  • 独自性:(陳腐化する前は)オリジナリティの高い指導案に見える(推測)
  • 切迫感:冒頭の指導について、即効性のある教材が欲しい(推測)
  • 切迫感:目前に迫る研究授業等での発表に使える題材が欲しい(推測)


付記すると、「最初は半信半疑だった」とのことだったので、「他の教員には意見を求めなかったのか」と問うと、それはしていないとの回答でした。ひとつには、個々の指導案作りではそうした習慣がないということ、もうひとつには多忙が背景にあるのではないかとぼくは推測しています。


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posted by 亀@渋研X at 02:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 「水からの伝言」は、なぜ授業に用いられたのか

「水からの伝言」浸透と批判の経緯

別件とも関連するので、「水からの伝言」がどのように広がったかの経緯を、ちょっと簡単にまとめておきたいと思います。厳密な正確性はともかくとして、ぼくはおよそ次のような経緯だったととらえており、29日にアップした略年表と読み合わせてみても、ほとんどの場合はこの程度の理解で足りるだろうと考えています。
  1. 1999〜2000年頃 『水からの伝言』(1999)が隠れたベストセラーになる
  2. 2000年頃〜 テレビで採り上げられたり、TOSSで実践例が出てくる
  3. 02〜04年頃 実践例が多数報告されるようになり、一部の論者に問題視されるようになる
  4. 03〜04年頃 メディアで紹介される例も増え、身近に水伝授業を体験したケースなどが出てくる
  5. 05年頃 少なくとも「ごく一部」とは言いにくい数の教員が引っかかっているらしいことが明らかになったことで、より問題視されるに至り、多くの批判記事などが公開される。
何年頃と書くともっともらしいですが、印象や記憶によりかかっている部分もあります。一部は略年表で確認できますが、すべて裏付けられるわけではありません。

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posted by 亀@渋研X at 01:12 | Comment(0) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 「水からの伝言」浸透と批判の経緯