2008年07月04日

予防接種忌避の先にあるもの

別の記事を書きかけていたのだけど、ちょっとぎくっとする記事を読んでしまったので、予定を変更。

ナイジェリア北部でポリオ患者が急増、5年前の流言が影響(AFPBB News 2008年07月01日)
急進的なイスラム聖職者や一部の医師が「ポリオワクチンには少女を不妊にする物質が入っている。アフリカの人口の減少を狙った米国をはじめとする西側諸国の陰謀だ」と主張。これを受けて同州当局は2003年、ポリオワクチンの子どもへの接種を13か月間停止した。
 その後、国内外での臨床試験でワクチンの安全性が確認されたことを受け、ワクチン接種が再開された。だが、そのころまでには、ポリオが絶滅したと考えられていた西アフリカの他国へもカノ州からポリオが拡散してしまった
(赤字は引用者による強調)
日本でも一部に予防接種不要論があり、忌避するケースがあることを思い出してしまったのだ。

ナイジェリアのケースでは州単位で1年ほど接種を停止してしまったわけで、一部の人が受けないようなケースと直接的に比較できるわけではない。しかし、影響が大きく出るとこういうことになる、という見本ではある。

インフルエンザのことも思い浮かべてしまう。罹患して、たとえば成人男性がタミフルを処方され、症状が治まるととっとと出勤する、なんてことが起きているようだ。タミフルは「ウイルスの増殖を抑える薬」であって、それが症状の悪化(劇症化)を防ぐ。そのため、症状が治まっても処方された分を飲み切るまで自宅で静養する必要がある。そうしないと、ウイルスをばんばんまき散らしてしまうのだ。
タミフルは高リスク群に用いるのが基本とされている。健康な成人男性の場合、高リスク群とは言えない。ということは、これではタミフルを処方する意味が半分の半分になってしまうようなものだ。

新型インフルエンザの発生後も、「どうせ風邪でしょ?」と予防接種を受けず、罹患してタミフルのような薬を処方され、少しばかり症状が軽快すると保菌者でありながら満員電車で通勤を始める……そんなことも起きそうで、暗然とした心持ちになる。

予防接種や治療、あるいは自宅静養などという「一人ずつのちょっとした選択」にしか思えないような行動が、実は社会的なリスクを増減していると言われる。それが、ナイジェリアのケースで図らずも確認されてしまったようにも思える。
それとも、このケースをベースにしてそんなことを言うのは飛躍し過ぎだろうか。
posted by 亀@渋研X at 00:48 | Comment(2) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 予防接種忌避の先にあるもの
この記事へのコメント
輸出大国日本(品目:はしか)、という話を思い出すのはもちろんですが……。
 
つい、
「アフリカの人口の減少を狙った米国をはじめとする西側諸国の陰謀」
というあたりも気になってしまいます。
 
「メンソール煙草には男性を性的不能にする成分が入っている。これは、我が民族を根絶やしにしようとするアメリカの陰謀だ」
という説は、戦時中に始まって現在まで根強く残っているわけですが。
(「ハイボールを飲むと性的不能になる」
「ナイロンパンツをはくと(略)」
「ロック音楽を(略」
など、亜種も数多く)
 
その背後には、
「黄禍論を背景に、アメ公が何を仕掛けてくるか分からない」
という発想があったと思います。
(だから、やり玉に挙がるのは常に輸入品)
陰謀だけど、実際に「敵意」を感じていたことも背景にはあったのではないかと。(いや、帝国日本はわりと自発的に敵意を招いていた気もしますが)
 
今、ナイジェリアで起きているのもそれと同様に思えます。
例えば、途上国のCO2がどうしたこうした、という議論などが、先進国からアフリカへの「敵意」を感じさせてしまっているのかなあ、などと思えてなりません。
(それとも、その他の政治的対立もあるんでしょうか? 移民問題とか?)
 
……実は、この流言こそ、アフリカの人口減少を狙った(略)
Posted by filinion at 2008年07月19日 19:22
>実際に「敵意」を感じていた
あるのでしょうねえ。
単に気に入らないヤツ=怪しいヤツってのもありそうではありますけれど、陰謀論って、おおむね疑心暗鬼の果てってなものなのかもしれませんね。
Posted by 亀@渋研X at 2008年07月23日 15:57
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