http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm
今のところ他紙にはこの話は出ていないもよう。
同記事のはてブ
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20080718-OYT1T00613.htm
Yahoo!ニュースの方の記事についたはてブ
http://b.hatena.ne.jp/entry/http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080718-00000050-yom-sci
Yahoo!ニュースの方は、「この話題に関するブログ 35件」かぁ。大半はウノミにしているか、「ほら見ろ、やっぱり」式の反応のようだ。
こちとらは「水素水」と聞くと、「あやしくない?」と警戒心が働いてしまう。いや、なんの知識もありません。ただの偏見ですが。
で、日本医大の太田成男教授とお名前が出て来るので「太田成男」でググって見ると、トップでヒットするのがこれ。
水素水|株式会社ブルー・マーキュリー
http://www.bluemercury.co.jp/
「News」のトップにこんな記述が。
2008/07/04そうですか、顧問なんですか。ご本業よりも、こちらがトップでヒットするんですね。
弊社顧問である太田成男教授の論文
「Consumption of molecular hydrogen prevents the stress-induced impairments in hippocampus-dependent learning tasks during chronic physical restraint in mice」が神経精神薬理学誌「Neuropsychopharmacology」に掲載されました。
まあ、その手のメーカーの顧問だから怪しい、とは言えない。うん。
「News」には、ほかにも「日本医科大学」「太田成男教授」ががんがん出てくる。水素水関連の論文も今回のが初めてではないもよう。同社の寄附研究として、日本医科大学内に「水素分子医学研究開発拠点」(略称:水素医学)を設置、なんて話も出ている。大学のサイトにも説明がある。専用サイトもある。
今回の論文だけでなく、「Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals」という論文もあって『Nature Medicine』誌に掲載されたなんてことも出ている。会員じゃないので、論文そのものにはたどり着けなかったけど。
ほかに検索でわかったこととしては、『ミトコンドリアのちから』(新潮社)の共著者ということ(瀬名秀明氏との共著)。この本は未読。この本についての書評も見つけられなかった。
水素水ってなんなのか、これも、ググってもよくわからなかった。前述のブルー・マーキュリー社によると、こういうもの。
Q:どういう水なのですか?で、「おいしい水素水」という商品を売っていて、こういう商品説明をしている。
A:通常、水は酸素と2つの水素でできていますが、この水は特殊な製法によって多くの水素を溶存させた水です。電気分解などをおこなわず、含有水素量が0.350ppm〜0.450ppm、酸化還元電位は-300mv〜-500mvを示し、pH(ペーハー)は中性域を維持、活性酸素を水素によって中和してくれます。
おいしい水素水「還元力」というのも、ぼくにはなんのことやらさっぱりだ。
メキシコ「ドラコテの水」、ドイツの「ノルデナウの水」を代表とする「奇跡の水」が高い還元力を持っている ことをヒントに、独自の技術で「水素」を多分に含有させた「還元力」である「中性の水」=それが「おいしい水素水」です。水素は悪玉活性酸素を消去し善玉活性酸素は残すことが細胞実験で分かりました。
そういえば、「溶存酸素」という言葉があったなあ、じゃあ「溶存水素」という言葉もあるかも、とググる。と「溶存水素計」という計測器がヒット。
(株)アプリクス-溶存水素計
http://www.applics.co.jp/dhe.html
ちゃんとした会社のちゃんとした計器に見える。
はてブ(Yahoo! ニュースの方についたこれ)には「2008年07月18日 ezookojo や、水素を含む水というのは妥当。水素は水に一応溶けるから。論文でも飽和水素水を使ってる。http://www.nature.com/npp/journal/vaop/ncurrent/abs/npp200895a.html / 字面上は誰もこんなん試さねーよを開拓した感がある、んだが…」なんて書かれている。
また、このはてブについているコメント群から察するに、太田論文の掲載誌は、まともな査読付きの学術誌らしい(『Nature Medicine』は、あの『Nature』の兄弟誌なのかな?)。
Wikipediaには「活性水素水」の項目があり、「水素水」はここにリダイレクトされる。
「用語としては、学術用語なわけではない」なんて見ると、マイナスイオンをいやでも思い出す。
で、ここに書かれているように、水素水=活性水素水=「活性水素」が溶けているといわれる水……ってことでいいんでしょうかね(同じだとしても、ぼくにはなんだかわからないのは同じことなのだが)。
ただ、太田教授も同じ主張なのかどうかはわからなよな……と思ったら、ちゃんと太田教授も出ている。ただし、18日の夕方に、この新聞記事が参照されて、記載された模様だ(汗
結局、これという情報にはぜんぜんたどり着けない。
そういえば、先日のWESも水であり水素であった。水素とか水について勉強せいという神または、きくこま博士の思し召しであろうか。
小波秀雄『水素がわかる本』工業調査会 (2005/04)
http://www.amazon.co.jp/dp/4769371373
左巻健男『水はなんにも知らないよ』ディスカヴァー・トゥエンティワン (2007/2/25)
http://www.amazon.co.jp/dp/488759528X/
>マイナスイオンを嫌でも思い出す
まさに同じ構図だと思います
・それぞれの提唱する活性水素水が同じものであるとは限らない
・それどころか活性水素というものがホントに含まれているのかわからない
そんな状態でいろんな会社から活性水素水関係の製品が出てくる予感…
消費者が利口にならないと…マスコミは頼りにならないからなあ…
水素水商品は、すでにいろいろあるようです。なんか、酸素水みたいなのも一時ありましたよね。
もちろん、個々にはいろんな理屈のものがあることでしょう。そこに太田論文は、「ひとしなみにお墨付きを与えてしまった」ということになりはしないかと危惧しています。
これは懐疑的に見ておきたい記事ですね。そもそも、動物実験の結果から(これ自体、どれほど信頼出来るものなのか…)、いきなり人間への効果を云々するのも、とても早計ですし。
実は、CSでは、「ドクター水素水」という商品の宣伝が、ばんばん流れてます。
Neuropshychopharmacologyは、American College of Neuropsychopharmacologyという学会のオフィシャルジャーナルで、インパクトファクターも精神医学領域で上から5番目(6.157)と、非常に引用率の高い一流誌です。
フルテキストへのアクセス権を持っておらず、わざわざ30ドル支払って、Pay per Viewで購入するほどでもあるまいと思い、詳しい内容は読んでいませんが。
どなたか、施設で購読されている方とかいらしゃいませんか?
また、Nature Medicineは、こちらのインパクトファクターは、28.878と非常に高い引用率を誇ります。どちらも、Nature発行元のNature Publishing Group発行が発行している雑誌です。こんな雑誌によくぞ掲載されたなーって思いますが、臨床じゃないですからね。
なんでオンラインに出てから1ヶ月もたって新聞記事になったのか事情はよくわかりませんが、ちょっと精読してみたい気持ちはありますが、個人で1論文に30ドルはちょっとなーと思ってます。私自身の仕事にはまったく関係ないので。
>いつもROMにて
ごひいいきにどうも。でも、それじゃ、「通りすがり」じゃないような(^^;;
そんな有名かつ有力な雑誌なんですか。水素水がなんだかわけわからない概念だとしても、太田論文自体はちゃんとしたものだってことなんでしょうかね。
だとすると、じきに評判が聞こえて来たりするのかなあ……。
東京都公立図書館横断検索(http://metro.tokyo.opac.jp/)はもちろん、図書館の本の横断検索(http://www.jcross.com/bibcrs/bibcrs2mnu.html)で、全体検索にしてもヒットしませんねー。
日本では滅多なこっちゃ読めない? と思ったら、「蔵書 Neuropsychopharmacology」で、ac.jp限定でググると、60件前後ヒットしますね。
www.lib.mie-u.ac.jp
www.kumamoto-hsu.ac.jp
syllabus-pub.yz.yamagata-u.ac.jp
www.library.tohoku.ac.jp
……と来て
www.nul.nagoya-u.ac.jp
www.okinawa-u.ac.jp
www.ul.hirosaki-u.ac.jp
www.bss.ac.jp
www.isc.tokushima-u.ac.jp
www.okayama-u.ac.jp
まで56件か。
あー、一部「The International Journal of Neuropsychopharmacology」とか「European neuropsychopharmacology」とかも引っかかってるなあ。
んー、地方の医学・薬学系の大学が多い?(地方はともかく、医学・薬学が多いのは当たり前か)
どなたか、チェックしてみてくれるといいんですけどねえ。
http://domon.air-nifty.com/dog_years_blues_/2008/07/post_e348.html
コメント欄(投稿 ともひこ | 2008年7月25日 (金) 14時13分)に情報あり。『実験医学』8月号に詳細が載っている模様。
これ↓かな?
http://www.yodosha.co.jp/jikkenigaku/
だから、マウスの記憶力低下を抑制するってことは、ほぼ確かだと考えた方がいい。
マウスと人間は違うと考えてもよいし、同じほ乳類なのだから、人間にも効果があるのではないかと期待しても、それは自由。ただし、論文にも新聞にも人間の認知症を予防するということは書いていない。問題ないでしょう。
どうですか?
ただし、活性水素とは無関係。Wikipediaの「活性水素水」の項からは太田成男教授は、もう除かれている。「活性水素水」とは関係ない事が明らかになったからでしょう。
実験医学の論文末尾には、活性水素とかマイナス水素イオンとは電解水とは無関係とわざわざ断り書きしてありました。
今や産学連携は当たり前だし、堂々と名前を出して顧問やってるなら問題はないのではないでしょうか?(隠れてやるのは問題)
動物実験によって効果が確認された事から、それが人間にも効果が見出されるのではないか、と期待するのは科学的に当然でしょうが、見出しの、「認知症予防に道」というのは、少々危ういかな、と思います。見方による、と言われればそれまでですが、新しい情報を流布する記事においては、出来る限り慎重かつ中立に記述する事が肝要であろうと考えます。
太田氏の研究については、「水素水」という語が用いら紹介されている事から、見る側にバイアスが掛かったのは確かだと思います。またか、という感じで。詳細を見る事無くウソであるかのように決め付けるのは、やってはならないと思います。
ただ、「疑う」という事は、「妥当であるかについて関心を持って調べる」、という意味も持っているので、「水素水」が、と見出しがついた記事について懐疑的に情報を捉えるのは、むしろ科学的に当然のプロセスかと思います。それが新奇なものであれば、尚更でしょう。たとえ査読月論文であっても。「水素水」という語を冠する商品が出回っている現状において、それがどういうものであるかを詳しく検討しようとするのは、妥当な姿勢なのだと考えます。
そして、こちらのエントリーは、それを確認するもの、と言えるのではないでしょうか。
この件については、瀬名秀明さんが詳しく説明なさっていましたね(「疑似科学批判」のくだりについては、少々引っ掛かるものがありましたが)。
上のコメント(Posted by TAKESAN at 2008年07月19日 12:17)で私が書いた文章の内、
▼▼▼引用▼▼▼
(これ自体、どれほど信頼出来るものなのか…)
▲▲引用終了▲▲
この部分は、早計であったと思います。見出しに引きずられてバイアスが掛かっていました。
コメントありがとうございます。コメント欄が不調のようで、ご迷惑をおかけしました。
ご指摘の点について、特に異論はありません。このエントリ、どこか不適切なところがありましたでしょうか。
なにしろ「水素水と活性水素水は別物なのかどうか」という点についてさえ、いまも瀬名秀明さんの書いたものしかWeb上にはなさそうなんです。本を探して読む余裕がなくてすいません。
また、その瀬名さんでさえ、太田教授が顧問をされているブルーマーキュリー社の「おいしい水素水」について「ただの水として飲むならいいのではないか」というようなことを書いています。つまり、メーカーが太田教授の研究に基づいて主張している効果効能(例によって「効く」ではなく「期待できる」というレベルの主張ですが)についてはスルーしています。ダイエット食品や健康食品のような説明で、ぼくとしてはかなり気持ちが悪いです。
また、読売の記事を読み返すと、確かにヒトについて云々という書き方はされていませんが、「認知症の予防や治療にも道を開く成果で」「認知症は活性酸素などによって神経細胞が変性する病気とされるが」など、ヒトへの応用を前提とした記述になっています。メーカーの「おいしい水素水」の広告があれなので、しかたないのかもしれませんが。
確かに研究を知った人がどのような期待をしても勝手です。しかし製品説明はもとより、新聞記事であればなお、書き手の憶測や願望などと、確認された事柄や発表内容は、より明確に切り分けて記述される方が望ましいとは思います。
TAKESANさんも、コメントありがとうございます。
>「水素水」という語を冠する商品が出回っている現状において、それがどういうものであるかを詳しく検討しようとするのは、妥当な姿勢なのだと考えます。
>そして、こちらのエントリーは、それを確認するもの、と言えるのではないでしょうか。
恐縮です。
>(「疑似科学批判」のくだりについては、少々引っ掛かるものがありましたが)
こちらですね。
引っ掛かる(Interdisciplinary 2008年8月13日)
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_6e6b.html
ぼくも瀬名さんの問題意識を理解できた気は、あまりしません。調べもせずに脊髄反射で「疑似科学だ」といい募るのは、なんとか還元水を信じるのといっしょ、という主旨はわかるし同意できるのですが。
まあ、脊髄反射しているつもりはないので、「きっとよその誰かのこと」と考え、同じことをしでかさないように振る舞おうと心がけてはいます。
が、怪しい話があふれている現今は、「怪しいかな? と思ったら調べよう」も大事だけど「これ、怪しくない? だいじょうぶ?」とか「メディアやメーカーは、怪しい言説をばらまかないでくれ」などと言い続けるのも大事だと考えています。
「内容に疑問」に含まれるニュアンスが、紫陽花さんと私とでかなり違うように感じます。
私の理解では、学術雑誌に掲載された事を根拠に「内容に疑問がない」と言う場合、それは「内容が正しい」という含意は全くなく、「論理的な破綻が見られない」「他人がこの文章(だけ)を元に正確な再現実験(再現思考実験)を行いうる」「したがって論文の主張に対して追試などにより他人が真偽を確かめうる」という事を意味します。
だいたい、査読者は基本的に論文を読んで掲載妥当性を判断するのが仕事であって、査読者が投稿論文の主張内容の真偽の保証まで担わされるようになったら、査読者はいなくなるでしょう。たとえ査読をするのがその道の専門家といえども、論文の字面の上だけから真偽が確実に判別できるような事は、いまさら学術雑誌には載らないでしょう。
学術雑誌は、教科書のように真偽がほぼ確定した成果だけを掲載するものではない──というのが、私の理解です。
TAKESANさんのブログ『Interdisciplinary』で、PseuDoctorさんが『論文の読み方』を連載(?)していましたが、「PseuDoctorさんが書く、『論文の読み方』(3)」(↓)
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_ecb7.html#comment-21164702
-----【以下引用】---------------
但し、ここで注意すべきなのは「編集部は論文の『正しさ』を保証しない」という点です。論文に全くの嘘を書くのは論外ですが、それ以外にも実験のミスや研究者の思い違いなど様々なエラーの可能性があります。しかし編集部は、論文を読んだだけでは判明しない間違いには責任を負いません。ですから、学術雑誌の掲載は決して正しさのお墨付きを与えるようなものではなく、むしろ「正式に学問の土俵に乗った」というふうに捉えるのが妥当でしょう。
-----【引用終了】---------------
という意見に、私は同意します。
>紫陽花さん「だから、マウスの記憶力低下を抑制するってことは、ほぼ確かだと考えた方がいい」
異論を主張するつもりはありませんが、私ならば、とりあえずは「他の専門家たちはどう感じている/考えているのだろう?」「追試の結果やその評判はどうなんだろう?」と考えますし、それは非専門家である一般市民として決して不当な姿勢ではない(むしろ望ましい姿勢)と思います。