2008年07月29日

【7/31追記】7/25、政府は「切れ目のない支援」と「育て直し」で、不適応な若者をどこまでも追いつめると声明(したわけじゃねえか?)

おはようコラム 「青少年対策 伝わらぬ熱意」(解説委員室ブログ:NHKブログ 2008年07月28日)
 東京・秋葉原や八王子で若者による通り魔事件が相次ぎましたが、そうした中、政府の総合的な青少年対策の方針を定める「青少年育成施策大綱」の新しい枠組みが先週25日に決定されました。

そうなの? なんか関係あんの? 「青少年育成施策大綱」と関連報道をググってみた。

当然だが、相変わらずの「紋切り型」「パターン思考」「ノスタル爺」なんかのオンパレードだった。これはあれか、教育再生会議とかいうのの負の遺産なのか。俗流若者批判の総まとめをして、丸呑みしましたみたいな話だな。
NHKによると「青少年」は「0歳から30歳未満」でしょ。なにこれ。

つまり、
  1. 犯罪を犯したり、ニート、フリーター、不登校だのというのは「育ち損ない」だと。いや、「育て損ない」かな。
  2. だから「育て直し」をやるぞと。
  3. 核家族化だの少子化だのインターネットだの、自然体験・社会体験の不足なんかが悪いと。
  4. んで、なんかやったら生育履歴まで遡って調べまくって矯正(育て直し)するぞ、と。
報道では具体的になにをどうするということに触れられていないためか、どっからどう突っ込んだらいいんだ、ってなもんに見える。

「育て直し」って発想は、ま、更生させるための少年法というところから言えば、当然かもしれないけど、それにしても乱暴だなあ。犯罪を犯しちゃうことと、ニート、フリーター、不登校と一緒なんですか。そうですか。
少子化や核家族化、ネットもそうだけど、とりわけひどいのが「自然・社会体験の促進」ってなんすか。自然体験や社会体験の不足がもろもろの原因だと、本気で思ってるんですか。いまどきの子どもって社会性がありすぎて、過適応を起こしてるんじゃないかって話とか、聞いたことないのか。
「すべての組織、個人が、相互に連携・協力し、社会総がかりで解決を図る」って、これは「切れ目のない支援」とかいうもんじゃねえなあ。あのさ、まずは行政機関の横のつながりを、もうちょっとなんとかすべきなんでないの? あ、そうか。それができないから、世間に丸投げか。
しかし、これは要は相互監視網の強化というか、とことんがんじがらめというか、よってたかって「親兄弟も含めた、全人生についてのダメ出し」をやるぞ、しかも徹底的にやるぞ、と。厳罰化にも反対が多いから、家族ぐるみ真綿で首を絞めるぞ、ということかしらね(なんか、封建時代にそう言うのなかったか。さらしもの? 御家断絶? 村八分? あ、それとも「非国民! 恥を知れ!」ってやつ?)。
ジョージ・オーウェルか、できの悪いSFかと思っちゃいます。電波男とかは、怒るといいと思うよ。

せめて、1(犯罪、ニート、フリーター、不登校など)と3(核家族化、少子化、インターネット、自然体験不足、社会体験不足など)に、ちゃんと因果関係があるのかとか、そういう検討からしようよ。

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21:40追記:
青少年育成施策大綱(平成15年12月9日推進本部決定)
新しい「青少年育成施策大綱」の枠組み(平成20年7月25日推進本部決定)
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7/31追記
はてなブックマークで情報源を教えていただきましたのでご紹介。
2008年07月31日 mic1849 education, politics まだ「ご意見募集中」、リンク先から議事が辿れます→http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/taikou/wakugumi/bosyu.html|今までの施策の実施状況→http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/yhonbu/kaigi5/kaigi5.html
ありがとうございます。
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以下関連報道。少ねえなあ。見直しだからなのかなあ。どうした大手新聞。

青少年育成大綱改定で骨子−政府 (時事通信出版局 内外教育研究会 2008年07月25日12時29分)
 政府は25日午前、青少年育成推進本部(本部長・福田康夫首相)の会合を開き、年内に改定する青少年育成施策大綱の骨子を決めた。不登校や引きこもりなど問題を抱える青少年に対し、関係機関が連携して切れ目のない支援を行う「育て直し」に取り組むことなどを盛り込んだ。
  骨子では、行政機関による子育て家庭への積極的な働き掛けやインターネット上の有害情報対策などもうたった。
 同大綱は2003年12月に策定され、5年後の今年は改定時期に当たる。会合で福田首相は「青少年の犯罪は大人社会の反映であり、青少年の育成にさまざまな影響を及ぼしている社会のあり方を考えることが大切だ」と述べた。(了)

青少年の犯罪は大人社会の反映=首相(2008年7月25日13時2分配信 時事通信)
政府は25日、青少年育成推進本部の会合を開き、年内に改定する青少年育成施策大綱の骨子を決めた。会合で福田首相は「青少年の育成にさまざまな影響を及ぼしている社会のあり方を考えることが大切だ」と述べた。

ニート・引きこもり対応強化を明記 次期青少年大綱骨格(NIKKEI NET(日経ネット) 2008年7月25日)
 政府は25日午前の青少年育成推進本部(本部長・福田康夫首相)で、2008年中をめどにまとめる次期青少年育成施策大綱の骨子を決定した。増加傾向のニートや引きこもりへの対応や、インターネット上の有害情報などへの対応強化などを明記した。首相は「行政のみならず家庭、学校、地域が一体となって支援を切れ目なく行う必要がある」と述べた。
 児童虐待の早期発見や引きこもり、ニートへの対応では、個人の成育歴を踏まえ、関係機関が連携して「育て直し」が必要だと指摘。若者の安定就労に向けた「切れ目のない支援の強化」を打ち出した。 (14:36)

不登校・引きこもり「育て直し」を支援…青少年施策大綱(2008年7月25日11時01分 読売新聞)
青少年育成推進本部であいさつする上川少子化相(中央)、右は福田首相=田中成浩撮影
 政府は25日午前、青少年育成推進本部(本部長・福田首相)の会合を首相官邸で開き、今年末にまとめる新たな「青少年育成施策大綱」の枠組みを決定した。
 不登校や引きこもり、ニートなど、問題を抱える青少年への対応策として、地方自治体、学校など関係機関が協力して、しつけや教育をやり直す「育て直し」などを支援する方針を新たに打ち出した。
 「育て直し」については、幼少期の家庭環境が要因となって、その後の成長過程で不登校や引きこもり、ニートなどの問題につながるとの指摘があることから、しつけや教育などの履歴を含めて相談を実施し、安定した職業に就くまで支援する態勢の構築を目指す。
 これらの施策を進める上で、国や地方自治体のほか、非営利組織(NPO)など地域のネットワークを活用することも盛り込む方針。このほか、〈1〉インターネット上の有害情報の規制〈2〉乳幼児期の教育の重視〈3〉自然・社会体験の促進――などの柱を掲げている。
 同大綱は、青少年を育成する上での政府の基本方針をまとめたもので、2003年12月に初めて策定した。
 5年ごとに見直すことにしており、今回決定した枠組みに対する意見を国民から募集し、年末に新たな大綱を決定する。

家庭支援にも力点 青少年育成施策大綱の改訂骨子決定(masn産経ニュース 2008.7.25 10:02)
 政府は25日午前、青少年育成推進本部(本部長、福田康夫首相)を首相官邸で開き、年末に改訂する青少年育成施策大綱の骨子を決定した。平成15年にまとめた現行の大綱は子供の成長段階に合わせた支援のあり方に重点を置いていたが、改訂版では子供を育てる家庭にも支援の光を当て、NPOや教育・福祉関連企業の協力も得ながら「家庭を開く」取り組みにも力を入れたのが大きな特徴だ。
 上川陽子・青少年育成担当相はこれまで、大綱改定に向けて有識者を交えた会議を12回行ってきた。この中で有識者からは、核家族化や共働き世帯が増えたことで子供と両親とが一緒に過ごす時間が減り、家庭の子供を育てる役割が低下、子供の不登校やひきこもりにつながっているという懸念などが指摘された。
 一方で、行政や学校、地域社会の連携はこれまで通り必要だとしつつも、それだけでは限界があるとして、民間の力も活用する方針を盛り込むことにした。
 骨子ではこのほか、有害情報対策としての携帯電話のサイト閲覧制限(フィルタリング)の促進や、「生きる力」を育てるための自然体験の充実などについて、平成21年度予算から対応するとしている。

ニートら就労支援を柱に 青少年大綱の新枠組み(47NEWS 2008/07/25 10:02 【共同通信】)
 政府は25日午前、青少年育成推進本部(本部長・福田康夫首相)を官邸で開き、年内に策定する新たな「青少年育成施策大綱」の枠組みを決めた。通り魔などの無差別殺傷事件が続発する背景に雇用不安の増大があるとの指摘も踏まえ、ニート、フリーターの就労支援を含めた「切れ目のない支援」を柱に据えると明記。児童、生徒をインターネット上の有害情報から守るための施策の推進に力点を置く方針も打ち出した。
 枠組みは児童虐待、不登校や引きこもりへの対応が家庭、学校、関係機関による個別の対症療法に陥りがちだとの観点から「すべての組織、個人が、相互に連携・協力し、社会総がかりで解決を図る」ことが重要だと指摘。問題を抱えた青少年の成育歴に配慮した「育て直し」の視点に基づき社会的自立を果たすまで支援すると明示した。
 児童虐待の早期発見、対応のために、関係機関が保護者に積極的に働き掛けて「家庭を開く」取り組みを強化する必要性も強調した。

posted by 亀@渋研X at 13:44 | Comment(4) | TrackBack(0) | 学校とか教育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 【7/31追記】7/25、政府は「切れ目のない支援」と「育て直し」で、不適応な若者をどこまでも追いつめると声明(したわけじゃねえか?)
この記事へのコメント
おはようございます。

「育て直し」とはスゴイと思いました。
従来の学校や家庭での教育の欠陥はそのままにして、失敗作を修正するという発想ですね。彌縫策とも言う。

内実を想像すると、根本的な教育の改善策は思いつかないので、修正策を重ねるというアイデアではないかと。もし、「育て直し」がうまくいかなければ「育て直しのやり直し」という具合にしていけばよいわけですね。

Posted by zorori at 2008年07月30日 07:10
>従来の学校や家庭での教育の欠陥はそのままにして

その発想はありませんでした。
確かに、「根本的な教育の改善策は思いつかない」でしょうね。

一見いいことを言っているように見えるんですよね。みんな総掛かりでやろうとか、ある特定の問題行動だけじゃなくて全体像を考えようとか、オトナのあり方もうんぬんとか。ただ、それを「育て直し」というキーワードで結ぶと、どうにも怪しくなってしまう。
Posted by 亀@渋研X at 2008年07月30日 18:12
こんばんは。

少し、異議を立ててみます。

 文部科学官僚や何とか委員会の人には「根本的な教育の改善策」を立てる意図がないんです。
 学力などが不足している部分の人間だけを何とかすれば良い、と思っているんですから。
 今回提言を出した人たちは、いわば「現在のシステムでうまく行っている人たち」なので、現在のシステムの根本をどうにかしようなどという発想自体ありえません。

 勿論、企業が新商品を売り込むときのように「画期的」とか「これまでにない」とか「全力を挙げて」とかいう言葉は使うかもしれませんが、
「赤字覚悟のセール」で本当に会社を赤字にしてつぶすつもりの商売人がいないのと同様、今回の「提言」に盛り込まれる修飾語のほとんどは誇大広告に近いものだと考えて間違いないでしょう。

 どうやら、「ひきこもり」やら「ニート」やらと名づけられた人たち、それも何とかし易い30歳前後までに絞って、現状では経済的価値がないそれらの人たちに、経済的価値を持たせよう、という試みに見えます。
(ちなみに私の兄は50歳で引きこもってますが、対象にならないようですね)

 面倒くさいことを云々しなくとも、きちんと働けばきちんと生活できるだけの給与を確保するだけで、問題はずいぶん軽減されるように思います。
 私の周りの「ニート」や「引きこもり」の大半は、過重労働や、強制的に繰り返させられる転職におびえてしまった人たちですから。

 で、前述した「50歳引きこもり」のような例になると、職と給料を与えただけではどうにもならないので、初めて別の対策が必要になると思います。
 個人的には、簡単には解決しない人たちへの対策の方を提言して欲しいと思います。
 やれるもんなら、50歳の男に説教垂れて「立て直し」て見せてみろ、という気分です。
Posted by 憂鬱亭 at 2008年07月31日 20:09
異議……かしら。あ、そうか、意図があるかないか、ですね。
大元はそのままに放置して、「失敗作(zororiさん)」や「学力などが不足している部分の人間(憂鬱亭さん)」だけなんとかしようとしている、という見方の部分では共通していますね。
ぼくは、zororiさんは意図の有無については触れていないように思って読んでいましたが、確かに「思いつかない」だと「考えてはみたんだけど」という印象はありますね。

で、うん、この大綱においては「『根本的な教育の改善策』を立てる意図がない」のだろうと、ぼくも思います。思いつかないから諦めたのか、そういう任があるという位置づけでないと考えているのか、もう教基法改正で済ませたとかいうことなのか、よくわかりませんが。
でも、ここいくつかの政権は「根本的な教育の改善」をやりたいという意志を、ずーっと捨てていないように思います。改善の方向が、ここで話題になっていることとは違いますけど。読みようによっては、そのための布石とか地ならしのひとつとしての大綱という読み方もできるのかもしれません(まだ読みこなせていません)。

> 今回提言を出した人たちは、いわば「現在のシステムでうまく行っている人たち」なので、現在のシステムの根本をどうにかしようなどという発想自体ありえません。

あ、それはそうなのかも。

あれ? ぼく、なんか書いていることが分裂しちゃってますね……。ううむ、「意図」については、まだ咀嚼できてないんですね。すいません。

> 私の周りの「ニート」や「引きこもり」の大半は、過重労働や、強制的に繰り返させられる転職におびえてしまった人たちですから。

知り合いに、引きこもりの人たちの支援活動をずっと続けている人がいます。彼から聴いている限り、それは憂鬱亭さんの周囲に限らないようです。
ただ、彼の接触している範囲では「きちんと働けばきちんと生活できるだけの給与を確保する」で解決できる例は、あまりなさそうです。
全体像としては、それで解決できる例もたくさんあるのではないかと思えるので、支援が入るまでに深刻化した事例では、もうそれでは解決しないということかもしれません。

50代かあ。ぼく自身、なんというかボーダーな例なのかもしれないと思うこともあります。予備軍みたいな。一応、細々と仕事はしているのですが。

どういう層をターゲットとして施策を立てるかっていうのは、かなり重要だと思うんですよね。あんまり風呂敷を広げても、ろくなことはないんで。
だから、本当ならターゲットの分析/解析、原因の検討があって、施策の検討が初めて出てくるんだろうと思うのです。「すぐに手を打つ」のが「いいこと」とは限らない。
今回の大綱の見直し、まだブコメで教えてもらった資料をちゃんと読めていないのですが、5年間の検討がまともなものなのか、その成果を盛り込んだものになっているのか、そこら辺が気になっています。

ちょっと余談。
いま、ちょこっと仕事の資料として読んでる本の著者、渋井哲也は「生きづらさ系」という規定というか表現をしています。

生きづらさ系とは
http://homepage3.nifty.com/sbtetuya/whatikizurasa.html

全面的に賛同できはしないのですが、この人も地道なフィールドワークを重ねて来ている人らしいので、少なくとも一面をつかんでいるように思います。
だからどうってことでもないんですが(汗

ぐだぐだですいません。
Posted by 亀@渋研X at 2008年08月02日 12:31
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