はてなダイアリー > キーワード > ニセ科学
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%A5%CB%A5%BB%B2%CA%B3%D8
あちゃ。
最初は「疑似科学」の言い換えとして菊池誠教授が自身の活動で使用し始めた。ち、違うってば。
でまあ、とてもささいな部分なので編集しようとしたら、ぼくはまた「はてダ市民」ではなくなっていたのだった(はてなダイアリーを放置し過ぎなのでしょう)。_| ̄|○
しょうがないので、その他の思い出したことなどと一緒にここに書くのだった。誰か、あっちを直してあげてください。
#8/4 8:30追記 石田さんが直してくれました。ありがとうございます m(_ _)m。
こういう重箱の隅を除けば、はてなキーワードの説明は悪くないと思う。できれば、ニセ科学Wikiとか「ニセ科学入門」へのリンクなんかもあるといいのかも、とは思う。
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菊池くんは、かなり早くからマイクル・シャーマー『なぜ人はニセ科学を信じるのか』から取ったと言っている。キーワードの画面の上にも出ている、その本です(^^;; 邦訳は1999年に最初に出て、その後、分冊で文庫にもなっている。
ちょっとややこしいのは、シャーマーの本の原題は『Why People Believe Weird Things』であって、PsuedoScienceとかFake ScienceとかVoodoo Scienceとか、そういう言葉は使われていない。ということは、訳者の岡田靖史さんが言い出しっぺか?
いや、1999年以前にもニセ科学(にせ/偽科学)という表現はあったのです。疑似科学、似非科学(エセ/えせ科学)、トンデモ科学(とんでも科学)などという表現とともに。
たとえばテレンス・ハインズ『ハインズ博士「超科学」をきる―真の科学とニセの科学をわけるもの』という例もある。これは1995年に翻訳されている(2分冊の1冊めの方ね。同年出たPart 2の副題は「臨死体験から信仰療法まで〈Part2〉」)。
菊池くん自身の変遷は、彼のサイトの「ニセ科学関連文書」を見ると、96年には「擬似科学・似非科学」と呼んでいる(科学と科学のようなもの)のだけど、2001年の「水商売ウォッチングLIVE!とはなにか」ではニセ科学と呼んでいる。
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ひょっとすると菊池くんが再定義した、ということは言えるのかもしれない。けれども、それもおそらくは独力ではなく、apjさん(天羽優子さん)や、たざきさん(田崎晴明さん)、こなみさん(小波秀雄さん)、左巻健男さんたちとの議論のなかで再定義されていった、ということではないか。まったくの想像だけど、特に天羽さんとの議論が大きかったんじゃないか、なんてぼくは思ってる。
定義に関連して言うと、シャーマーが上記書籍で採り上げている問題は、怪しい話全般なのだ。オカルトとかも含んじゃっている。これは原題が「Weird Things」であることからもわかるように、そもそも「ニセ科学」というようなくくり方を指向していないってことなのだろう。
少なくとも、ここで菊池くんたちが採用したのは「ニセ科学」という表現であって、定義はシャーマーのくくり方とはまったく別ということ。
ニセ科学という言葉は、菊池くんが「ニセ科学入門」(2004年)を書いてWebに公開したり、kikulogを始めたり、特にNHKの視点・論点(2006年)、『AERA』や『世界』、朝日新聞などのマスメディアに登場したことで広まったということは言えるに違いない。だけれども、同時並行するように行われたいろいろな人が関わった取り組みも見逃せない。たとえば2006年に物理学会でニセ科学問題が採り上げられたり、「ニセ科学フォーラム」が行われたりしたこと、そしてそれらがメディアで(小さくとも)採り上げられたということは、とても大きかった。ここで挙げた例には菊池くん自身も関わってはいるけれども、菊池くんの個人的な活動では全然ない。
また、一般への認知を上げるには松永和紀『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(2007年)の力も大きいに違いない。
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ニセ科学という言葉が使われるケースが増えて来ている、とは思う。たとえば先にVoodoo Scienceという例を挙げた。これはロバート・L. パーク『わたしたちはなぜ科学にだまされるのかーインチキ! ブードゥー・サイエンス』(邦訳2001年)から取ったんだけど、この副題は2007年に文庫化されるに当たって「ニセ科学の本性を暴く」と変更されている。
また、Yahoo! ブログ検索で「ニセ科学」を検索してみてほしい(21:22 この辺、検索結果にうまくリンクできていない事に気づいたので、グラフを入れるなど、いろいろ変更しました)。
上図では「疑似科学」はおおむねずっと右上がりなのだけれども、ニセ科学という言葉は、もっと散発的な感じだ。でも、たとえば2006年3月に「ニセ科学」が、わっと増えている。物理学会で採り上げられたり、ニセ科学フォーラムが始まった年だ。それから、視点・論点が放映された2006年12月にもピークがある。2007年6月は、なにがあったんだったかな?
2005年以降しか調べられないんだけど、06年3月以前はシャーマーの本や、マーチン・ガードナー『奇妙な論理』(邦訳1980年)の文庫版『奇妙な論理〈2〉なぜニセ科学に惹かれるのか』(2003年)が引っかかるぐらいだ。
あ、ガードナー(80年)の本文中にはニセ科学って訳語が出て来るのかな。もしも出て来るのだったら、これが本邦初出って可能性もある……かな?
おまけ:
菊池くん自身による「シャーマーからとった」発言いろいろ。
■「科学とニセ科学」レジュメ(ver.2)(2003/02/17)
ちなみに、「ニセ科学」という用語は参考文献に挙げたシャーマーの著書の邦題からいただいた。用語としては「疑似科学」や「似非科学」よりも単刀直入でいいと思う。
■ニセ科学入門(2004/2)
私自身、「疑似科学」と呼んでいた時期もあるのだが、上述の理由 で違和感がつきまとうため、最近は「ニセ」で統一している。この用法はマイクル・ シャーマーの著書の邦題に倣ったものである。
■kikulog:ニセ科学フォーラム(京都8/26・東京9/2)のコメント欄(August 29, 2006)
そうそう、ときどき僕が勝手に「ニセ科学」って言葉を作ったと思い込む人がいて困るんですよ。
僕は、直接にはシャーマーの本の邦題からとったし、そのことはどこかに明記してあるはずなんですけどね。今はなき「SFオンライン」にシャーマーの書評を書いたのも僕だし。
もちろん、シャーマーの本以前から「ニセ科学」という言葉は使われてきたんですよ。
僕は疑似科学って言葉に違和感があって、シャーマーを読んだときに、「これからは疑似科学ではなくニセ科学でいこう」と決めたのですな
■信じるな疑え! 「ニセ科学」批判の菊池教授に聞く(ascii.jp 2008年03月30日)
「ニセ科学」は、直裁で分かりやすいレッテルだ。「ニセ」という言葉には、よくないものだという価値判断が含まれており、「問題のある言説だ」と単刀直入に示せるからだ。ことあるごとに言ってるって感じですな(^^;; でもまあ、誤解もなかなか消えない。
「アメリカの懐疑主義者団体Skeptics Societyの会長、マイケル・シャーマーの著書『なぜ人はニセ科学を信じるのか』の翻訳タイトルから取ったんです。疑似科学とか、とりつくろった言い方をしてもしょうがない。以後はニセ科学という言葉がそれなりネットの中で広まったと思います」
あ、堺三保さんは、さすがにちゃんと書いてる。
■科学なニュースとニュースの科学:【第4回】まん延するニセ科学と、対峙する科学者たち(ITmedia 2007年02月02日)
こういったニセ科学は、英語では「pseudoscience」と呼ばれ、従来は「疑似科学」という訳語をあてられることが多かった。だが、1999年に翻訳されたマイクル・シャーマーの著書「なぜ人はニセ科学を信じるのか(I/II)」(岡田靖史訳/早川書房刊)を読んだ菊池氏は、「疑似」という言葉には価値判断が含まれないが「ニセ」という言葉は否定的な意味合いを強く含むため、以降は「ニセ科学」という呼称を採用することにしたという。
きくちさんがニセ科学という語を用いるようになった経緯は、私の所のコメント欄でも、説明を頂いた事があります。
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_2d02.html
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2008/03/post_0458.html
はてなの説明は、ちょっと不正確ですね。私はダイアリーは使って無いので、編集出来ないです…。
あー、編集者がつけたのか>シャーマー
なるほど、それは当然あり得る話でした。
はてなキーワードについては、ニセ科学の定義としてどうか、というよりも、説明として「誰がそういうふうに使っているのか」っていうところが、すごく曖昧なんですよね。
たとえば、「菊池はこういう定義をした」としたうえで、「ネット上でこんな感じの用法で広がっている」みたいな話であれば、また読み手の受け取り方が全然違ってくると思うんです。
ってことで、なおしてきました。「これじゃ任せらんないなぁ」って思うところがあったらご指摘願います。
> 石田剛さん
ここでお願いもなんですが、ひとつ甘えていいですか? ちょっと本題と外れますが。
「宗教もそれ単独ではニセ科学の要件を満たさない」みたいなことを追記してくれるとうれしいです。
すっごく細かい事で恐縮なんですが、シャーマーの「邦題」からですよー。
「帯」っていうのは「後でハインズの本の帯でも見つけた」って話ですね。
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_2d02.html#comment-20531935
poohさん
いやぁ、「神の手」のときはやぶいぬさんに助けてもらったし。毎度、感謝感謝です。
宗教かあ……おとぎ話とかもしばしば「あれもニセ科学?」って話題になりますよね。
でも、「科学を装っていないオカルト・陰謀論・超常現象(非科学)などはニセ科学ではない」って書かれてるから、この記述からはそういう誤解は生じないんじゃないでしょうか。
いや、あって悪い説明ではまっくないので、もちろん石田さんのご判断におまかせします。
基本、私が書いた説明でした。当然、菊池さんの話は知っていて、色々とあった中から「採用した」というつもりで書いていたのですが、そうは読めないようになっていましたね。
日本語能力と注意力の問題です。
石田剛さん、GJです。
あ、そうだったんですか。
いや、ほんとに重箱の隅で恐縮です。
ああいう項目があるのとないのでは大違いですから、lets_skepticさんやこれまであの項目の編集に参加された方々もGJであります(^^)
修正が必要ならばよってたかって手を出すのがあの手のものの基本なわけですから、結果オーライってことで(^^;;
>はてなダイアリー市民とは、ユーザー登録を行ってから本日までに30日間以上の日記を登録し、最も最近に登録された日記が過去30日以内のユーザーです。
てことは、ぼくの場合、なんでもいいから新しいエントリを書きさえすればよかったんだ……。
あ、メモを書いたら市民に復活できた(-_-)
まあ、たまたま石田がはてダ市民で、このエントリに最初に気付いただけですよ。
> シャーマーの「邦題」からですよー。
ご指摘ありがとうございます。ちゃんと読まなきゃダメですね。なおしときました。
宗教とおとぎばなしのことも書き足しました。
あと、「未科学」の説明を変えたのですが、これで良さしょうでしょうか?
石田がなにか勘違いしてるかもしれませんので、違ってたらなおください。
ありがとうございます!
お手間をおかけしました。
いっぽう、ハインズ博士の帯に「ニセ科学」という言葉を誰がつけたのか知りませんが、きっと化学同人の編集者なんでしょう。
僕は職業柄プライオリティの問題に敏感なので、自分が名付けたわけでもないものを自分のものにされると、非常に居心地が悪いのですね。だから、ことあるごとに言うことにしています
ただ、「ニセ科学」という言葉を広めようとしてある程度戦略的に使ったことは事実で、それは一種のマーケティングの成果であると