まず、元のコメントをご紹介。
亀レス、雑談モードで失礼します。
「原理がわかってないと科学的と言えない」という誤解と、「原理はわかってなくてもいい」の不十分さ
この話を読んでふと頭に浮かんだのが「タネがわかってないとインチキとは言えない」という、超能力ビリーバーが言いそうな言葉です。これは上記と比べて微妙に紛らわしいロジックだと思いますがどうでしょうか。
ジェームス・ランディーというマジシャンが、超能力の存在に100万ドルの懸賞をかけた話は有名ですが、いまだ賞金を獲得した人物がいないということは、彼にとってタネの想像もできないような現象は今までなかったということだと思います。
でも、世の中広いですから、もし天才的なアイデアマンがいて、きわめて独創的な(マジックの)原理をあみだし超能力と詐称して、ランディーにもそのタネがわからなかった場合、彼はどういう立場を表明するのだろうと疑問に思ったことがあったので、上の言葉が頭に浮かんだわけです。
ネット沙代さん、こんにちは。
エントリ〈「原理がわかってないと科学的と言えない」という誤解と、「原理はわかってなくてもいい」の不十分さ〉をお読みいただけたようで、ありがとうございます。
>「タネがわかってないとインチキとは言えない」
あー、ビリーバーじゃなくても言いそうですね。どうすれば否定されたことになるかを考えたことのある人なら、少なくとも「違う方法でも再現できる」というだけでは十分でないと気づいているはずだし。
もちろん「タネがわからなくても、合理的に否定することは可能」ですよね。ランディがやっているように「もしも本当なら、この条件でも可能ですよね? でも、できませんでしたね?」と示せればよいわけで(もしもご存じない方がおいででしたら、後述の「カルロス事件」のリンクから、ランディの動画にたどれますのでご覧ください)。
「違う解釈が可能だというだけでは完全否定にはならないけど、タネがわかることが必要条件なわけじゃない」「新奇さが大きい主張なら、原理(タネ)について別の解釈が存在するだけでもかなり強い疑義となる」ってところでしょうか。
最近の話題だと、「ケータイでポップコーン」や「気功」の話題のときも、似たような論点がありましたね。TAKESANさんのブログでだったか、うちでだったか忘れましたが(^^;;
確かに「再現できたように見える」ことは、必ずしも「原理がわかった」とか「元ネタがガセだったことが明らかになった」という意味ではないのに、そこを区別しないという誤解(というか理解不足)がありますよね。それと同時に、超能力や超自然現象の類いでは「いろいろな方法で再現できる」という事実は、直ちに現象(や説明)を否定することはできないけれども、「別に超自然でもなんでもないという可能性(蓋然性)を高める」ということについての誤解や理解不足もあるように思います。
両者が相まって、よけいに混乱するということは、ありそうです。
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ぼくは、超能力やらオカルティックな現象(があるという主張)に対しては、「ほかの方法でも同じことが可能」と示すのは、かなり強い否定的な指摘だとみなしています。ちょうど「容疑者のアリバイ(不在証明)が崩れた」状態であって、だから、匹敵するぐらいの強さ。
もしも元の現象の演者が「それは十分な反論になっていない」と主張するなら、そういうトリックやら別の方法やらを封じたうえでも可能だということを示すような見せ方を、自分で考え出してほしい。この場合は犯罪捜査とは違うのだから、それぐらい自分で責任もってやってよ、という感じ(犯罪の嫌疑をかけられている場合、捜査能力もない容疑者が自分で反証を探すのは困難。だけど、新しい物理現象を主張するだけなら知恵を絞るだけで済むことが多いだろうし、専門家に助言を得ることもできるだろう)。
要は「その現象が再現可能なだけの情報を開示しろ」って話と一緒なんですが、第三者にも「主張されたような現象が、まぎれもなく存在する」と確認できるって、そういうことですよね? 手品でさえも「一見すると種も仕掛けもないように見える」というレベルの演じ方は、必ずするわけですから、主張する側だって「手品の類いだと思われないようにする」とかいう視点がないわけではないだろうし。
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ジェームス・ランディの場合、「タネがわかること」をどの程度重視しているかはわかりません。でも、ぼくにはそれほど重きを置いていないように見えます。少なくとも「こういう方法でも可能だ」とか「だから、そこを封じよう」とは言っても、「こういう方法でやったに違いない」みたいなことは、あまり言い出していないような印象があります(アルファ・プロジェクトでの超能力研究者たちへのアドバイスって、そういうものではありませんでしたっけ? 研究者たちに無視されちゃったヤツ)。
ランディのデモンストレーションは、ぼくが見た動画(せいぜい10本ぐらい)では2つのアプローチがありました。(A)超能力を持ち出さなくても説明が可能であることを示す実演 と (B)トリックを入れる余地はないが、超能力ならば肯定的な結果を出せるはずの条件での実演(で、否定的な結果を得るもの)。この2つのアプローチをうまく使い分けている印象です。
(A)の代表例は「カルロス事件」かしら。これ大好き(^^)。(B)の代表例は、100万ドルがかかっている場合。
マジシャンは「説得力のある見せ方」を熟知しているでしょうから、(B)じゃなくても観客が納得するようなパフォーマンスはできそうなのに、100万ドルがかかってると、それでは十分ではないという判断だと思っています。
実際、反論しようのない結果を一発で見せるには、(B)である必要があるでしょう。(B)に対する反論は見たことがないんですが、あるんでしょうかね(「調子が悪かった」とかいうレベルなら、あるんでしょうけど)。
それはそれとして、もしネット沙代さんがおっしゃるような、(B)のレベルをクリアしているように見えるマジックを考えついたら、大ヒット? 少なくとも、ランディのトリック封じを凌駕できれば、100万ドルは取れますよね?
そう考えると、改めてランディって、すごいなあ。