2008年08月25日

無責任な教員が秋田に一人いた、という話

#mixi日記を転載

「適当にこなしてる感」が漂ってきますね。

個人情報:担任が占師に児童の障害相談 秋田の小学校(毎日新聞 2008年8月24日)

占い師に児童の情報漏らす 秋田の小学校教諭(共同通信 2008年8月25日)

先生が占い師に相談 特別支援学級児童の情報漏らす(msn産経 2008年8月25日)

某マイミクさんの日記によると、お花畑が大変らしい。なんか「なにが問題かわからん」とか「方法は間違ったかもしれないけど、熱心な先生」とか言ってる方々が、少なくないらしい。なんじゃそれ。

直面した問題についていろいろ調べて勉強し、いろんな機関に相談してみるとか考えつくことはできる限りやってみて、それでもどうしようもなくて悩みに悩み、ついに宗教とかに救いを求めた……とかいうなら、「痛ましい話」です。ご同情申し上げます。行政はなにをやってんだよ、頼れる同僚や上司はいなかったのかよ、って話です。

が、ここで報道されたケースは単に「痛い話」にしか見えない。

いや、もちろん、常日頃から占いなんぞに頼る、オカルトとかが大好きな人だったかもしれないんだけどね。まあ、その可能性はとりあえず考えないとしても、ですよ。
記事の〈「占いで、岡山の治療師のところに行けば治る可能性があると言われた」と保護者に話し〉というところで、単に安易なだけだという疑いが強まる。
40歳にもなってるのに、いまどき個人情報保護法違反にも頭が回らなかった人らしい。かなり珍しいレベルで「仕事ができない人」の疑いが強まる。それはそれで「そんなのを特別支援教育に回さないでくれ」という話でもある。

             ◆
この教員もお花畑な人たちも、「占い師に言われたから、ここに行ってみたら」ではただの責任転嫁だということが、わからないのだろう。
考えてみよう。どういうときに、「誰かが言ったことを、その誰かを理由にして勧めるか」を。自分で責任を背負えないとき、じゃない?

この人の仕事は伝言係だろうか。しかも責任ある機関のお達しでもないんだよ。この人自身の仕事やら責任やらはどこに行ったんだ。

これがもしも「占ってもらうのは自分のため」っていうなら、まだいい。その場合、彼がなすべきことは、占いの結果をきっかけにして調べるとかなんとか、そういうことで。おそらくは「占い師がこう言ったから」なんて勧め方もしない。それはきっかけに過ぎず、調べて考えて結論を出して勧めるのは自分になるはずなので。それがわかっていれば、こういう他人の出した結論を丸投げするときも、「○○がこう言うんです」なんて言えないはずだ。

             ◆
この人、昇進して(しないだろうけど)人事考課だのややこしいことやるようになったら、やっぱり占いに行くのかいな。

お花畑な方々は、経営者や管理職、政治家だの官僚だの軍人だのが、何かの重要な決定の際に占いだのなんだので決めていても、「熱心な人だ」と言うんでしょうかね。自分の採用や昇進がそれで決まってもオッケーだと? 自分の上司がそんな無責任な人でもオッケーだと?

わたしゃごめんだ。仮にお花畑な方々がオッケーで、「熱心だ」と高く評価するのだとしても、そんないい加減な決め方をされてはイヤだ。

ただまあ、もしもそういうのも躊躇なくオッケーなのであれば、この先生を評価するのもわからなくはない。ぼくには「いい度胸だ。幸運を祈る」としか言えない。

でも、できれば同じ国にそういうお花畑な人がたくさんいないといいなあ、と思う。選挙でオカルトな人が当選しちゃったりしそうじゃん。
そりゃあ責任ある立場の人だって、ひとりの人間が決めかねる問題は多いとは思う。開戦するかとか、降伏するか、とかね(あー、これを一人で決めることは、いまはないか。昭和天皇は神託で決めたのかしら。ぶるる)。
だから、考え抜いた挙げ句に占いに背中を押してもらった、とかいうならちょっと同情するかも。でも、それぐらいが限界。そんなときに、一も二もなくオカルトに頼るような人なら、ごめんこうむる。そんなのをトップに抱くことを許せちゃうなんて太っ腹な芸当は、ぼくにはできそうにない。

             ◆
あ、言っときますが、こんなの特殊ケースだと思いますよ。占い師を頼ったという点でも、そこで児童の氏名や病名を明かしたという点でも。普通なら初任者でもしませんって、そんなドジなこと。つまり、激しく平均よりも劣る可能性が高い。
なにか事情もあったのでしょう。考えたり調べたりすることが壊滅的に苦手な人(つまり、いわゆる「使えない人」)だったのかもしれません。それはそれで勘弁してほしい出来事ですが、まあ、確率的には防げないこともある。

気に入らない教員や自分が使いにくい教員を特別支援教育に「左遷する」とか「懲罰人事で回す」とかいう、大ボケでアホたれな校長や教育委員会もなかにはいる。「よくあること」である可能性さえある。障碍や特別支援教育に関する無理解が、まだまだ抜き難く、それは田舎に行くほど顕著ってこともあるかもしれない。
しかし、最底辺の教員を回したのではいくらなんでも特別支援教育なんか成立しない、というぐらいのことはほとんどの校長や教育委員会はわかっているはずだ。
この秋田のケースは、たまたまそれがわかっていなかったか、わかっていて無視されていたケースということなのだろう。
どこにしても、かつてよりは、ずっとマシになっているとは思うのだけど。

でも、こうやって「おかしいんじゃない?」と申し出る親もいて、それを採り上げる新聞もあって。それなりの確率で改善指導も行われるだろう(異動して終わり、というケースもあるだろう。その場合、それこそが問題だけれども、どこでもそうだというわけでもないだろう)。
posted by 亀@渋研X at 18:42 | Comment(7) | TrackBack(1) | 学校とか教育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 無責任な教員が秋田に一人いた、という話
この記事へのコメント
> 「方法は間違ったかもしれないけど、熱心な先生」

「間違ったことを一生懸命やる熱心な人(しかも善意で)」ほど困るものはないと思うんですけどねぇ…
やたらと見当違いなお節介をやくことが,「親切で面倒見がいい」とかいう評価になってそうでコワイです.
Posted by たかぎF at 2008年08月25日 19:12
善意の問題は、ついて回りますね。やっかいです。

ところで、あまりにも符合する話を知りました。

担任も自閉なの? - 教えて!goo
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3146387.html

北東北、岡山の治療師、2007年7月の「今学期」……ううむ。

この人だとわかったわけではありませんが、もしもそうなんだとすると……やはり、かなり稀な問題ケースだと言えそうです。
Posted by 亀@渋研X at 2008年08月25日 21:15
はてブでBUNTENさんが、〈「「なにが問題かわからん」とか「方法は間違ったかもしれないけど、熱心な先生」とか言ってる方々が、少なくないらしい。」いくらなんでも信じられない。〉と書いておられたので実例。2ちゃんですが、まあ多分似たようなものかなと。

http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1219576142/

「少なくない」というほどではないかしら。
Posted by 亀@渋研X at 2008年08月26日 05:06
こんばんは。

アスペルガー上がりでうつ病持ちの現職教員ですが、何か?
(すみません。身構えて書いてしまいました)

周囲を見て思うに、教員の中に対人接触があまり得意でない人を見かけることは珍しくありません。

特に、大人同士のコミュニケーションが苦手、という人は少なくないと思います。

それでも中学校や高校なら、小学校に比べると問題になることも少なく、「無難に」仕事ができている人も多いようです。

 今回問題になった教員については、亀@渋研Xさんが探した話題の人だとすると、かなり行き過ぎた上に誰も止めないまま進行させてしまった点で、まれなケースだと思います。

 多くの場合、そこまで行く前に止める人が出ると思いますので。

 私が気になるもはむしろ「水伝」の時と同じように
「善意なら良いじゃないか」と評価する人が多いことです。そんなに皆さん、善意に飢えてるんでしょうかね?
Posted by 憂鬱亭 at 2008年08月27日 01:10
憂鬱亭さん、こんにちは

「教えてgoo」の件は、ほかの方のmixi日記で知ったものです。その方は、「懐疑論者の集い」というコミュニティで知ったそうです。

もしも同じ人なのだとすると、そして掲示板にあるようになんらかの疾患があったのだとすると、「責任感のなさの現れ」ととらえてよいのかは、ぼくにもわかりません。
ただ、アスペルガーや自閉症「だから」占い師のところに行く(あるいは似たようなことをする)というわけではないのではないかと思います。

もっとも、「だから」小学校の教員には向かない、などということがあるのかは、なんともわかりません。真っ先に考えたのは、小さな子どもや表現に不自由な子どもの相手には向かないのではないか、といったことでしたが、本当にそうなのか、だんだんわからなくなってきています。
学習障害やアスペルガーといった病気を持つ児童生徒は、確率的には1学年に何人かいてもおかしくないですよね。
そうであれば、教員に自覚というか病識さえあるのならば、同じ病気をもつ生徒や保護者のよい理解者になれたり、他の教員への説明役になれたりもするのではないでしょうか。
素人のノンキ過ぎる発想でしょうか。

この件がもしも同じ人だとすると、周囲にも本人にも病識がなかったことが、ここまで話をややこしくした、という可能性もあるような気もします。

>そんなに皆さん、善意に飢えてるんでしょうかね?
「現代人はみんな利己的に決まってる」とか「公務員は」「企業人は」などと信じているのかもしれませんね。自分の身の回りに、そんな人しかいないってことも、ないと思うのですが。
Posted by 亀@渋研X at 2008年08月27日 15:34
亀@渋研Xさん、こんばんは。

>教員に自覚というか病識さえあるのならば、同じ病気をもつ生徒や保護者のよい理解者になれたり、他の教員への説明役になれたりもするのではないでしょうか。

 言語困難型の学習障害の人や、言葉以外に固着する型のアスペルガーの人の場合は、他人に自己の状況を説明することが非常に苦手です。
(私は言語固着型のアスペルガー上がりのようです)
 有名な人物の例だと、ピカソやアインシュタインは小学校の担任教師としては不向きだと思われます。(どちらもアスペルガーとしてよく本に登場します)

 また、学習障害やアスペルガーだからということで教員に採用しているわけではないので、職場や担任配置の際にも全く配慮は払われていません。
 何よりも実質的な人事権を持つ自治体の官僚や、それに影響力を持つ地方議会の議員たちが、学習障害やアスペルガーのことをほとんど知りません。
 責任者たちの不勉強が、当事者の病識の遅れにつながっているのかもしれません。

 また、今でも田舎では「障害があるということは恥ずかしい」ということになっている場合が多いので、本人が専門機関に相談しにくい、ということもあるでしょう。

 さらに、都会にいると、気にしなければ見えにくいものなのですが、「拝み屋」などと呼ばれる人たちがほぼどこの町にもいて、それなりの発言力を現在も持っています。そういう風土で育った人ならば、今回の発想も珍しくはないと思います。

 ちなみに我が家では、当面光通信が可能になる気配はありません。田舎なので。
 私が住む地域では、テレビのアナログが止まると、テレビを視聴できなくなる家が8軒できるそうです。田舎なので。
Posted by 憂鬱亭 at 2008年08月28日 00:04
憂鬱亭さん、重ねてのコメントありがとうございます。

アスペルガーにも、程度の差だけではなく、さまざまなタイプがあるんですね。うーん、知りませんでした。
しかし、お話をうかがって、教育現場では、もっともっと学習障害などについての理解が広まってほしいと、改めて思います(それ以前に解決しなければならない問題というのも、たくさんあるのかもしれませんが)。

>「拝み屋」などと呼ばれる人たちがほぼどこの町にもいて

今ごろになって思い出しましたが、確かにそうですね。おしらさまやユタさま、ノロさまといった話は、ぼく自身も比較的身近なはずのものでした。なんというか、実感をともなっていないせいか、忘れていました。
そうした文化で育った方にとっては、発想としては「ものしり/賢者/先生に相談する」と変わらない感覚かもしれません。

件の教員がその感覚だったのだとすると、なぜ対象が身近にある伝統的(?)な拝み屋などでなく、遠方の占い師だったのかという疑問も生まれます。しかし、身近な誰かは営業品目に挙げていないけれども、似たような存在の誰かがそっちにも能力があるしょうだ、などという受け止め方をしてしまえば、そんなハードルは低いものなのかもしれませんね。

そういえば都市部にも、ところどころテレビの難視聴地域があるようです。ビルや高圧線のためだったかな。うちの近所も高圧線の影響でそうだとか。
群馬在住の友人が、やはりネット環境について「ADSLが来ない」「来たけど、局が近いのに遅い」「今度はなかなか光が来ない」と言っていたことも思い出しました。高崎市だか前橋市というかなり大きめな町の近くなのに、と意外に思ったことを覚えています。

なんというか、個人差は比較的思い出せるように思いますが、それに比べると地域差は忘れられやすいのかもしれませんね。
Posted by 亀@渋研X at 2008年08月29日 05:03
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