プラセボ効果の違い?(Interdisciplinary 2008年10月 5日)
そのコメント欄
最近は、アクティブ・プラセボとインアクティブ・プラセボという概念があるらしいです。真薬を偽薬として使ったのが前者。偽薬を偽薬として使ったのが後者ということらしい。知りませんでした。っていうか、頭がごちゃごちゃ……。
わけわかんなくなってしまったので、ここに書いて整理してみよう、というのがこのエントリの目的。「おかしいぞー」というようなことがありましたら、コメント欄でご指摘いただければ幸いです。
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まず、そもそものところから。
たとえば、小麦粉を「鎮痛剤だよ」と与えられると、それが効いちゃうことがある。こういう、ふつうにはなんの薬効もない「薬品もどき」を偽薬と呼ぶ。患者というか被験者の心理だの認識だのが影響したと考えられている。で、こういう「薬効がないはずなのに効く」効果のことを、偽薬効果とかプラセボ効果と呼ぶ。
困ったことに、世間では偽薬も偽薬効果も「プラセボ」と呼ばれることがあるので、ここではこだわって「偽薬」「プラセボ効果」と呼び分けます。また、ただ「効果」というとわかりにくくなるので、薬の本来の効果のことは意識して「薬効」と書きます。
偽薬なんだから副作用はないはず。だけど、たとえば「前に鎮痛剤を飲んだときは、お腹がゆるくなった」なんていう被験者もいますよね。そうすると、小麦粉を偽薬として飲んでも副作用まで出る、なんてことがあるらしい。まあ、この辺までは従来からも知られていたみたい。
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上記のようなまるっきりの偽薬だけでなく、真薬(実際に薬効が確認されている薬品。実薬ともいう)を用いたときも、プラセボ効果が出ることがあるらしい。最近は、被験者の期待や不安が、薬効を左右する可能性があるんじゃないか? という話になっているもよう。
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新薬の治験などの場合には、効果を確認したい新薬と、その比較対象にするために別の薬品が用いられることがある。後者の薬品も、やはり偽薬と呼ばれる。
ところが、この場合、前述の偽薬だけではなく、真薬が用いられるケースがある。しかも2通りある。
- 一定の薬効はあるが、比較して確認したい部分の薬効はないことが確認されているもの。
- 新薬の薬効の程度を確認するために用意される同じ目的を持った従来の薬品。
(2)は、「新しい薬の方が、以前からの薬よりも効くかどうか」を、ストレートに確認できるわけだ。
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しかし、こうなると「偽薬」「プラセボ効果」の意味が前述したものとは変わってくる。いわば拡張されている。新しい呼び方が必要だよね。そこで真薬を用いた場合をアクティブ・プラセボ、従来のような、まったくの偽薬を用いた場合をインアクティブ・プラセボと呼んで区別している(どこまで一般的なのかはわからない)。
治験での(1)(2)は、いずれもアクティブ・プラセボということになる。
あちらのコメント欄で、ちがやまるさんは、こういう用いられ方をする薬品をもプラセボとか偽薬とかいう呼び方をしてしまうのはどうなの、と疑問を呈し、特に(2)のケースは「もとの意味からはずれているのではないか」「拒絶したい」と考えている。
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こうして整理してみると、アクティブ・プラセボの方は「それもプラセボ効果だろうけど、使っている真薬を『偽薬』と呼ばれるのは混乱するなあ、いやだなあ」というのが素人の感想。(1)でも(2)でも「偽薬とかプラセボではない、用途目的に合わせた別の呼び名」がほしいと思ってしまいますね。
「真薬⇔偽薬」というのは、内実に関する対比ですよね。でも、治験での(1)(2)はそうじゃない。内実とは乖離している。相対的な立場というか、目的性や用途の違いでの関係ですよね。ぼくが勝手にこしらえるなら「ターゲット薬⇔対比薬」みたいな感じ。「偽薬では副作用がなくて被験者にバレるような場合」といった文脈から考えると「偽薬の代わり」と言ってもいいのかもしれません。であれば「代薬」とか。
この辺の用語が整理されると、「偽薬だけでなく、真薬である対比薬にもプラセボ効果が認められることがある」とかって、すっと言えるのになあ。
などとここでボヤイてもはじまらないんですが。用語の混乱という印象は拭い難いものがありますね(^^;;
中の人にしてみると全く違う言葉にされちゃうことの方が解りづらくなっちゃうんじゃないですかね。
「そんなこと言われてもこっちはこれで通じてるし」って感じで。
もうひとつの記事を読んで
「こんにゃくゼリーってダイエットに良かったっけ?
あれってけっこう高カロリーのはずだけど」
と思いながら調べて気づいたのがカロリーとキロカロリーが区別されていないことでした。
正直これなんかも気持ち悪いです。
なんだよCalとcalの違いって・・・。
いや、専門家はそれぐらい平気でなくちゃ(爆)
あ、こんにゃくゼリーのカロリーの話、ここだったのか(汗
んで、「うわあ!?」となるエントリを読んでしまいました。
代替医療はニセ科学か(5)(膵臓がんサバイバー(生還者)への挑戦 2008年9月23日)
http://pancreatic.cocolog-nifty.com/oncle/2008/09/5-3693.html
プラシーボでもなんでも、効けばよいという話、そりゃそうなんです。ですが……。
ウチはガン家系なんですよ。母方は、母をはじめたくさんの人がガンを患い、それで死んでいます。オレもガンで死ぬんだろうなあと思っています。それだけに、あっちには書けない。
しろうと理解ではありますが、おそらくプラセボ効果は「ないはずの薬効(または薬効以上の、あるいは薬効以外の効果)が発揮された。なぜか」というような、「すでに起きてしまった現象を説明するための概念」なので、常に効果が期待できるものではないであろうという懸念がつきまといます。
また、プラセボ効果が認められることが広く知られている事例に、疼痛緩和があるようです。これは、苦痛を取り除くという観点からは有効な知見なのですが、場合によっては抜本的な治療から患者を遠ざける可能性があります。
あううう。
イグノーベルで。
「もちろん」その話が発端なのです(爆)
「プラセボ」には比較対象の呼び方という意味しか見えてきません。
で、「プラセボってなんやねん?」と思ってたら、
元々はラテン語で「喜ばせる」という意味だったのですね。
そうなってくると本来なかった意味である「偽」というイメージを抱く方がおかしいような気もします。
「新薬が使えてるかも」という喜びを与えるのは効く、効かないに関係ないですし。
まあでも頭に「効く」とか「効かない」を付けただけなのは単純に新語を作るのが面倒くさかったからなんでしょうけどね。