2008年10月09日

「マンナンライフ・サーキット物語」

ポーション型こんにゃくゼリーの危険評価の問題を、レースになぞらえて考えてみました。

レース場で行うクルマやバイクのレースってありますよね。欠陥車だとかいう問題なんかなくっても、参加者や観客に一定程度の人死にやケガ人は出ますよね。だけど、そりゃまあ好きでやってたり見に行ってたりするわけで、少なくとも傍から文句をつける筋合いはない。

しかし、レースが一定の頻度で騒音や飛び出し事故などによる被害を「場外に出す」のであれば話は別ですよね。実際にはレース会場は人里離れたところで、しかも緩衝地帯などを広く設けて、無関係な第三者に影響を与えることがものすごく少ないように作られているので不均衡は生じていません。だけど、町なかに作ったり緩衝地帯がひどく狭かったりすると、てきめんでしょう。

ポーション型こんにゃくゼリーについて、ぼくにはこんなふうに見えているということですが、果たして適切なたとえ話になっているでしょうか。ツッコミ歓迎です。


いま、全国的に「ポーション型こんにゃく入りレースカー」によるカーレースが大人気です。町なかにレース場がいくつも作られています。もっとも人気の高いレース場は、週末ごとにレースが開催されるマンナンライフ・サーキット。配慮もかなり行き届いており、あまり外部に影響を与える事故はありません。

マンナンライフ・サーキットの成功を見て参入した後発の草レース場もたくさんあり、今も増え続けています。月1回とか、シーズンに1回など、マンナンライフ・サーキットほどには競技がないにも関わらず、配慮不足から事故を起こしており、外部への被害総数はマンナンライフ・サーキットを上回ります。

いずれも騒音対策は行き届いていて、外には騒音は聴こえません。レース場特有の形状なので、わかる人にはレース場だとわかります。おとななら、ほとんど誰でも知っている特徴です。ただし、場外への危険ない、「ポーション型こんにゃく【なし】レースカー」のレース場も同じ形状をしています。こちらのレースも人気ですが、「ポーション型こんにゃく入りレースカー」ほどではありません。

周囲を巻き込むような事故は総数としても、かなり少数です。全国で、年に1、2回とかそんなぐらい。事故がない年もあります。緩衝地帯を広くするなどの改善は不可能ではないけれど、レースを遠くから見ることになるなど、興趣を削ぐ可能性があります。

マンナンライフ・サーキットは町なかを避けて郊外に引っ越しましたが、少数ながら第三者に被害を出す事故は起きています。

場外には「幼児や老人をレース場に近づけないように」という標識も増えています。事故のときには、緩衝地帯を壊す「バリバリバリ」などという音がして、おとななら逃げ切れるのですが、幼児や老人は気づかなかったり逃げるのが遅かったりするからです。でも、標識が増えても、「ポーション型こんにゃく入りレースカー」のレース場の場外は危ないという話題が出ても、どうしても近くで遊ばせてしまう保護者や、一休みするお年寄りなんかがときどきいて、事故にはそういう人が遭っています。

こうした事故が再三問題になりつつも、新しい草レース場では配慮も徹底しません。どうやら標識が少ない場合や、通行人が「ポーション型こんにゃく【なし】レースカー」のレース場だと思ってしまう場合もあるようです。

レーサーや観客は、会場やクルマの構造から事故にあわないか、あっても「痛い」「驚いた」ぐらいで済んでいます。【ぼくとしては、ここが大きなポイント】

規制を強化しろとか、自粛しろとかいう声がメディアにはあふれています。行政当局も、マンナンライフ・サーキットには「なんとかせい」とお達しを出しました。

昨日、マンナンライフ・レース場は、「ポーション型こんにゃく入りレースカー」によるレースをやめ、「クラッシャー型こんにゃく入りレースカー」の採用を発表しました。コースを外れると自壊するので、万一にも場外に飛び出さないようなレースカーです。ただし、スピードは遅くなり迫力も減ります。

町の人々は、「ポーション型こんにゃく入りレースカー」によるレースが大好きでした。なんでやめるんだ、標識を見落とした被害者が悪いんだ、草レース場が悪いんだ、行政当局が悪いんだ、と怒っています。

いまは、草レース場があちこちの町なかにあります。彼らの動向はまだわかりません。
「ほんとにそういう話だっけ?」と思われた方は、前後のエントリも参照していただければ幸いです(長いけど、事実関係の拾い読みだけなら、そんなに大変じゃない……といいなあ・汗)。
posted by 亀@渋研X at 15:33 | Comment(1) | TrackBack(1) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 「マンナンライフ・サーキット物語」
この記事へのコメント
モタースポーツで、危険性を問われて消滅したものというと、かつてWRCにあった、グループBクラスが思い出されます。

グループBマシンは、際限のないパワー競争と空力競争の果て、最終的に出力は1千馬力を超えたと言われます。

85年にドライバーの死亡事故が発生。そして86年のポルトガルラリーで、ドライバー、コドライバー、観客含め、40人以上が死傷する事故がおきました。

これをFISAは、マシン性能ではなく、主催者側の観客誘導の問題として処理。シーズンは続行。

しかし、ツールドコルスで再びドライバーとコドライバーの悲惨な死亡事故がおき、急遽そのシーズンでグループBは廃止となりました。

廃止までの経緯には、レース界独特の政治的背景なんかもあるので、そのまま参考にするわけには行きませんけども。
Posted by A-WING at 2008年10月10日 12:59
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こんにゃくゼリーは本当に危険か2:受益者と被害者の不均衡
Excerpt: 昨日のエントリにはいろいろご指摘感謝です。勉強になります。こんにゃくゼリーだけでなくて、危険評価について考えを深める機会をいただきました。ありがとうございます。やっぱり、書いてよかった。 今日のエン..
Weblog: PSJ渋谷研究所X
Tracked: 2008-10-09 15:49
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