で、「あ、小室哲哉だったのかあ」となり、「えー? 著作権譲渡詐欺ぃ? 著作権って譲渡できないだろ」となったのであります。ここでぼくが想定しているのは「作詞・作曲:なんのなにがし」みたいなことで、これは「著作人格権」ってやつですね。これは自然権てやつで、どっかに登録したりしなくても発生する。んで譲渡できない。なんてことを知っていたので混乱したわけです。
ニュースを見ていると、「ああ、どうやら著作隣接権の譲渡のことか」と察しがついてくる。出版権とか放送権とか、そういう「お金にする権利」の話かあ、そう言えよ、なんて突っ込むと、カアチャンに「いちいち、そんなこと言ってられないんじゃない? 新聞でも、紙面の都合かもしれないけど、ただ『著作権』ってなってるよ」なんて言われて。
まあ、「大人の世界」では「著作権=著作物をお金にする権利」なのかもしれませんね。でもさ、ふつう著作権侵害とかつうたら、盗作とかそっちの話じゃん。ま、あれもこれも著作権で、間違いではないんだってことぐらいまでは知っていたような気もします。
まあ、出版権とかの話だとすると、わかる部分とわからない部分がある。
わかる部分って言うのは、著名なミュージシャンだと著作権管理のための会社なんてのが作られていることがあって、管理できるってことは売却もできるんだろな、ってこと。
たとえばビートルズの楽曲の著作権を管理しているノーザンソングスなんてのは超有名。ビートルズの楽譜の出版権は、日本では確か『ミュージックライフ』誌のシンコーミュージックが握っていて、だから限定的な譲渡も可能ってことなんでしょう(昔は、ってことかもしれない。また、『ビートルズ詩集』ってのが、昔、角川文庫にあったので、歌詞はまた権利が違ったのかもしれない)。
わからないのは、ふつうああいう商業音楽の出版権は、レコード会社が握ってる。で、小室が「売ります」って言ったって、レコード会社が「ヤだ」って言うに決まってるじゃねえか、詐欺にもならないじゃん、ってこと。素人でも5億とか出すなら、調べるでしょうよ。もしも「小室が売れる」と信じさせたのであれば、いったいどうやったんだろう、ってこと。
んで、昨夜ちょっとググってみたら目に留まったのが次のふたつの記事。
■ジャスラック信託楽曲の著作権譲渡(小室哲哉さん詐欺容疑事件)(駒沢公園行政書士事務所日記 2008年11月04日)
■小室哲哉さん逮捕との報道にあたって(BENLI 11/04/2008)
「BENLI」ってのは、弁護士小倉秀夫さんのブログ。
「お金を受け取る権利の譲渡」ってことならできるかもしれない、って話なんだけど、それは著作権なのか??? 違うよね? 違わないのか?
ああ、わからん(-_-)
あ、今朝のニュースワイドでは「小室哲哉は容疑を全面的に認めた」ってことなので、詐欺をする気でやったってことには間違いないんだと思う。このエントリは、それを知らない昨夜の時点での話。
いや、著作権がらみはややこしい話が多いんだけど、この話を「簡単な話だ」とか言ってる人がいるらしくて、いやあもう、尊敬しちゃいますよ。
■巨額の著作権詐欺――“小室事件”と音楽著作権の関係(ITmedia News 2008年11月04日)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0811/04/news071.html
◆アニメビジネスがわかる◆
アニメビジネスを知るためのブログ/増田弘道
〜アニメ関連メディア情報192-小室哲哉と著作権譲渡〜
http://anime.typepad.jp/blog/2008/11/192-7207.html
音楽出版社が持っている楽曲管理権の譲渡、ということでしょうか。管理契約の更新時期にこういう話があったのなら問題はなかったんですかね。
ああ、なるほど、契約更新があるんですね。ありがとうございます。
しかし、それでも引っかかる方もうかつな気がしますね。「間もなく更新時期が来るから」と言われたにしろ、あるいは「オレが引き上げると言えば引き上げられる」と言われたにしろ、億単位の取引ならば、発言の裏を取りそうなものですよねぇ。なんか、そういう権利関係でごり押しをしたという実績でもあったのかなあ……。
■「小室哲哉」逮捕で露呈した、著作権の難しさ
http://ascii.jp/elem/000/000/186/186978/
なんか、あちこちで「著作権=著作財産権」な表現を見かけます。隣接権なんて表現は、少なくとも本件に限ってはまったく見かけません。
そうか、世間は……っていうか、大人の世界はそうなのか、そういうもんなのね。
いつも楽しく読んでいます。
さて、「著作権」と「著作隣接権」の関係なのですが、例えば、文化庁で出している『著作権テキスト』の4ページあたりをご覧ください。
http://www.bunka.go.jp/chosakuken/pdf/chosaku_text.pdf
亀@渋研Xさんがおっしゃっている「著作権」は、たぶん「著作者人格権」のことだと思います。一般には「著作財産権」のことを「著作権」といいます。あるいは、「著作者人格権」と「著作財産権」をひっくるめて「著作権」ということもあります。
「著作隣接権」は、実演家(俳優とか演奏者とか)、レコード製作者、放送事業者などが持つ権利で、著作者が持つ権利とは別のものです。
えーと、つまり、たとえば小室氏が作詞作曲したレコードがあったとして、そこに及ぶ権利というのは、
(1)詞とか曲とかを作った人の権利(その1)=人格権:小室氏に帰属して、譲渡することはできません。
(2)詞とか曲とかを作った人の権利(その2)=財産権:小室氏に最初は帰属しますが、その後、音楽出版社とかに譲渡することができます。JASRACに信託されているのも、この部分です。で、今回問題になったのも、この部分です。
(3)演奏している人の権利:これは著作隣接権(実演家の権利)。これも人格権と財産権があります。
(4)レコード会社の権利:これも著作隣接権(レコード製作者の権利)。これは財産権だけ。
ということで、小室氏が(2)だけを譲渡するということは、レコード会社と無関係に不可能ではないということです。でも、音楽出版社に譲渡しているのが普通なんだったら、そこを確認しておくべきだろう、ということです。
ややこしくてすみませんが、「隣接権」と「財産権」が若干混同されているのかなあ、と思ったので、余計な解説をつけてみました。ご参考になれば幸いです。
隣接権と財産権の切り分けというかかぶり方というか、その辺を整理していただけて、だいぶすっきりしました。また「著作人格権」じゃなくて「著作者人格権」なんですね。
ちゃんと本でも読んで勉強すべきだなあ、と改めて、しみじみと、つくづくと(汗