- 1999〜2000年頃 『水からの伝言』(1999)が隠れたベストセラーになる
- 2000年頃〜 テレビで採り上げられたり、TOSSで実践例が出てくる
- 02〜04年頃 実践例が多数報告されるようになり、一部の論者に問題視されるようになる
- 03〜04年頃 メディアで紹介される例も増え、身近に水伝授業を体験したケースなどが出てくる
- 05年頃 少なくとも「ごく一部」とは言いにくい数の教員が引っかかっているらしいことが明らかになったことで、より問題視されるに至り、多くの批判記事などが公開される。
●どの段階から問題視されたか
(1)の段階では、「と学会」でおもしろがられた程度ではないでしょうか。
また、(2)(3)の段階でも一定の議論を呼んでいたはと思いますが、これはかなり限られた範囲でのものではなかったかと思います。たとえば「どうしてあれを信じちゃう人がいるんだろうね」といった話題になり方はしても、それは不思議がるといった論調が基本で、問題視されるということは少なかったのではないかと思います。以前「本当に「なぜいつまでも水伝?」なんです」でも書きましたが、そうした議論に触れても、「あんなもん、すぐに忘れられるよね」と考えた人が多かったのではないでしょうか。
そのなかで、天羽氏のTOSSに関する言及(2003年)は突出していますが、これとて当時は「なんでまた教師による組織が」というところを眼目として受け止められたことが多かったのではないでしょうか。飽くまで特殊事例として理解されることが多かったと思います。
それなりに人の注意を引くようになったのは、およそ(4)の段階に入ってからで、この辺になると、たとえばぼくなどが調べ始めたときには、すでに類書やビデオ、DVDが一般の出版社からも刊行されるような状況になっていた記憶があります。また海外でも紹介されるようになっていた時期だったと思います。
脇道ですが、ここでちょっと注意が必要なのは、(4)の段階は、個々の人にとっては自分の周辺で起きたことだったり、そういう例を聞いたりしたことになります。ですから、03〜04年としましたけれども、具体的な時期は年単位でばらけることでしょうし、すでに広範な批判が起きていた場合もあるでしょう。
ネット上でよく知られるようになるのは、(5)の段階を経て、多くの批判が公開された後のことだろうと思います。
●教室と水伝
学校にどのように入り込んでいったかといえば、「およそ世間に広がるのと軌を一にして」という印象です。
実は「別件」の議論で、「世間に広まったのと教室に入り込んだのと、どっちが早かったか」が問題になったりもしているようですが、それを確認するのは困難でしょう。刊行後、恐るべき早さで世間にも広まり、教室にも入り込んだのは確かなようです。しかし、いずれも相前後した動きですので、「まず最初に教室に入り込んだ」「まず学校で広がった」等と考える理由もありません。
「ほとんど書店には置いていなかったにも関わらず、1999年6月1日に第1版が発刊されて1年間で10万部売れた。読んだ人たちが自分のホームページで紹介し、ネットワークで広がったからだ」という高橋潤二郎「ものの見方を考える」の記述もまた、上記の見方を裏付けるものと言ってよいでしょう。
常にネタを探しているマスメディアと、常に「よりよい教材」を探している教員の目に留まるのがほぼ同時だったという例がひとつ確認できたとしても(それはそれですごいことですが)、それをもって世間に広まる「より先」に「広がった」とまで言えるほどではないでしょう。