2009年01月08日

英国で若手研究者たちが「デトックスは無意味」と発表

英国の若手科学者たちが作る団体が、デトックス製品について「意味がない」とする発表を行ったという。

「デトックス」製品は無意味?英科学者団体が指摘(AFP通信 2009年01月06日)

AFPの記事からリンクされているブログ記事を読むと、危ういなあと思えるものもあった。
科学者は、「証明」できるかできないかで判断しますけど、私達の多くは、「証明」できるできないではなくて、自分が「感じる」事が出来るかで判断しませんか?

「私は、このデトックスで健康になったと感じる。」

なら、それで良いんじゃないかな?

私は、そう思うんですけどね。。。
とかね。こういう意見に共感してしまう方や、なぜこの考え方が危ういかがピンと来ない方は、本エントリの末尾を読んでもらえればと思う。


イギリス本国ではBBC Newsがこの件を報じている。

Scientists dismiss 'detox myth(BBC News 2008/01/05)

すでにいくつかのブログで関連記事などを紹介しつつ、記事が書かれている。

「デトックス」製品は無意味?(k-takahashi’s 雑記 2009-01-06)

デトックスの調査書(食品安全情報blog 2009-01-05)

上記などで知ったのだが、発表の原文はこちら。

The Detox Dossier(Sense About Science January 05 2009)


この調査そのものについては、上記2つのブログ記事を参照していただくとして、デトックスそのものについてちょっと書き留めておく。

デトックスについては、実は2007年にも調べたことがあった。以下、記憶で書くことになるのである程度割り引いて読んで欲しいのだが、書店や図書館で片端から関連図書をひっくり返してみても、そもそもデトックスとはなにかということについて「解毒や浄化という意味です」とか「体内の重金属などの有毒物質を排出する」といった程度以上には決まった説明がなかった。少し詳しい説明になると、本によって違う。甚だしい場合は、同じ著者でも書籍によって異なる説明をしているケースさえあった。そもそもまともに定義と呼べるような記述が、ほとんど見当たらなかったことを記憶している。

AFPの記事中でも「同じ定義を用いている企業は1社としてなく」と書かれているが、ほぼ同様の状況があったわけだ。

また、国内メディアではあまりデトックスのうさんくささを採り上げた記事は見当たらなかったが、海外ではその頃からデトックスに関して注意を喚起する報道が出されていた。BBC Newsには「Do detox diets work? (デトックスダイエットって効くの?)」と題した特集コーナーまであり、ほかにも食品の安全などを扱うサイトでは、注意を喚起する記事がいくつも見られた。


そうした情報を渉猟していた際に気づいたのだが、そもそも日本と海外のデトックスは、だいぶ様相が違っていた。海外でのデトックスの主流は、サプリメントや機能性食品のようなものを摂取する方法だったのだ。そこに含まれる成分が体内の有害物質と結びついて、体外に出て行きやすくなるといった説明がなされる。

もちろん、AFPの記事にもあるように〈「足用パッチからストレートヘアアイロンにまであらゆるもの」に使用されている〉というぐらいで、ほかの方法も無数にあるのだろうし、2007年ごろにもあったのかもしれないが、当時はその食べるデトックスが危険視されていたという事情がある。実際になんらかの効果があるサプリメントでも、有用な成分まで一緒に体外に出してしまうものであったり、あるいはデトックス・サプリメントなどの過剰摂取や、そればかり摂取するといった過激な利用者がいたために、はっきりとした健康被害が確認されていたのだ。

日本はというと、食べるデトックスもあるが、どちらかというと体を動かすとか、フットバスで汗をかくとか、あるいはエステサロンでなんか施術を受けたり、「それ以外の方が主流」といった傾きがあった。デトックス・フットバスについては、毎日放送(MBS)Voiceという番組が「シリーズいま解き」として「“足裏から毒素”はニセ科学!?」を放送したことをご記憶の方もいるだろう(すでに番組のサイトから消えているので、魚拓にリンク)。


Amazonで「デトックス」で検索すると、最も古い本では2000年のこの本がヒットする。デトックスと書名にうたう本は2003年からはじまっている。そして昨年10月にもデトックスをうたう本が出ている。

書名を眺めて行くだけで、方法は実にさまざまなことがわかる。驚いたことには「お掃除デトックス」とか「恋愛デトックス」「スピリチュアルデトックス」なんていう本もある。比喩らしいがメンタル・デトックスをうたうCDまである。ひょっとすると、これもなんとなく定着してしまった言葉で、解毒とか浄化に近い使い方ならば具体的な意味合いは「なんでもあり」なのだろう。年代順に見て行くと、新しいほど「ヒーリング」とか「リラックス」とかいうのと、どこが違うんだというようなものが出てくる出てくる。

しかし、なかには「ニューウエイズでアトピーに克つ―経皮毒がなくて安心 体の芯からデトックス!」だとか「デトックスで治す自閉症」だとかいったように、これを真に受けてアトピーや自閉症の治療から遠ざかってしまい、しかも著者の言うような効果がなかったら(ふつうに考えれば期待できないわけだが)、一体どうなるのだろうというようなものもある。

将来はともかく、いまのところのデトックスは、洋の東西を問わずなんらかの毒出し方法を思いついた人がいれば成立してしまうということなのだろうとしか言いようがない。この状態では、言い出しっぺ以外に、試してみたら「よかったような気がする」という人さえいれば完璧なのかもしれない。


テレビショッピングを見ていると、何人かが「これがよかった」「効いた」と言えば、あとは「効果は人によって異なります」とテロップを出しておけば切り抜けられるのが日本の健康産業・美容産業らしい。残りの、例えば1万人試して9千990人が「別に」とか「具合悪い」という結果だったとしても、それが確認されるまではオッケーというのが、この種の市場ということなのだろう。

もちろん、公正取引委員会あたりが「根拠となるデータを示せ」と命じた際に、それが出せなければ不当表示などと判断されることになる。そうなると、排除命令が出されたり販売停止になったりするわけだが、そこまでの事態になる製品は多くはない。それは、多くの製品は安全だと言うことでは必ずしもない。誰かが問題にするまで、そうしたハードルが課されないだけのことだ。

医療用だとかトクホ(特定保健用食品)だとかいう「特殊な製品」でなければ、メーカーは販売前に誰かに効果を実証してみせたりする義務はないのだ。一般の健康食品なら、極端なことを言えば「こうすれば効果あるかも?」と思っただけで製品化しても、お上に目をつけられるまでは、大手を振って売りまくれるし、テレビで宣伝もできるということになる。

書籍だって同じだ。いや、もっとひどい。誰かが訴えて、製品を販売するための広告でしかないだとか名誉毀損だなどと判断されない限り、販売中止や回収の義務もない。まったくのウソが書いてあっても、そのまま売り続けることが可能なのだ。

「効果のはっきりしないものを売ることの道義的責任は」などということを考えたことのない業者であればもちろん、まじめな業者でも「効果の有無はどのようにして確認するのか」といったことをちゃんと理解できていなければ、おかしなものを売ってしまうことはあり得る。危険の有無の判断となると、効果の有無の判断よりもさらに難しいだろうが、そのレベルの業者には望むべくもないだろう。


AFP記事の末尾にある物理学者のコメントが感慨深い。
 また、物理学者のOliver Fenwick氏は、デトックス産業が大成功を収めていることを認めた上で、「デトックス産業は宣伝文句がすべてだ。デトックス製品を注意して見ると、こうした製品の大半は体がもともと持っている治癒力以上のことは何もできないことがわかるはずだ」と語る。

これはマイナスイオンとまったく同じ構図ではないか。

しかし忘れてはならない。「名前だけで意味はない」ということは、「名前だけだから危険はない」ということとイコールではないのだ。

デトックス・ダイエットで重い脳障害を得てしまった人さえいる。しかも、有害物質を摂取してしまったなどということではない。彼女がデトックスに使用したのは、単なる水なのだ。

デトックスダイエットで脳障害→賠償金1800万の判決下る。(幻影随想 2008年07月29日)

気軽で手軽な美容健康法で一生を棒に振ることのないよう、お気をつけ下さい。
posted by 亀@渋研X at 03:07 | Comment(0) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 英国で若手研究者たちが「デトックスは無意味」と発表
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