まあ、ぼくがぐしゃぐしゃ言う話でもないんだとは思うのだけれど、「ああ、こういうメディア側の勝手な約束事だの工夫みたいなものって、意外に気づいてもらえなかったり、裏目に出たりするのね」なんて思った部分もあり。
●あれは菊池誠が「書いたもの」ではない
末尾に「本誌編集部=構成」と書いてある。これは一般に〈談話取材したものを編集部が再構成しました〉という表明。新聞などで、文章の最後に「(談)」なんて書いてあることがあるけれど、あれも同じことです。
●「つきあい方」が書かれていない
「ない」って言ってる人もいるけど、ちょっとだけある。かろうじて「オレはこうしてます」型の結論。最後の
多くの場合は「大型」や「小型」、「Z型」などと答えてはぐらかしている。が、それ。これは言外に「人にどうしろとは言えないけれども、オレ自身はこうしてるよ」というやつですね。まあ、それにしても少ないのは確かだけど。
●こういうタイトルってどうなの
だよねー。タイトルが「どうつきあうべきか」となっているのは明らかに編集方針とのからみ。必ずしも取材された側の意図ではない(それを通した話者に責任がないとは言えないけど)。
上掲リンク先の記事でも、「プレジデント」というリンクをクリックすると、同時期に公開された記事に「〜べきか」というタイトルが並んでいるのがわかります。
記憶力の減退を感じたらどうすべきかというように「べきか」シリーズの1本なのだ。複数の記事に、個別のタイトル以外に統一されたサブタイトルみたいなのをつける方法を「通しタイトル」なんていうんですが、そういう手法に近いですね。
記憶力に関する一般の人たちの大きな誤解は、「人間の脳細胞は1日当たり10万個死ん...
4月21日(火) 16時21分配信 / 経済 - 経済総合
血液型で性格を決めつける人とどうつきあうべきか
「血液型性格診断」に科学的根拠がないことは、すでに心理学の実験で証明されている。...
4月20日(月) 13時32分配信 / 経済 - 経済総合
電車内で痴漢に間違われたらどうすべきか
■目撃者が少ない「痴漢」、自衛策は必須電車内における痴漢行為が後を絶たない。最近...
4月18日(土) 18時15分配信 / 経済 - 経済総合
不況期に強い「資格」はどれを取るべきか
■昇給にも、昇格にも、転職にもメリットは少ない「100年に一度の大変な不況。不安...
4月18日(土) 18時12分配信 / 経済 - 経済総合
こういうのって、紙メディアの誌面では物理的にずらっと並ぶからパッと見て意図がわかるんですけど、ネットではわかりにくいですね。
もちろん発表された内容に話者は責任をもたねばならない。「どうすべきか」というお題をもらって取材を承諾しながら「べき」については語れなかったのか、それとも取材が終わってからタイトルがついたのか、それはわからないけれど、雑誌記事なのでテレビや新聞と違って、発表されるまで本人もチェックできなかったということもないだろう。
でまあ、「どうすべきか」で統一されているにも関わらず、どの記事でもそこをたいして強調しているわけじゃないのは、編集部もそこには主眼を置いていないってことなんでしょうな。いわゆる「キャッチーな見出しを狙え」ってやつですね。「まずは読んでもらわなければ始まらない」と考える人たちは、デザイン性やカッコイイ写真とともに重視します。もちろん賛否あるでしょう。制作者サイドだって、ほとんどの人は内容と乖離したタイトルは避けたいと考えているけど、「このタイトルは、どれぐらい乖離しているか」「どの程度の乖離まで許容するか」では、よく意見が割れます。
●血液型性格判断の最大の眼目は差別問題
このプレジデントの記事をきっかけにして、 koshianXさんがこんなエントリを上げている。
血液型性格判断はエセ科学問題ではなく差別問題だ(狐の王国 2009-04-26)
冒頭で「はてブの反応を見るとただのニセ科学問題だと考えてる人が多いようで……」と書いておいで。ぼくはそんなに端から細かく見たわけではないので、よくわからんかった。だけど、そうだとするとちょっと残念。
プレジデントの記事は、こう始まる(赤字は亀による強調)。
「血液型性格診断」に科学的根拠がないことは、すでに心理学の実験で証明されている。多くの人はそれを半ば理解したうえで、「しょせんは遊びだから」と軽く考えて話題のネタにしている。だが血液型性格診断には遊びでは済まされない問題が含まれている。そして、こう締めくくられる。
4冊累計で500万部を突破した『自分の説明書』シリーズで最初に発売されたのは「B型」だった。ネガティブに評価されやすいB型を取り上げれば、読者の関心を集められると考えたのだろう。これはB型が差別されているという証拠にほかならない。血液型という後天的に変えられない属性への差別は、陰湿でタチが悪い。
性別や出生地をめぐる差別は厳しく取り締まられるようになり改善された。血液型にもそのような取り組みが期待される。いまだに履歴書へ血液型を書かせるような企業もある。「就職差別」の被害を司法の場で争うようなケースが出れば劇的に改善するかもしれない。だが現状では、いくらニセ科学だと訴えても焼け石に水だろう。頭と尻を差別問題で固めてあるわけだ。少なくとも、菊池&編集部の認識としては「重要な眼目のひとつが差別問題」であることが、これだけでも明らかだろう。
私も宴席で血液型を聞かれることがある。多くの場合は「大型」や「小型」、「Z型」などと答えてはぐらかしている。天気と血液型は差し支えのない話題と考えているのかもしれないが、とんでもない。むしろ「それしか話題がないのか」と見下される恐れがあることを、肝に銘じてほしい。
ちょっと話が戻るけど、その意味では主題は「血液型で性格を決めつける人とどうつきあうべきか」じゃなくて、「血液型性格判断をどうとらえるべきか(主に差別問題と考えるべき)」だと思うんだよね。それを「どうつきあうべきか」としたのは、やっぱり読まれるタイトルを意識したんでしょうね。前述のように、最初からそういうお題かもしれないんだけど、その場合は取材してみたらイマイチそういう話にならなかったけどタイトルを変えなかったってことになるわけで。菊池&編集部が悩んだかどうかはわからないけど(^^;;
こういう手法(内容とイマイチかみ合わなくなってもキャッチーに)というのは、ニセ科学的、悪徳商法的だよなあ、とは思う。少なくとも通じる部分があるよね。それだけにビミョーな気持ちになる。
しかし、血液型性格判断やニセ科学的なものを問題視している人よりも、「別にいいんじゃない?」とかそもそもニセ科学的なものがあるなんてことさえ考えたことのない人に届けるには、こういう手法に一定の効果があるのかもしれない、とも思う。
もうね、こういうところでも思います。「ニセ科学側はすでに勝利している。ニセ科学の蔓延を問題視する側は、負け戦続きによる失地回復から始めなければならない」のだなあ、と。
●血液型と性格に実際に強い関係が見いだされれば、血液型性格判断は差別ではなくなるのか
ちょっと踏み込み過ぎかもしれないけれども、せっかく差別の話を採り上げたので。
血液型性格判断には科学的根拠がないという事実の説明に際して、ニセ科学問題に言及される(なお、プレジデントのこの記事では「診断」と表記されているが、菊池の従来の用語では「判断」)。しかし、菊池は「ニセ科学だから問題」としているわけではない。以前から「科学的根拠があっても差別」「本人の努力等では改善できない要因を理由にした待遇の決定などは、差別にほかならない」といった主旨の発言をしている。
具体例は別エントリに掲げた(【資料】血液型性格判断と差別(kikulogから))。
「ニセ科学」と「差別」、ふたつの側面のいずれがより重要かという点については、社会問題としては差別の側面をより重要だと考えている、という発言もあったと思うんだが……見失ってしまった(汗)
追記:
>見失ってしまった
ありました。別エントリにもすでに掲出した「きくち October 22, 2007 @09:24:31」の末尾ですね。
●写真がカッコ良すぎる件
そんなこと言ったって(^◇^;)
主にカメラマンさんの腕ですね。でも、実物とそんなに違わないよ? もともとロック小僧だしね。
そういえば、「若い頃の写真か?」とか言ってる人もいたか?(笑)
まあその、まだ11月に50歳になったばっかりだし、本人はそれなりに若いつもりらしい。そういえば、この動画(4分めあたりに写っている)について「なんか森毅さんに似て来たのう。 手塚キャラにもこんな人がいたような」と言ったら、「めっちゃ老けてるよね、わし(^^; 」と返って来た。やっぱり老けて見えるのはイヤなのであろうか(爆)

いまのプロフィールは地味な写真だけど、その前は炎天下のベランダでタンクトップにテンガロンだったからなあ。Z.Z.TOPかっつうの(^◇^;)
追記:
>炎天下のベランダでタンクトップにテンガロン
Internet Archiveにあった。これだ。

タグ:血液型性格判断
kikulogに、プレジデントの記事についての菊池本人とのやりとりがあります。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1174403052#CID1240645265
でもまぁ基本ここ30年近くあんまり変わらないような気もします。見た目も格好も。
いや、ぼくは今もしますが(汗
ま、彼よりひとつぐらい若いし(^^;;
いまさらですが、この帽子はテンガロンじゃなかったね(^^;;