2009年06月20日

ゲーム脳、4分の3が「ない/わからない」と回答

本日はすでにヨッパライなのですが、なんか変なものを見たので、ちょっとまねしてみます。
ゲーム脳、4分の3が「ない/わからない」と回答(DAME NEWS 2009/06/19)

インターネットや携帯電話を利用した市場調査会社、アイシェア脳科学ブームについての調査結果を発表した。その結果、脳科学に関心を寄せている層は、全体の半数に過ぎないことがわかった。また、この調査で「ゲーム脳は存在するか?」という問いに対して全体の4分の3に当たる層が「しない」「わからない」と否定的な回答を寄せた。今後の脳ブーム市場が若干冷え込んで行くことも懸念される。


発表によると、「脳科学関連の書籍、ゲーム、テレビに興味はありますか?」との設問に「ある」と答えた人は調査対象の597人中311人(52.1%)。「ない」と答えた286人(47.9%)をわずかに上回った。2人に1人は「脳科学に関心がある」層だとわかったものの、関心のある層が明らかに多いとまでは言えない結果に留まった。ポイント差も誤差を疑えるレベルのため関係者の落胆が予想される。

また、「ゲーム脳は存在すると思いますか?」という問いに対しては、全体の半数近い284人(47.6%)が「わからない」と回答してトップ。残りはほぼ拮抗したものの、「存在しないと思う」160人(26.8%)が「存在すると思う」153人(25.6%)をわずかながら上回った。

もっとも調査では、「ゲーム脳とは何か」が説明されておらず、回答者が自分の思い込みで回答している可能性もある。元祖ゲーム脳である森昭夫氏の著作で「ゲーム脳説」を読んでいる可能性があるのは、前述の「脳科学に関心がある」という層であろう。しかし、この層に限ってみても136人(43.7%)が「わからない」と回答してやはりトップ。無関心層も含めた際とほとんど変わらない結果となった。しかし、「存在すると思う」が108人(34.7%)で「存在しないと思う」の67人(21.5%)を上回った。

■脳科学ブームに詳しい某TVプロデューサ
同調査では、男性より女性が、20代よりも30代・40代が「関心がある」「ゲーム脳はある」と答えている率が高い。したがって、30〜40代の女性層をターゲットに、「あなたのお子さんは大丈夫ですか?」と刺激することができれば、まだ豊かな商機があるはずだ。なにしろ、最大層は「わからない」なのだから、脳科学者と名乗ってくれる人を連れて来て、不安を揺さぶる発言をしてもらえば、それが効果的でないはずはない。バックを黄色で、文字を赤で、SEは不協和音でガーン!といけば、まだまだ行けます。なに? ものを買ってるのは3割? いいんだよ、CM枠さえ売れれば別に。
上記カコミ内の記事は、架空のニュース記事です。あえてキツいバイアスをかけています。が、世間にはこの程度のバイアスのかかった記事はいくらでもありそうです。

ちなみにゲーム脳については、概念さえ定かでないものを4分の1の大人が信じている(可能性がある)、ということでありましょう。あーあ。


上記記事は、下記のニュースリリースを見てこしらえたものです。

脳科学関連の書籍、ゲーム、テレビに興味がある5割(アイシェア リサーチ 2009年6月19日)

なんかもう、この(いい加減な分析の)ニュースリリースを適当に要約しただけとしか思えないニュース記事があったのですよ。

「ゲーム脳」は存在するか? 賛否が拮抗――アイシェア調べ(japan.internet.com  2009年6月19日)

「japan.internet.com」って結構まともな印象があったんですけどねえ……。残念。「Webマーケティング」カテゴリはスカなんですかね。それとも、これを書いた記者の問題か、なにか大人の事情があるのか。

だいたい、ゲーム脳についての意識調査なんかじゃないですよ、これ。おまけに市場調査の会社だから、脳ブームと脳科学市場は今後どうなるかの調査と見るのが妥当でしょ?

調査結果だって、ここからわかるのは「半数が脳科学っぽい話に関心がある」「女性と30代以上が関心が高い」「関心がある層も、購買行動に結びついているのは平均では4割いかない」ってぐらいでしょ? しかも数百人規模でネット経由限定だから、サンプルに偏りがあるし。「話の種」「考えるヒント」ぐらいで、市場調査結果と声を大にして言えるようなものなのかどうか。

「japan.internet.com」の記事カテゴリにも現れているように「Webマーケティング」の話題でしかないんですよね。はぁ。


冒頭の架空ニュースは、架空とはいえウソは書いていません。しかし無理矢理な理屈、強弁しているところが多々あります。表現も杜撰です。

どう書けば「ゲーム脳を真に受けている人なんか少数派だよ、そういうことを言い立てているのは商売人だけだよ」という印象を与えられるか、ということを念頭に書いてみました。あまり真に迫りすぎて、うっかり者が信じてもまずいので、適当にウソっぽくしたつもりですが。

少ししか差のないものを大げさに言ったり、どっちつかずの回答をどちらか一方に寄せて語ることで多く見せたり、どうとでも解釈できるはずのことを、わざと一方的に書いたり(あるいは逆に書いたり(^^;;)、「○○と思う」を「○○」と省略したり、そういうことをしています。で、お気づきのように、これは報道記事がよくやっていることですが、まあ体のいい「印象誘導」ですよね。

一緒に数字が書いてあれば、そういう妙な誘導があっても見破れそうなものなのですが、逆に「数字が書いてある」ということだけで安心し、記事を信頼して修飾語の通りに受け取ってしまう、ということもありそうです。

こういう印象誘導記事が出来上がるのは、書き手の思い込みが原因のうっかりミスなのか、意図的なものなのか。原因はともかく、記者だろうが学者だろうが「自分に見えているようにしか世界を記述できない」ので、こういうことは日常的に起きるわけです。だからこそ、学者やジャーナリストはそういうミスをしでかさないように訓練を受ける……のだと思いたい。

実際にはそういう訓練なんかは受けてないのかもなあ。少なくとも、ぼくはそういう訓練は受けてない。しかし、スーダラ大学とブラック企業にしかいたことないからだ、と思いたい。


微妙な操作もしています。

たとえば
調査では、「ゲーム脳とは何か」が説明されておらず、回答者が自分の思い込みで回答している可能性もある
と書きましたが、この書き方だと、うっかりすると「説明されていない」が事実で、「回答している」だけが可能性だと思いかねません。でも、実際には「説明されていない」のも、「回答している」のも「可能性」にも取れるように書いています。だから、間違いでも嘘でもないはずです。

ちなみに調査時の質問文は公開されていませんので、本当のところはどうなのか本当にわかりません。


japan.internet.comの記事では
ちなみに、テレビゲームやコンピューターゲームのやりすぎは脳に悪影響をおよぼすという「ゲーム脳」理論が一時メディアでも話題となったが、このゲーム脳が存在すると思うかとの問いには
なんて書いてあります。

でも、ゲーム脳説って、そこまで単純な話じゃないですよね?(参照:ゲーム脳Q&A

ゲーム脳については、勝手な理解やオレ理論が世間にあふれています。そうしたものを全部ゲーム脳の仲間と考えて最大公約数を作ると「テレビゲームやコンピューターゲームのやりすぎは脳に悪影響をおよぼす」となるのでしょう。もっとも、回答者はおろか質問者だってどういう理解で質問項目をこしらえたかわかったもんじゃありませんけど。

あー、いかん。酒が回って来た。そろそろ寝ます。ごめんなさい、おやすみなさい、ぐう。


posted by 亀@渋研X at 03:35 | Comment(0) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - ゲーム脳、4分の3が「ない/わからない」と回答
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