2006年02月21日

少年犯罪は増加・凶悪化しているのか

ゲーム脳や脳内汚染といった類いの言説が手を替え品を替えて現れ、また、それらが受け入れられやすいのは、そうした主張が大方の持っている「近年、少年犯罪は増加・凶悪化している」という印象に呼応するからだという意見がある。さもありなん。
「近年、少年犯罪は増加・凶悪化している」という主張は80年代からマスコミの主たる論調であり、もはや「社会常識」と言ってもいいだろう。しかし、この常識は誤っているという指摘も後を絶たない。一部ではすでに「増加・凶悪化しているとは必ずしも言えない」ということが常識とさえなっていると思うのだが、改めて整理しておく。

まず、その「常識」の浸透度を見てみよう。昨2005年の1月に総理府が行った、少年非行に関する世論調査がある。

内閣府■世論調査報告書 平成17年1月調査「少年非行等に関する世論調査」
http://www8.cao.go.jp/survey/h16/h16-shounenhikou/index.html

この調査によると、確かに「少年犯罪が増えている」と考えている者の割合は回答者の9割を超えている。また増えているのは「低年齢層によるもの」「凶悪・粗暴化したもの」「突然キレて行うもの」という回答がそれぞれ5割を超え、平成13年度の同種調査と比較しても増えていると答えている人の割合は増えている。(2-1-(1), 2-1-(2))
しかし、実際に回答者の周囲で起こり問題になっている少年非行は、上位から順に「喫煙や飲酒,深夜はいかいなどの不良行為」「バイクや自転車などの乗り物盗」「万引き」で、それぞれ2割前後。低年齢層化との関連はなんとも不明だが、いずれも凶悪化や突然キレるといったこととの関連は考えにくい。また、「特にない」という回答が3割を超え、最多であるということも目を引く。(2-1-(4))
ここから読み取れるのは、多くの人が少年犯罪(非行)が増え、凶悪化していると考えているものの、それは多くの場合、身近に見聞きした事例に基づく判断とは考えにくいということだろう。つまりは身近ではない伝聞、マスメディアから受け取った印象に強く影響されていることが疑える。

確かに「少年犯罪の増加・凶悪化は統計に現れている」とする主張は少なくない。代表格のひとつに、内閣府有識者懇談会での前田雅英都立大学教授の報告がある。

内閣府青少年の育成に関する有識者懇談会 最近の少年犯罪の増加について(平成14年10月18日)
http://www8.cao.go.jp/youth/suisin/ikuseikon/kondan021018/08shiryou/08shiryou1.pdf

しかし、マスメディアで採り上げられる統計がここ十年程度の短期のものであったり、統計の取り方の変化や法律の適用方針(検挙方針)の変化など、さまざまな要因を勘案していないという指摘もある。
2月23日追記:
検挙方針などとの関連がわかりやすいサイトに下記がある。
この記事を書いたときはすっかり忘れていたので追加。

少年犯罪は急増しているか http://kogoroy.tripod.com/hanzai.html
統計そのものを問題にするわけではなく、その読み方を問題にする指摘もある。和光大学の奥平康照教授は、少年犯罪は増加しているわけでもないし、凶悪犯罪が増えているわけでもないが、質的な変化が起きているとして〈衆目一致の不良少年ではなく、経済的にも安定した家庭で親から大切にされて育った「普通の子」が、残虐事件を次々に引き起こすようになった。〉〈凶悪な少年犯罪は私たちの身近でいつどこで起こっても不思議ではなくなった〉ために、冒頭のような印象があるのだと分析している(冒頭では、前出の前田教授の指摘への疑義も提出されている)。

和光大学総合文化研究所■少年犯罪は凶悪化しているか 奥平康照
http://www.wako.ac.jp/souken/touzai01/tz0113.html

実際の少年犯罪や少年による凶悪事件の件数や発生率の推移については、「戦後だけ見ても必ずしも近年増加、凶悪化しているとは言えない」という指摘もある。下記はその代表例。

少年犯罪データベース http://kangaeru.s59.xrea.com/
 〃 ■少年による殺人統計 http://kangaeru.s59.xrea.com/G-Satujin.htm
スタンダード 反社会学講座 http://mazzan.at.infoseek.co.jp/
 〃 ■第2回 キレやすいのは誰だ http://mazzan.at.infoseek.co.jp/lesson2.html

特に「少年犯罪データベース」は、豊富な事例を挙げながら、猟奇的な事件や快楽殺人などの異常な事件はむしろかつての方が多いと指摘している。

いずれにしろ、「近年、少年犯罪は増加・凶悪化している」という常識は、確かに広く世間に根付いているが、疑いようもない事実として自明の前提とするには無理がありそうだ。
もっとも、ゲーム脳や脳内汚染といった言説との関連について言えば、論理的に破綻したある仮説の前提が、これもまた誤っている可能性が高かったということに過ぎない。仮にこうした傾向が真実だったとしても杜撰さが帳消しになるわけではない。
子どもたちに何かが起きているのだとすれば、おそらくは「問題は別のところにある」のだ。そして、「ありもしない恐怖」への対策を求めて破綻した論理にすがるというのでは、二重三重に救われない。もしも提唱者自身が論理的に破綻しているとわかってこうした仮説を提出しているのであれば、親心をもてあそぶ犯罪的な行為と呼ぶこともできるかもしれないが、おそらくはそういうことではないのだろう。マジメに研究をしているつもりなのだと思う。なおさらやり切れないけど。

余談だけど、blog「少年犯罪データベースドア http://blog.livedoor.jp/kangaeru2001/」はいろんな意味で興味深い :-p


posted by 亀@渋研X at 23:22 | Comment(0) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 少年犯罪は増加・凶悪化しているのか
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