2010年10月20日

ベースが入らない本当の理由[mixi日記転載]

#mixi日記にリハビリがてら書いたテキストの転載です(元テキスト)。

弾けるとカッコ良く見える楽器9パターン(スゴレン 2010年10月19日)

なんとこのコラム、mixiの日記ランキング1位という意外な展開! しかも昼間見たときは、1割ぐらいだった「ベースが入ってない!」というツッコミの声が、夜中になったら急増しているように見える(^^) ちなみに、昼間はあと1割ぐらいは「弾けても別にモテてねえよ!」というものだったが、夜中はそこをつついている人はあまりいないみたい。
ターンテーブルが楽器かよという大量のツッコミも昼間はあったけど、夜中になってからはさほど目立たない。深夜族には楽器なのかしらね(^^;;

     ◆
さて。
なぜベースが9位までに入っていないのか。
それを考える前に、9位までの順位を見てみよう。

【1】真剣に弾く姿がカッコいいギター
【2】繊細な指先にドキドキするピアノ
【3】ワイルドな魅力たっぷりなドラム
【4】育ちの良さを漂わせるヴァイオリン
【5】音色が男性的且つ優しいチェロ
【6】音色と立ち姿がオシャレなサックス
【7】華麗な音色で聴く人を魅了するトランペット
【8】日本男児の魅力あふれる太鼓
【9】華麗な手さばきに惚れるターンテーブル

意外な順位もあるけれど、そこよりも「一見してわかる楽器」「小学生でも識別できそうな楽器」ばかりだということを見逃してはいけない。つまり、このアンケートの調査対象は「音楽に詳しくない人」の比率が高いのかもしれない。それが世間一般程度なのか、もっと詳しくないのか、その辺はわからないけどね。

それを踏まえつつ、いくつかの可能性を考えてみたい。

【理由1】弾けてもカッコよくないと、ホントに思われている
【理由2】回答者に忘れられている
【理由3】ベースがなんなのか、よくわかっていない
【理由4】10位以下に入っているが諸事情から言及しなかった
【理由5】ベースギターとその他のギターが識別できていない

以下、一つ一つ見て行こう。
      ◆
【理由1】弾けてもカッコよくないと、ホントに思われている

素直に考えると、アンケート結果はそういう意味になる。で、それが正しいと仮定することもできる。昔からベースは地味で、その重要性を理解している人でも「縁の下の力持ち」などという不可視の存在にたとえることが多いぐらいだ。いるかいないかわからんのだ。

特にベースといえばベースギターを意味するバンド形式では、ギターがうまい順にリードギター、リズムギター(サイドギター、2ndギター)、ベースギターと選択権があらかじめ決定されていた時代も長くあった。こんなこと、それ以前には考えられなかったのではなかろうか。ジャズバンドでウッドベースが、ブラスバンドでチューバが、オーケストラでコントラバスやバスーンがそんな決め方をされるなんて……あー、バスーンはあるか(爆)

まあ、だから、そもそも「ベース担当なんてカッコ悪い」という見方があってもおかしくはない。

      ◆
【理由2】回答者に忘れられている

さて、そういう地味な楽器であるベースは、当然ながら低音部を担当している。

地味なので、音楽を聴くときも低音部がどうなってるかなんて、よくわからない。ぼくは下手の横好きとはいえベース弾きなのだけど、それでもぼんやりと音楽を聴いているときは、追っているのは主旋律ぐらい。つまり楽器の中で目立つのはメロディやソロを担当するギター、キーボード、ヴァイオリンやトランペット、コルネット、フルート、サックス等が該当する。あとは、ときどきドカーンと出てくる打楽器だね。

そりゃあ、「おっ、このベースラインかっこいい!」なんていう瞬間はあるけれど、それは音楽をやる人に特有の反応かもしれない。

つまり、音楽に詳しくない人が楽器と言われたときに思い浮かべられるのは、そういう目立つ楽器だということ。目立たない楽器は、カッコイイとかなんとか言う前に、思い出してももらえなかった可能性がある。

      ◆
【理由3】ベースがなんなのか、よくわかっていない

地味でなにをやっているかよくわからないだけじゃない。低音部を担当する楽器は、ジャンルによってはいろいろある。ロック・バンドみたいなケースでも、ベーシストがギターかなにかに代わったり、キーボードで低音を担当する曲だってある。「理由1」で書いたように、オケや他の形態では低音担当もいろいろある。つまり、音楽にあまり関心の強くない人にとっては、低音楽器って具体的にコレとイメージしにくいのかもしれない。

      ◆
【理由4】10位以下に入っているが諸事情から言及しなかった

この調査のまとめをした人だって「音楽にあまり関心の強くない人」なんじゃないか、というのが「理由の4」だ。回答者のなかには音楽に詳しい人だっているだろう。そうすると、サックスでもバリトン・サックスがいいとか、ちょっと低めのユーフォニウムが好きとか、ペダル・キーボードがカッコイイとか、まとめる人にしてみれば「なにを言っているのかわからん」というような回答もあったかもしれない(まさか、ペダル・キーボードと書いた人はそんなにいないだろうけど)。

見た目のカッコよさを問うているのだから、実は低音担当かどうかなんて問題じゃないのだが、それが何を意味するのかわかりかねる、というような回答群を前にした担当者はどうするだろう? 学術的な調査でもないんだし、回答者だってそんなに詳しい人が多いわけじゃなさそうだし。

そして、9位まで、というのはいかにも中途半端だ。ここでやめなければいけなかった事情が、なにかあったのではないかと勘ぐりたくなるのは人情だろう。10位以下を紹介さえしていないのも気になる。

で、こういうとき、もしも「ベース・ギター」という回答が多数あったら、担当者はどうカウントしたくなるだろう? これはベースとカウントすべきか? それともギターなのか? これはマジメに考えても興味深い問題だと、ぼくは思うね。ベース・ギターはカッコイイけど、コントラバス(ダブルベース)はカッコヨクない、とかその逆徒か、そんなふうに思う人がいてもおかしくないもんね(^^)

      ◆
【理由5】ベースギターとその他のギターが識別できていない

回答者だってベース・ギターとギターの区別がついていない人がどれだけ交じっていたか、これはわからんよ。少なくとも、テレビでバンドを見るだけの人だとギターとベースギターの区別がついていないという例に、ぼくは何度も出会っている。

ベースをギターに入れちゃって、ギターを1位に押し上げちゃったんじゃないの? あるいは、2位の「ピアノ」だって、鍵盤楽器全般を混ぜちゃってないか? そこら辺が、なんとも怪しいなあ。

実は、全部が理由なんだけど、ここが一番なんじゃないかなあ、と思っています(^^)

     ◆
実のところ、どういう人を対象にどういう方法で調査したのか、特に回答方法が選択式だったのか記述式だったのか、それで全然違う可能性が出てくる。たとえば8位が「和太鼓」ではなく「太鼓」と書かれているのが気になる。もしも選択式なのだったら、一方に「ドラム」があるのだから「和太鼓」じゃないとおかしくない? それとも「太鼓」にはティンパニや大太鼓、小太鼓も含むのかな? 文章からはそう見えないけど。「ドラムス」じゃなくて「ドラム」だというのも、いかにも詳しくなさげ。

また、選択式なら「ターンテーブル」なんて項目があるはずはない、なんて気もするのだが、それも音楽好きの「偏見」かもしれない。

ぼくは、この調査は自由記述方式だったんじゃないかと思うね。

     ◆
ところで、実はこんな調査が最近あって少しネットで話題になった。

■若者のギター離れ? バンドで好きなパートで4位に(Ameba News 6月12日)
http://news.ameba.jp/weblog/2010/06/69832.html

この記事で紹介されている「バンドで好きなパートは何?」というアンケートで1位だったのは、なんとここに出てこないベースだった。

 1位 ベース(28.6%)
 2位 ボーカル(23.6%)
 3位 ドラム(21.5%)
 4位 ギター(18.4%)
 5位 その他(5.1%)
 6位 キーボード(3.1%)

#ベースが1位も意外だが、キーボードが「その他」以下って(汗
#あれ? そういえば、今回の調査ではキーボードもないね。
#2位はピアノなんだけど……(^^;;

この調査への回答の大半はすでに消えてしまったが、質問文(http://bit.ly/cavZMV )や回答の一部はGoogleのキャッシュで見ることができる(ベース:http://bit.ly/9bqVyy その他1:http://bit.ly/boDs90 その他2:http://bit.ly/dbiSlM すべて:http://bit.ly/92twMp )。

ここでは「バンドで」と限定しているので、回答者はそもそもバンド形式の音楽が好きな人に限定されるだろう。回答を見ると、誰それのファンだとか、自分がベースを弾いていた、なんてコメントも目立つ。ネットでアメーバがアメブロ・ユーザー向けにやった調査ということで、回答者の年齢層も若めかも。見える範囲では女性が圧倒的に多いね。この調査で言えるのは、「アメ・ブロのユーザーで、提供企業のサービスからブログのネタ探しをしているような人が『バンドで好きなパート』は、1位がベースで、2位が〜」ということ。若者は、でもないし、インターネットユーザーは、でもない。対象がピンポイント過ぎて、ネタ提供以上のものではない。調査とか言うなってレベル。

      ◆
その意味では、今日の記事で言えるのは「オトメスゴレンの女性読者」の傾向でしかない。ときどき「mixiニュースで」と、まるでmixiが記事を作っているように言う人がいるけど、違うからね。こないだうちの長女にも教えたけど、mixiは配信された記事を掲載しているだけ。内容には関わっていません。

■オトメスゴレン
http://girl.sugoren.com/

実施中のアンケートは、たとえばこんなもの。
http://girl.sugoren.com/cat197/index.php

音楽関係の質問はもちろんナッシング。もちろんスポーツ関係もない。IT関係も「メールがうんぬん」というレベルを除けばナッシング。ほとんど恋愛話。

「取材実績」を見ると、こんな具合。
http://girl.sugoren.com/report/post_237.php

マーケッター臭がぷんぷんしますね(^^)

mixiで日記を書いている方々はいいんですよ。どうせネタなんでしょうから。真に受けてはないでしょね?

でも、このスゴレンからデータを買う企業もあるんだろうなあ。でもねえ、この程度の調査ですよ? ほかの調査だって知れたものだと思いません? なに? 上司やクライアントの目をくらます材料になればいい? そりゃごもっとも。上司やクライアントのみなさま、こんなゴミ調査に説得力を感じちゃダメですよ。

なによりもスゴレン。いい加減にせえよ(-_-)

最後まで読む人なんかいないだろうけど、ベースがランクインしなかった理由をほかにも思いついたら募集〜(^◇^;)
posted by 亀@渋研X at 04:38 | Comment(2) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - ベースが入らない本当の理由[mixi日記転載]
この記事へのコメント
音楽好きじゃない人を対象にしたアンケートを音楽をよく知らないひとがまとめた、って感じですね。この結果では曲を売るのには役に立たない。楽器を売るのには、ちょっとは参考にできるのかな。

まず想定されている音楽に暗黙のフレームがあって(レゲエみたいにベースがないと全く成立しない音楽とかは存在しないことになっている)、そこで使われている楽器、と云うのにもフレームがあって、そのうえどんな音楽が奏でられているのかも想定されていない、みたいな状況が前提になってるっぽいですね。

で、こう云う場合に、ベース(ベースギター)は、たぶん出てこないんですよ。ウッドベースとかチューバがでてこないのとおんなじで。

あと、単独での演奏があまり行われない、と云う単純な理由もありそう。
Posted by pooh at 2010年10月20日 08:00
> この結果では曲を売るのには役に立たない。楽器を売るのには、ちょっとは参考にできるのかな。

どういう層に売れるデータなんでしょうね。
ぼくはコンテンツ屋さんなので、「音楽に詳しくない女の子に訴求する人物イラストやマンガの主人公を考えるなら、ソリストがいいわけね(苦笑)」みたいな、一体ほかにナニモノを書くつもりだったんだよ、てなことも思ってしまいます。
Posted by 亀@渋研X at 2010年10月20日 13:29
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。

この記事へのトラックバック