2006年12月10日

教育産業・幼児早期教育で受け得る「被害」ってなんだ

このネタの大元kikulogの方のコメント欄で、「具体的な被害ってなんでしょう」という疑問が。犯罪を連想させる「被害」という表現が適切かどうかは微妙だと思いつつ、端的なものだけコメントとして投稿したのだけど、もうちょっと考えてみた。

考えてみて思うのだが、つくづく教育産業って魔窟だ。早期教育に期待を寄せている方々には申し訳ないのだけど、そもそも早期教育自体が怪しくて、なかでもESPだの波動だの言っちゃう七田式が飛び抜けて変だ、という以上のことは出てこない。
つまり「七田式だからどうこう」じゃないかもしれないものしか思いつかないのだ。

ホメオパシーといい七田式といい水伝といい、「現代人の心の闇とか病的な部分につけ込んでる」って図式なのだなあ、引っかかっちゃう人って誘蛾灯に群がっちゃう昆虫みたいなもんかもなあ、などと思うのだった。そうだとすると、科学リテラシーという問題じゃないよなあ。

って書いちゃうと、以下の具体的な検討はもう蛇足でしかないような。上記の話で納得できない人だけ読めばいいのかも。せっかく書いたからとっておくけど(貧乏性)。

まず、あっちに書いたコメント。
たとえば下記のブログ(どぎついなあ)で引用されている体験記のようなものを書くようになっちゃうと、シャレにならんとは思います。
http://kyouikusha.cocolog-nifty.com/blog/2006/09/__e514.html
事実なら超常現象としか言えないようなことを当然の事柄として子どもたちと語り合い、また子どもたちにそれを前提として働きかけ、子ども同士も働きかけ合うように指導しているというような内容です。
しかし、こういう方々が例外的存在なのか、そうじゃないのかが全然わかりません。
で、以下続きです。

【なにしろ「その教室が原因なのか」はわかりにくい】
もしも上記が例外だとすると、なんらかの結果が出たときにそれがその教育のためなのか否かが判定しにくいこと、親御さんが感じることと、そこの教育を受けた本人が長じてから感じることは、いろんな意味で違いそうだということから、メリットもデメリットも測りにくいと思います(これは教育産業全般に当てはまると思いますが)。

例外だとしても「七田式の独自性ゆえに出て来た方々だ」とは言えるでしょうけど、それじゃリスクを一般化できないですもんね。

やっぱり宗教への入信に似ているのではないでしょうか。宗教の場合なら入信者、この場合なら受講者というか入塾者というか、そういう方が「なにを期待するか」「どれぐらい入れ込むか」「『無駄・無意味だった』で終わるか『有害だった』まで至るか」などで受けるデメリットは千差万別のように思います。もちろん、よほどのミスリーディングがされるとかいうのでない限り、ほとんどの場合は賠償請求できるようなものではないと思います。
例外として、一部では「七田氏は講演などで『自閉症は親の教育のせい。しかし七田式で自閉症が治る』などと言っている」と報告されています。もしも本当に、そういった類いの「誤った前提」に基づいてあらぬ期待を抱かせていた場合、これは責任を追及できるものかもしれません。

【金銭的には「ふつうに高い」という程度では】
金銭的には、それほど極端な負担を強いられるわけではないのではないかと思います。
七田総合サイトにあるオンラインショップを見る限りでは、さほどの高額商品を扱っているわけではなさそうです。ほとんどが数千円程度で、最高額でも多分「パーソナル情報転写機」130,200円(消費税込み)ではないかと思います(www.shichida.com/shop/frm_item.aspx?prd=508091)。いや個人的には、多くの商品は「高っ!」と思うし、「この商品はいったいなんなのだ?」「また波動かぁ」などと思いますが、単に投資対効果ってことでいうと、教育関係にはもっとものすごい教材っていくらでもありそうな気がするし。

七田チャイルドアカデミーの教室の月謝はこちら(www.shichida.ne.jp/tuition/index.html)。おそらく他の早期教育の教室などと同程度なのではないかと思います。そうじゃないと継続利用が困難でしょうから。
ただ大人向けの右脳開発セミナーが1回6〜7万円と書かれていました。
どっちも僕にしてみると高いけど、必要と思っている人には「こんなもん」なのではないでしょうか。
また、××会といった類いのものがたくさんあるようですが、いずれも年会費数千円です。

もちろん「入会すると寄付とか購入の強要が待っている」などという話でもあれば別です。片端から全コース履修したあげくに親もセミナーに何度も行って、あらゆる教材を買って……となったら100万単位のお金を失うかもしれませんが、仮定が極端な気もします。そうでもないのかな。みんなそうなっていくなら怖いですけどね。しかし、いまのところそういう情報は見つけていません。さすがにしてないんじゃないかなと思います。

【ハマるとどうなる?】
匿名掲示板などでは、保護者同士が張り合って他の保護者が購入した教材を競って買い込んでいるとか、狂信的になった保護者から教材を勧められて辟易したというような「二次災害」の話は見かけます(コレが本当なら購入強要なんか不要ですね)。また、通っているお子さんが奇矯な振る舞いをするといった類いの話も。

もしも、「入塾するとみんなハマる」みたいなことがあるのなら、ああいう掲示板ではネタにされていると思うのですが、見当たらないようです。まあソースがソースなので、どの話も真偽がなんともいえないですし、事実だったとしても別に七田式だからではないのかもしれない。

【そもそも早期教育の意義ってどうなの】
そもそも、早期教育の効果が疑わしいとか、いやむしろ有害な場合もある、情緒障害とか起こしかねないという話もないわけではありません。
しかし、害がちゃんと確認されているわけではないようです。

前掲ブログの〈第九章 日本を蝕む「早期教育」信仰と「独善的功利主義」〉の終わりの方〈「早期教育」の、恐るべき弊害〉で紹介されている東京大学医学部附属病院小児科・榊原洋一医長の話は大変に興味深いし、危険を認識するには十分な話だとは思いますが(ページ内で「榊原」で検索すると見つけやすいかと。長いから)。

で、そういう「害」が早期教育一般にあり得るのだとするとやっぱり「被害(?)」はあるんでしょうね。七田式も例外ではないでしょう。けど、七田式だからかどうかは不明ですよね。

【ごく一部を除けば「七田式だからどうこう」はないのでは】
というわけで、波動グッズとかESPがどうのこうのを除けば、早期教育や怪しげな教育商売ならどこにでも当てはまりそうな話ばっかし。独特な勉強法を示しながら「言う通りにすれば、有名校に絶対合格できます」みたいな受験指導と五十歩百歩のもんじゃないでしょうか。七田式って「どうのこうの」のとこぐらいしか独自性がないのでは、とさえ思います。自閉症云々だってほかにも言ってる人は言ってそうな気がしますね。

逆に言うと、ほかにも似たようなことをやってる幼児教室なんかは(右脳開発というかどうかは別として)たくさんあるはずです。それなのに七田式に行っちゃうってことは……「波動グッズとかESPがどうのこうの」に惹かれたんでなければ、やっぱり家が近いとか有名っぽいとかが理由であって、激しくのめり込む人は、どこででも同じことになるのかもしれない。のめり込みやすくなるキッカケを提供してるかどうか、ってのもあるかもしれないけど、そこって重視していいものかどうか……。

いや、だからといって無茶苦茶な理屈で人をケムに巻いてよいって話にはならならないんですけどね。
posted by 亀@渋研X at 19:07 | Comment(1) | TrackBack(0) | 学校とか教育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 教育産業・幼児早期教育で受け得る「被害」ってなんだ
この記事へのコメント
この記事で紹介したブログ、電子書籍になるとともに閉鎖されたようです。

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原田和広『「早期教育」という誤謬』
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ブログはなくなりましたが、片鱗がSFC三田会メルマガのバックナンバーとして残っています。書籍化されたもののごく一部の初期形態といったところだと思いますが。

集中連載:『くたばれ!狂育者!!』−原田和広−
https://www.sfc.ne.jp/emailnews/hrd01.do
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Posted by 亀@渋研X at 2007年08月07日 00:39
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