2007年03月02日

【求む情報】自尊感情や自己肯定感の効用に関する実証的研究

本日は「教えてくん」で恐縮です。

子どもの問題行動と「自尊感情」や「自己肯定感」の関係について、どなたか実証データや実証的研究の例をご存知ですか? また、そうした研究を根拠として挙げている説明を見たことがありますか?

Webで検索できる範囲では、日本の児童心理や教育心理の世界では「自尊感情を適正な値に高める必要がある」のは「自明の前提」となっているようです。問題行動を起こす子どもや今の日本の子ども全般が「自尊感情が低い」とする調査結果も見つかります。自尊感情をポイント化して評価する「SE値」に関する説明なども見つけることは難しくはありませんでした。
しかし、肝心の「自尊感情を高めることは問題行動の改善に役立つ」ことの裏付けになりそうな説明や実証的データ、その有効性の範囲などに言及されたものは見つけられませんでした。
論文データベースもいくつか「自尊感情」「自己肯定感」などで当たってみたのですが、空振りでした、探し方が悪かった可能性はありますけど。

近所の大学の心理学の先生を訪ねてみようかとも思ったのですが、知り合いがいるわけではないので、そこまでやる前にここで聞いてみようと思いついた次第です。どなたか、根拠となる研究や参考になりそうな情報をご存知でしたら、教えてください。

いじめや自傷行為などの背景として「自尊感情」や「自己肯定感」が極端に低いことがあるという説明をよく見聞きします。また、自尊感情の低さはいまの日本の子どもの全体的な傾向であり、それが協調性の低さなどの問題行動の原因となっているのだという指摘も目にします。
なるほどそういうものかもしれないと、「したがって、自尊感情(や自己肯定感)を適正な値に高める必要がある」というような話にも素人ながら腑に落ちた気でおりました。

自尊感情を高めるための授業案も多数あるようです。
以下はNHKの番組で紹介されている例です。
http://www.nhk.or.jp/kokugo12/sen/15.html

「自尊感情」や「自己肯定感」を高めることが子どもの問題行動の抑止や改善に広く有効だとする考え方が、現在の日本の心理学会(あるいは心理学者たちの間)や教育界には浸透しているのでしょうか。
それとも、それはもっと限定的に捉えられているのでしょうか。

また、アメリカでは自尊感情を人工的に高めることに批判的な論やそれを支える調査結果も出て来ているようです。
そうしたことはどのように受け止められているのでしょうか。

この話、お気づきの方はお気づきのように、kikulogの下記辺りのコメントのやり取りがきっかけです。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/%7Ekikuchi/weblog/index.php?UID=1164299987#CID1171318455
延々とコメントが続くので、全体を読もうとされる方は、それなりに覚悟を決める必要がありますが、私も前後にたまに出てきます。

リンク先のコメントでは、自尊感情はアメリカ発のself-esteemが輸入されたものだが、「最近アメリカではこの“self-esteem 論”に対する批判が高まっています。」「ある研究では『いじめっ子』には『self-esteem の高い子』が多いということがわかったそうです。」という指摘とともに、2005年の『Scientific American』誌の記事が紹介されています。
http://www.sciam.com/article.cfm?articleID=000CB565-F330-11BE-AD0683414B7F0000
英語なのできちんと読めてはいないのですが、ここでは、むしろ自尊感情の高さが問題行動を引き起こす可能性が示唆されています(それぐらいはWeb翻訳でもおぼろげにわかった)。

#2007/4/7追記:翻訳を発見。詳細は「『日経サイエンス』に自己肯定感、自尊感情などについての記事」(2007/4/7)に。

あわてて付け加えますと、上記の記事などを根拠に「self-esteem論はすでに否定されているのではないか」とお尋ねしたいわけではありません。だって調べた限りでは、少なくとも日本ではそんなようすは見えないんですもの。上記の記事をどう捉えるかは聞いてみたい気もしますが、そもそも「実証的な根拠のある話なのだろうか」という疑問を解決できないでいるのです。
ただ、どうも「自尊感情(や自己肯定感)の向上がなんでも解決する」みたいな風潮になっているような気がしているのも事実です。

たとえば、こんな記事を読むとそう思ってしまいます。

東京都交通局:乗りごこち心理学 7
http://www.kotsu.metro.tokyo.jp/newsevent/magazine/gurutto/200403/p20.html

コメント欄で指摘されているような「謝ることができる人は、それで自分の価値が下がるとは思わないからか?」という疑問ではなく、あまりにも広い範囲に適用されている理論のような気がするのです(いや、そういう広い摘要ができる理論なのかもしれませんけどね)。
マスコミが誤謬をまき散らすことがあるのも事実です。肩書きが内容を保障しない場合があることも知っています(ざっと調べた限り、この執筆者はちゃんとした専門家のようですけど)。
これが拡大解釈なのだとすれば、拡大解釈が批判された途端に、正しい解釈まで一緒に批判にさらされるようなことが起き得る危険もあるかと思います。

もちろん、もしもすでに否定されている説に基づいての指導があるなら困りものだという気持ちもないわけではありませんが、それはほんの少しです(むしろ最先端の知見にはそういう毀誉褒貶というか紆余曲折はつきものなので、あわてて飛びつかない方がいいかもという気持ちがあります。self-esteem論を否定するにしろ肯定するにしろ)。

なにしろ手がかりを失ったような状態なので、誰かなにかご存知でしたら教えてください。


posted by 亀@渋研X at 13:48 | Comment(11) | TrackBack(0) | self-esteem | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 【求む情報】自尊感情や自己肯定感の効用に関する実証的研究
この記事へのコメント
初めまして。
kikulogの該当のエントリーをROMっていて何かお役に立てればと思い、こちらに書き込ませていただきます。

「他人を見下す若者たち (講談社現代新書)速水 敏彦 (著)」 は参考にならないでしょうか。
断定を避けた表現が多く、検証データも少ないと著者自身が書いていてかなり頼りない印象を受けましたが、それが逆に日本での研究、考察の遅れを表しているのではないかとも思います。

私自身は、最近世代・職業上の立場を問わずに他人を見下す態度の人が目に付くのが気になったのが、この本を読んだ動機です。
自分の中にも潜む、つい見ず知らずの人を深く考えずに「バカなやつ」と思う心理についての推察として、私には納得できる内容でした。

まとまりのないコメントになりましたがこれで失礼します。
Posted by mojikun at 2007年03月20日 00:01
さっき上のコメントをしたものですが、忘れてください。きちんとエントリを読んでませんでした。
あの本では亀@渋研Xさんのご要望は全く満たせません。

同じ単語が入ってたから…とか自分のすっきりしないものにうまい説明がされてたからと押し付けたんでは、それこそ「ニセ科学」にはまる人と同じですね。
大変失礼しました。猛反省。
Posted by mojikun at 2007年03月20日 00:39
こんなところにまで出しゃばってきてすみません。 kikulog にてコメントさせていただいた kurita です。 あの後、私もさらにいろいろと(シロートなりに)調べてみたのですが、この件の日本での扱われ方についてはやはり疑問と不安は深まるばかりです。 

ちょうど kikulog で議論があったころに出版された雑誌のようですが、つい先日みつけた記事です。 このエントリの趣向と直接は関係ないかもしれませんが、アメリカで「自尊感情」が最近どう評価されているかの雰囲気を伝えていると思います。(すみません、コトの性質上どうしても英語になってしまいます)
http://nymag.com/news/features/27840/index2.html
記事中に書かれている "Self-Esteem Movement" に対する批判に答える形で始められた過去の研究結果に関する調査ですが、30年間に発表された一万5千件以上の事例の中から、科学的な評価に耐えられると認められたものはわずかに200件、しかもその200件から導きだされる結果は "high self-esteem didn’t improve grades or career achievement" さらに、アル中も減らさなければ、暴力も減らさない、というものです。 しかも、この調査を率いた人はもともと Self-Esteem Movement の主要な論客だったそうなのですが、この結果には "the biggest disappointment of my career" と言わざるを得ず、結果を受け止めて「転向」してしまったようです。
もちろん、この結果はアメリカのものであって、科学的に認められる実証的研究がちゃんと日本にあるのならば「対岸の火事」にすぎないわけですが...
Posted by kurita at 2007年04月06日 15:44
mojikunさん、kuritaさん、コメントありがとうございます。
特にmojikunさん、反応が遅くなってすいません。
私も近所の大学の前を通るたびに、気になっていました。そこにはカウンセリングルームや心理学の研究室があって、なんらかの知識がある人がいることは調べて知っていたので。でも、まだアクションを起こしてはいません。こういうときに、いきなり聞きに行ってもいいような気はしないんですよね。取材のようなふりをするのもイヤだし。

さて、kuritaさんが教えてくれた記事、拝見しました。機械翻訳ではワケのわからんところが多く、ちゃんと読めたとはとても言えないのですが(汗)。
ここに出てくる「転向した科学者」はバウマイスター Baumeisterですね。この名前はこの間に何度かで食わしていたように思ったので、それを確かめようと検索したら、日本語で読める彼の文章があることを見つけました。
「前向き思考で成功できるか」(『日経サイエンス』2005年4月号)という9ページの記事です。
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0504/maemuki.html?PHPSESSID=22f3f7f99cc2809ad4219ad7d267e9eb
いま、ダウンロード購入したばかりですが、やはり同様の主張がなされています。
これをネタに、のおちほど別のエントリを起こしてみたいと思います。
Posted by 亀@渋研X at 2007年04月06日 18:44
バックナンバーにも関連記事がありました。
「自己愛に潜む暴力」(2001年7月号)
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/page/magazine/0107/violent.html

これも買ってみましたが、新しい知見があるかどうかは怪しいかも(^^;;
ただ、この紹介ページの冒頭の記述は、私たちの感覚と同じなのではないかと思います。
----以下引用-----
 数年前,ある青年相手のカウンセラーからこんな話を聞いた。すぐに暴力をふるってしまう相談相手の若者と接していると,以前に学んだこととは違う印象を受けるというのだ。「暴力に走る若者は自己評価の低さ(劣等感)に苦しんでいる」と教科書には書いてあるのだが,実際の若者たちは過大な優越感と特権意識を持っているように見えた。
 攻撃性が自己評価の低さに根ざしている,という見方は長い間一般的な知識として浸透してきた。しかし,この理論を裏付ける実証的証拠は言うに及ばず,その理論を公式見解として示した本や論文は見つからなかった。誰もが知っているものの,証明した人は誰もいないのだ。
------引用終了-------
しっかし、この記事、2001年なのかあ……。
Posted by 亀@渋研X at 2007年04月06日 18:54
その『日経サイエンス』の記事は最初に紹介した『Scientific American』誌の翻訳ではないでしょうか... (^^;
Posted by kurita at 2007年04月07日 03:00
kuritaさん、ご明察。
昨夜、プリントアウトして読み終えてから気づきました(^^;;
Posted by 亀@渋研X at 2007年04月07日 11:36
というわけで、書きました。

『日経サイエンス』に自己肯定感、自尊感情などについての記事
http://shibuken.seesaa.net/article/38038386.html
Posted by 亀@渋研X at 2007年04月07日 14:56
なんか知らんけど、この記事に昨夜からコメントスパムが集中してます。海外からのものなんですけど「半角英数のみはダメよ」フィルターが効かないのかな。ここに表示はされてないんだけど、メニューバーの「最近のコメント」には表示されてる。
そのうち表示されるのかな。

なぞ。

ま、いずれにしろ消しますけどね。
とか言ってたらコメントスパムが大挙してやってきたので、この記事は一時的にコメント承認制に切り替え。

なにが彼らの琴線に触れたのかしら? そしてまた、どうやって「半角英数のみはダメよ」フィルターをかいくぐっているのかしら?(とくに仕掛けも見当たらないんだよね)
Posted by 亀@渋研X at 2007年10月18日 20:49
「なんでこのエントリだけ、毎日のように複数の欧文のコメントスパムが来て、しかも減らないんだろう?」と思っていたら、 Google中国の検索結果から来ているアクセスを発見。
http://www.google.cn/search?sourceid=navclient&hl=zh-CN&ie=UTF-8&rlz=1T4AMSA_zh-CNJP246&q=%E8%87%AA%E5%B0%8A%E6%84%9F%E6%83%85%E3%81%A8%E8%87%AA%E5%B7%B1%E8%82%AF%E5%AE%9A%E6%84%9F%E3%81%AE%E5%8A%B9%E7%94%A8
これと関係あるのかなあ?
Posted by 亀@渋研X at 2007年11月08日 15:39
相変わらずこのこの記事だけスパムコメントが続々来ます。
原因がわからないけど、仕方ないのでこの記事はコメントを受付けない設定にします。
お手数ですが、コメントをくださる場合は、下記の関連記事のコメント欄へお願い致します。

自尊感情関係(2007年03月11日)
http://shibuken.seesaa.net/article/35689064.html

『日経サイエンス』に自己肯定感、自尊感情などについての記事(2007年04月07日)
http://shibuken.seesaa.net/article/38038386.html
Posted by 亀@渋研X at 2007年11月20日 14:24

この記事へのトラックバック
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。