2007年04月08日

修正しました

まず、先のエントリ「『日経サイエンス』に自己肯定感、自尊感情などについての記事」では、ぼくはかなりヒドイ勘違いをしているので、その訂正から。

先のエントリでは、バウマイスターの名前を片端からブラウマイスターと誤記していました。すいません(恥
さらに、日本の心理学者たちはバウマイスターらの研究を参照していな可能性は低いだろうと書いたのだけど、全然そんなことは言えなかった。バウマイスターらが15000件の論文を精査したというのは「2003年に全米心理学会の依頼で」と『New York Magazine』の記事「How Not to Talk to Your Kids」に書かれていた。
記憶頼りの話で恐縮なのだけど、ぼくがWebで見つけられた範囲では、2003年以降のバウマイスターらの論文が言及されていた例はなかったか、あっても極端に少なかった。だからって読んでいないだろうとは言えないけれども、全然安心できる材料にはならないのも確か。
というわけで、先のエントリは修正しました。

んで、新カテゴリーとして「self-esteem」を設けました。
この件は、さらにしばらく追跡してみる予定。
posted by 亀@渋研X at 01:17 | Comment(4) | TrackBack(0) | self-esteem | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 修正しました
この記事へのコメント
蛇足かもしれませんが、2003年のその研究は、それまでに集まってきた「self-esteem movement」に対するあちこちからの批判に答える形で始まったものですから、self-esteem に対する考え方が2003年を境に急転したわけではありません。 結果としてそれまでにあった批判が的外れではなかったことを裏付けてしまったわけですが。 先日紹介された 2001年の「自己愛に潜む暴力」でも既に「実証的証拠は(中略)見つからなかった」などと明言されている通りです。
出版物や Web ページの数だけで何かを判断するのは慎重でなければならないとは思いますが、あえて言ってしまえば、ここ十年ぐらいの間に書かれた self-esteem に疑問を呈する英語の文書はいっぱい見つかるのに、それに対応するような日本語で書かれたものを私には見つけることができません。 もちろん、それで何かを証明したことにはなりませんけど、きっとアメリカやイギリスが運動の先端にあって、問題がより顕在化しているということなのではないでしょうか。 その後を日本は盲目的に追従していくつもりなのか、というのが kikulog でコメントした私の最初の動機でした。 本当に、日本の研究者や実践者からの意見を聞いてみたいです。
Posted by kurita at 2007年04月08日 04:42
たびたびすみません。
確かに、"Baumeister" を含む日本語のページを Google で探してみると、見事に前世紀のもの、つまり彼の「転向前」の論文の引用しか出てきませんね。 これはやはりとってもイタイかも、です。
Posted by kurita at 2007年04月08日 14:29
kuritaさん、どうもどうも。
少なくとも、そもそもの「自尊心の向上が社会的成功だの問題行動の改善につながる」という主張について根拠となった研究などはここ30年ほどには見当たらず、その後も欧米では実証的な研究が乏しかったことは確かなようですから、上記は「神話」であって日本でも状況は多分同じだろう(特に違うと考える理由が見当たらない)ということですね。
よくわからないのが、例えば下記のような論文のようなケースから、何を読み取れるのかってことですよね。

「自己意識における自尊感情の高低と安定性の特徴について」
○水間 玲子(奈良女子大学 文学部)・小塩 真司(中部大学 人文学部)
http://db1.wdc-jp.com/cgi-bin/jssp/wbpnew/master/download.php?submission_id=2003-D-0021&type=1

水間さんは奈良女子の助手か福島大学のなんか、小塩さんは2003年から中部大学の助教授。いずれにしても、この論文が書かれたのは2003年のようです。

冒頭に、こう述べられています。
>自尊感情に関する問題の多くは,その高低との関係において,適応や精神的健康を議論するものであった。その多くは,自尊感情の高い者のもつ肯定的特徴を実証してきた。だが,自尊感情を高低のみでとらえた結果から個人のあり方を議論するには限界があることも多く指摘されている(cf. Baumeister, 1993)。

kuritaさんも指摘されているように、バウマイスターの「転向」が2003年に起きたのではなさそうですよね。じゃ、いつ起きたのか、というか「自尊心の高低『だけ』ではなにもわからん」みたいな指摘がいつごろからなされていたのか(ここで言及されているのは1993年の論文集 "Self-esteem: The puzzle of low self-regard." New York: Plenum Pressですから90年代前半にはこうした問題意識があったわけですよね。下記に一部ですが、内容紹介があります。
「SCP Vol.16 1998/5/30 rep. 菅野 美穂 (昭和女子大学 生活機構研究科) 」
http://garde.esprix.net/scp/vol/vol016.html)。

バウマイスターやほかの人の同じような指摘はすでに日本でも「自尊心神話」の再検討になにほどかは寄与しているだろうと思うのだけど、その影響をどの程度に見積もったらいいのか。たまたまここに出て来ただけで、多くの研究者は視野に入ってないなんてこともありうるのか。そうは考えにくいんじゃないかと思うのだけど、なんともわからないですもんね。

いずれにしても、
1)「自尊心神話」が広く存在していたことは間違いなさそうなので、今広がっている話の中にも【神話のみ】に基づく言説がたくさんありそう
2)Webではこれ以上調べるのは限界のような気がするので、やっぱり専門家にお話を聞いてみたい
ってことではあります。
Posted by 亀@渋研X at 2007年04月08日 15:50
その1998年の論文は、「自尊感情が低い人々を理解する」ことについてですよね。 「神話」との整合性をとろうとする最後のあがきだったのでは、なんて言ってみたい気もしますが、もちろん私にそんなことを言う資格はない個人的な印象です。
しかし、現在主に問題になっているのは「self-esteem を人為的に高めようとすることは有害なのではないか」ということで、まだ当時はそこまで突っ込んだ問題意識はなかったと思われます。
この論文のタイムラグを考えると、2003 年の Baumeister の論文が日本に紹介されるのは来年あたりでしょうか。(^^)

> やっぱり専門家にお話を聞いてみたい
はい、まったくその通りです。
Posted by kurita at 2007年04月09日 03:12
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