2007年04月20日

【種】『七時間目』シリーズが問いかけるもの

一部で話題の藤野恵美『七時間目のUFO研究』の素敵な書評を発見。
児童書読書日記」さんの■[児童書・国内]「七時間目のUFO研究」(藤野恵美)(2007-04-17)。
評者yamada5さんの作品評価とは論点がずれてしまいますが、後半は疑似科学・オカルト・ニセ科学などに依存してしまう心理の一面と、それが何を意味するかを端的に言い表していると思います。

「七時間目」でブログ内を検索するとシリーズのほかの巻についても読むことができます。このシリーズ、健全な懐疑主義を養うためにすべての学校の常備図書にしてほしいと思ってしまいました。
同ブログでは、カテゴリ評論・研究書を中心に他のエントリもあれこれと読んでみましたが、yamada5さんの書評は、抑制の利いた筆致でとても安心して読めます。
児童書主体なので、言及されている本で読んだことがあるものはほぼなかったのですが、おそらく的確な紹介になっているに違いないと思わされました(「12歳からの読書案内」と「12歳からの読書案内 海外作品」、買っちゃおうかなあ。いや、図書館にリクエストするのがいいかな)。

yamada5さんは、『七時間目のUFO研究』について、藤野恵美が疑似科学の問題を通して問いかけていたものは「自立」であったとして、こう続けています。
 わからないことをわからないと認め、それを自分で引き受けることが自立であるとするなら、それを実現することは並みの人間にできることではありません 。人間がわからないがゆえにもっともおそれるものは死です。懐疑主義に目覚めてしまったあきらは、死がもたらすものがまったくの無であることに思い至ってしまい、大変な恐怖を味わうことになります。天国の存在を信じたふりをしてとりあえず死の恐怖をやり過ごす道もあるのに、小学生にここまでの試練を与える厳しさが藤野恵美の美点です。

 また、アダムスキー江尻とその信者に「われわれは孤独ではない」と唱えさせることによって、自立した人間が得るものは孤独であることも明らかにしてしまいます。彼女は自立に至るハードルがはてしなく高く困難であることを絶望的なまでに暴き立ててしまいました。しかし、彼女の真摯な語りかけには、どんなにそのハードルが高かろうが、それは目指さなくてはならないハードルなのだと思わせてくれる説得力があります。
「実現すること」が困難であっても「目指さなくてはならないハードル」というのはすばらしいまとめ方だと思います。恥ずかしながら、自分の以前のエントリと通じるものも感じます。

自立することで得てしまう恐怖や孤独感が、疑似科学やオカルトに依存してしまう心理のすべてではないでしょうけれども、いみじくもkikulogでAOMURASAKIさんが吐露している心情と相似をなしていますね。大人の方に手に取っていただくのは難しいかもしれませんが、自身の問題としてお読みいただけるのではないかとも思ったり。
posted by 亀@渋研X at 01:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | ニセ科学対策教材の種 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 【種】『七時間目』シリーズが問いかけるもの
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