これまで見る限り、「牛乳神話」的な言説は、メーカーや業界団体によるものばかりでした。では上記のサイト群が、業界の理解・浸透度、あるいは「神話」に対する態度を代表していると考えていいのでしょうか。
先の誤った説明や不適切な説明は、業界を代表するような企業・団体によるものではありませんでした。たとえば大手はどんな説明をしているのでしょう。
冒頭の完全栄養食品に関する説明は、明治乳業の〈牛乳は豊富な栄養素を含む「バランス食品」〉というページにあるものです。前後をもう少し紹介すると、
牛乳は古来より、鶏卵とともに「完全栄養食品」といわれています。
完全栄養食品とは何でしょう?それだけ食べれば生きていける食品、つまり人間に必要な栄養素が全て含まれている食品のことです。厳密にいえば「完全栄養食品」というものは存在しません。牛乳の場合は、ヒトに必要な栄養素のうちビタミンC、D、鉄分や食物繊維などが不足しています。
業界団体でも同様の説明を採用しています。
日本乳業協会:牛乳Q&A[pdf]
日本酪農乳業協会:牛乳の成分に関するQ&A:牛乳は完全栄養食品か?
最大手3社(明治、森永、雪印)の残り2社の説明はどうでしょう。
雪印乳業のチーズの説明(ここのQ5やここ)には、〈チーズはたんぱく質や脂肪、ビタミンなどをたくさん含んだ「完全栄養食品」ですが、ひとつだけ含まれていないビタミンがあります。〉とか〈チーズは「完全栄養食品」と言われるほど栄養価が高い食品〉といった際どい説明があります。
先に紹介した「日本酪農乳業協会」にしても、別のページでは完全食品だと言いきっていたりします(学乳スクエア:牛乳Q&A:Q13.学校給食と牛乳の関係について教えてください。)。
また、森永乳業のサイトには「牛乳は完全栄養食品かどうか」といった話題がありません。森永の社長が日本乳業協会の会長を務めていることを考えると微妙な話です。
先に紹介した日本乳業協会の「牛乳Q&A[pdf]」は、平成13年7月のもので、「正しい情報」を広めるための取り組みの第1弾として、全国牛乳普及協会が監修して作られたと書かれています。少なくとも6年近く前から取り組んでいるわけです。
つまり、一定の努力はしており、消費者にはそれなりに浸透しているのだが、まだ取り組みが十分ではないために、肝心のメーカー等の提供する文章に「神話」が残ってしまっている……ということは言えそうです。
評価が甘いかな(^^;;