2007年08月09日

江原啓之スペシャル 天国からの手紙

『江原啓之スペシャル 天国からの手紙〜亡き家族からのメッセージ〜2007夏』
http://www.fujitv.co.jp/tengokuehara/

8/7に放映されたこの番組、たまたまちらっと見たのですが、見ていられなくてすぐに消してしまいました。数名の幼稚園児が亡くなった事故かなにかを採り上げて、当事者や園児たちに「亡くなった子どもたちが、生前の親切をありがとうって言っている」みたいなことを言って泣かせていました。
無力感や絶望感にさいなまされている人の心の重しを取り除くためには有効な部分があるのだと思います。視聴者も、そこに共感しているのでしょう。

わたしのマイミクさんでも大泣きしちゃったという人や、それに共感する人がたくさんいて、彼らの日記を暗然と眺めていました。子どもをもつ親だったら、誰でも胸が締め付けられるようなネタの選び方、話の進め方だと思うだけに、口を挟めないのです。

そこでは、かつてだったら「もしも生きていたらお礼を言ってくれるはずですよ」とか「こう考えてみたらいいのでは」という考え方の提案だったはずの内容を、確認可能な事実であるかのように語ってしまう江原の手法は問題にされていません。

あれで救われてしまうことに危うさを感じます。事実と信じ込まされたうえで「救われた」と思ったのであれば、事実ではないとなったら「救われたと思った彼らの気持ち」はどうなるんでしょう。

また、あの内容を語るために「霊魂(あるいは霊界とかなんとか)が実在して、それと対話ができる人物がいる」という仕掛けが本当に必要なんでしょうか。
もしもそうなら、つまり「もしも生きていたらお礼を言ってくれるはずですよ」などと提案されても「本当にそうかどうか」がわからなければダメで、本当にそうだと断定してくれる人が必要ならば、これは宗教あるいは信教の問題です。
事実かどうかを確認する術はないのに、事実であると保証して欲しいという「ないものねだり」に答えてくれるのは、それしかないから。さもなければ詐欺とかペテンとかいう悪意を前提にしないといけないのですが、この際それは考えないことにします。

ということは、江原の行なうスピリチュアル・カウンセリングの実態は「教義をもたない宗教」ということになります。「死者との対話ができる」と主張しているということも加味するならば「前近代的な宗教」でもあります。
おそらく江原自身や江原支持者はこれはスピリチュアル・カウンセリングであって宗教ではないとかなんとかいうのでしょう。ある意味ではその通りで、現代においてなにかが宗教であるために必要なさまざまなものが、すごい勢いで抜けています。
これを平たく言うと「宗教もどき」でしかないってことになるんですが。

宗教不信と科学(あるいは合理主義)不信を両立してくれるのが「宗教もどき」であるスピリチュアリズムやオカルティズムなのだとすると……ううむ……
(後で続きを書くかも)
posted by 亀@渋研X at 18:16 | Comment(6) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 江原啓之スペシャル 天国からの手紙
この記事へのコメント
今晩は。

私も、その部分だけ、少し観ました。そして、ちょっとの間観て我慢出来なくなり、チャンネルを替えました。
ご遺族が感涙に咽ぶ姿を見て、もう、言葉に出来ない色々な思いが渦巻いて。そこの所には何も言えないんですよね。言いようが無い。

何と言うか、悩ましいです。

ただ、あの様な企画を考え、実際に番組として構成した関係者に対しては、怒りを覚えます。たとえ、遺族が望んだものなのだとしても、テレビを通して発信する様なものでは無いと、私は考えます。
Posted by TAKESAN at 2007年08月09日 20:16
とっちらかったメモ書きにコメント感謝です。
おっしゃる通り、あれをテレビで放映してしまうことの意味は重いですね。超能力捜査官とやらにも同じ危うさを感じます。それにしても、芸能人をいじってるならまだしも、遺族とか当事者の心の問題をどう考えてるんでしょうねえ。

ところで、お互いにあの部分だけ見たってことは、同じタイミングであのチャンネルに併せたってことですよね。じゃあ、直前まで同じ番組を見ていたのかしらん、などとどうでもいいことを思ったりしました(^^;)
Posted by 亀@渋研X at 2007年08月09日 20:50
なんと云うか「手軽に感動したいひと」マーケット、と云うのがあって。結構お金になるので、出版界とか映画界とかがそのセグメントにフォーカスして(世界の中心でなんか叫んだりして)商売をしているわけです。わりとテクニック主導で商売になるので、そこにターゲットを合わせたスピリチュアル芸人ってのも出現してくる、とまぁ身も蓋もなく云ってしまえばそう云う話なんでしょうね。結婚詐欺師とあんまり変わらない、と云うか。

不思議なのは、本業の(マーケティング中心で商売している訳ではない)スピリチュアリストからの反発が見られないところですが。それともそんなひといないのかな。
Posted by pooh at 2007年08月10日 00:41
 いまさらと言えばいまさらですが、これは、放送法的に完全にアウトですよね。一応、心霊が事実であるという前提でなければ成り立たない。

 江原氏が今ほどテレビ露出が多くなかった頃の話としては(最近の状況は分かりません)、新興宗教っぽい状態であったという話は結構あるようです。無償での奉仕とか絶対服従とかですね。
Posted by newKamer at 2007年08月10日 09:45
こんにちは。
BPOに通報しておいたのですが、一応「視聴者から寄せられた意見」として取り上げられました。(短い方です)
http://www.bpo.gr.jp/bpo/f-bpoiken.html

でも、この内容を認知した上で何の対策もとらなかったら、BPOは形だけってのを自ら表明するようなもんだとも思いました。
Posted by newKamer at 2007年09月26日 13:19
お知らせありがとうございます。
BPOは霊能番組に関する通報(苦情)を、毎月のように採り上げていますね。本年2月には「継続的に寄せられる意見では【バラエティー番組】に関して“不適切な表現・発言、不適格な出演者”との指摘が142件(そのうち、『いじめや差別につながる発言・表現、放送倫理上問題』などの指摘は145件)あり、占い師や霊能者の出演する番組についての批判も続いている。」とまで書いています。
そろそろ2004年の血液型番組のような「要望」でも出してほしいものですね。

ついでなので、放送基準の該当箇所をアップしておきましょう。
--------------
日本民間放送連盟 放送基準
第8章 表現上の配慮
http://www.mro.co.jp/mro-info/8hyogenjo.html
(53) 迷信は肯定的に取り扱わない。
〔次条解説参照〕
(54) 占い、運勢判断およびこれに類するものは、断定したり、無理に信じさせたりするような取り扱いはしない。
現代人の良識から見て非科学的な迷信や、これに類する人相、手相、骨相、印相、家相、墓相、風水、運命・運勢鑑定、霊感、霊能等を取り上げる場合は、これを肯定的に取り扱わない。ただし、伝説を取り上げるのはさしつかえないが、その場合、誤解のないように注意する。
Posted by 亀@渋研X at 2007年09月26日 16:26
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