2007年08月23日

グラフったら悩ましい

ええと、次回の渋研、じゃなくって「PSI九段下ニセ科学研究所」のお題は統計とかそういう話です。
入稿が、先日終わりました。って、終わってないよ。ええと、編集者渡しが終わりました。デザイナーさんから校正が上がってくるとかいうのはこれからです(いまどきの校正は印刷会社からではなく、デザイナーさんから来るのです)。
で、そんで記事中でネタのひとつに使おうとしたグラフで、意外に手間取っちまった話。

下記の2つのグラフは、ほぼ同じ事を表しているのだという話でもあります。

graph01.jpg

graph04.jpg

ネタのひとつっていうだけでしかないのだけど、交通事故に関する統計が必要かなってことになったのね。で、警察庁のグラフでこういうのがあったわけ。

graph01.jpg

これを「グラフ1」としましょう。
出典は「警察白書」の平成18年度版、第4章の「(2)交通事故の発生状況」にある「図4-4 交通事故発生件数・死者数・負傷者数の推移(昭和41〜平成17年)」です。

平成18年の数値がないですよね。で、探したら、そこも含めたデータがありました。

graph02.jpg

これは「グラフ2」としましょう。
ネタ元は警察庁交通局の「平成18年中の交通事故の発生状況」(http://www.npa.go.jp/toukei/koutuu41/20070228.pdf)の、ノンブルの1ページ(PDFの3ページ目)。数値自体はノンブルの2ページ(PDFの4ページ目)にある「交通事故発生状況の推移(昭和21年 平成18年)」にあります。

が、これじゃあ表現方法は「グラフ1」と同じですね。それはまずくないかと思ったので、別の表現を考えました。

graph03.jpg

これは「グラフ3」にしましょうね。
で、ぼくは暑さでボケてたんだか、作った当初はこのブサイクな「グラフ3」でいいと思ったんですよ。
が、ちょっとだけ時間が経って、あ、やっぱりあかんと思って作りなおした。それがこれ。

graph04.jpg

グラフ4」てことにしましょう。
いまんとこ、まあ、そこそこわかりやすくて、しかも間違った印象を与えないのはこのグラフかなあと思ってます。

実は、ボクは最初「グラフ1」は「ダメなグラフ」の例として「も」使えるかも、と思ったんです。しかし、そこは関係者の関心を引かずにそのまま「グラフ2」で行っちゃいそうになった。そこでダメじゃなさそうなグラフに作り替えることを模索したんです(細かい経緯は違うけど、まあそんな感じ)。その結果が「グラフ3」「」なわけですわ。

グラフ1」「」のどこがマズイか。
これ、X軸が左右で違っていて、死者数だけ左のX軸なんですね。増減の具合だけ見てる分には別にわかりにくいグラフじゃない。あるいは、個々の数値を見ている分には問題ない。ですが、「交通事故発生件数」や「負傷者数」と「死者数」の多寡の関係については、ぼけーっと見てると誤解しそう。そういうグラフですよね。
「死者数」は1万前後をうろうろしているのに、交通事故発生件数」や「負傷者数」は100万前後をうろうろしている。つまりケタが2つ違うんだけど、そこは目に入りにくい。まあ、そんだけケタが違うものをひとつのグラフに入れ込んでいるから起きる問題なわけですね。よくある表現なので「無理矢理に入れ込んだ」とまでは言えないかなあ、と思いますけど。

じゃあっていうんで、単純にX軸を左に一本化してそろえたのが「グラフ3」で、「死者数」が地を這っているのを見て「うーん、死者数の増減がわからんなあ、ほかの数値も激しく上下しているみたいに見えるなあ」と思ったものの、「まあこれが実態だし」なんて考えて、〆切も迫っていたし、一旦はこれでいいやとしたわけです。

が、本文中に死者数の増減の話が出ていたことを思い出し、やっぱりこれでは誤った印象を与えるという点で「グラフ1、2」と同じだと思い、ほかにも連絡が必要なことがあったので、さらに作りなおしたのが「グラフ4」です。まあ、デザイナーさんいわかってもらえうるようにする見本として2つのグラフを合成しただけなんですけどね(数値は別途渡してあります)。
この「グラフ4」だったら、それぞれの数値の増減の加減も分かり、波線があることで「途中をすっ飛ばしてるよ、ケタ違いなんだよ」ということも明示されるっていうわけです。目盛りの細かさが違うのは、わかりやすさには貢献しつつ印象を大きくは左右しないであろうという判断です。

あとはデザイナーさんが、これをどう料理してくれるかってこともあるわけですけど、まあ、大筋の印象は変わらないに違いない。

グラフなんかを作っていると、こういう「波線」での表現なんかは「野暮ったい」みたいに思うこともあります。「もっとスマートな表現はないかなあ」というわけです。
そういう意味では「グラフ1」「」はスマートなんだと思います。線やポイントなどのデザイン処理とかいうことは別にしてですけどね。もう2つのグラフに分けた方がいいか、それしかないかと思ったときもありました。どうせね、「グラフ3」「」なんて、グラフ2つ分のスペースを食うし。
でも、やっぱり関連が深い数値なのでひとつのグラフにまとめたかった。「グラフ1」「」を作った人の意図もそこだっただろうと思います。別に印象操作をしようなんて思ってないに違いない。

今回の記事だって、こうしたグラフで与えられる印象が、本文中の主張と関連するかというとそういうわけではないんです。積極的なミスリーディングになるというような危険はほとんどないと思う。でも、漠然とした印象であっても「交通事故や負傷者の数と死者の数って、どういう案配だっけ」と思ったときに、万一にも「交通事故の数よりも死者が多かった=一つの事故で複数の人が死ぬから」なんていうおっちょこちょいを減らしたいなあなんて思うのであります。

教訓(ちょっと無理矢理だけど):
積極的に印象操作をしようと思わなくても、ボクらメディア側の人間はうっかりすると「思わぬ印象操作」をしちゃってることがあるかもしれない。
グラフを見るときに、意図しない印象操作されちゃってるかもしれない。
これからも気ぃつけよっと。


posted by 亀@渋研X at 05:42 | Comment(0) | TrackBack(0) | MONOQLO | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - グラフったら悩ましい
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