2007年09月05日

仕事とニセ科学

捏造や虚偽記載、ゴマカシなどといったウソ。勘違いや思い込み、デマ、因習などに基づく間違い。そんなものが、自分の職場やそのすぐとなりでまかり通っているみたいだ。
そう気づいたら、落ち着かなくなりますよね。どうしよう、素通りしちゃってもいいのかなあ、でも自分になにかできるのだろうか……などなど。
当然だと思います。

この話は「自分の仕事とニセ科学が関係があるようだ」と気づいたとき、なにを考えるか、という話だ。
ぼくは編集屋でライターだ。間違った情報は誰かの人生を狂わせるかもしれないことを知っている。そして、出版の仕事にはたくさんの工程があってたくさんの人が関わる。どっかが変なことをしていると、それが思わぬところで自分に降りかかってくる。ほかの人に迷惑をかける。
だから、思い切り身につまされる話題でもある。

実はこの問題、以前の「私にとってのニセ科学問題」のときにはすっかり頭から抜けていたのだが(ぉぃ)、ぼくがこのテーマを捨てない(積極的に追求・展開しているとは言えなくても)理由のひとつだったりします。わはは。

■メディアは人を殺してしまうことがある

音楽事典の編集に携わっていたときに、二代目か三代目の編集長が言った。
「医学事典だったら数字一つの誤植で人死にが出ることがある」
そうなんだよ。メディアや情報は人を殺してしまうことさえあり得るんだよ。
健康に関わる内容だったら直接に。そうでなくても間接的に事故を誘発したり、なんかのときに手遅れになるような事態を招いたり。極端なことを言えば、誰かを応援するつもりの一文が、誰かを戦場に赴かせたりすることだってあるのかもしれない。

いろんな話が広がって行くにはメディアの力が大きく関わっていることがある。ぼくはメディアの片隅で禄を食んでいる。そうすると、メディアの不始末については、他人事と言えない思いもある。
商業メディア経由で誤った情報やバランスを欠いた情報に接すると、「なぜこういう内容の記事(番組)が市場に出てしまうのか」を、ついつい考えてしまう。自分のいる業界が抱えている問題は、どう考えても自分の問題でもあるのだ。

どうすればぼくのような一介の歯車(編集屋やライター)が、有効なフィルターとしてちょっとは機能できるか。少なくとも積極的に害悪を広める側に回らないで済むか。
世間がこれを認めちゃうと、自分が本当にその問題に直面して矢面に立たされるようになったときに、どうなる? 誰も一緒には闘ってくれないよ? そのときになって一人で闘おうったって、無理じゃない?

ニセ科学について考えることは、そういう側面もあるのだ。

■「だけどさあ」という架空問答

だって、問題を起こしたのはヨソの会社だし
そう? あなたの会社やあなたの上司はだいじょうぶ? あなたはだいじょうぶ? ぼくは自分をそこまで信じられません。

専門的な知識がなければ誤りを見抜けないような、複雑かつ微妙な内容だったんだから
それで済ませてしまってはプロの名が泣かない?
世界にはそんな話は腐るほどあって「専門的な問題の取り扱い方」についてのルールだってノウハウだって仕組みだって確立され、共有されていたはずじゃない?(基本的にはサボらないで「調べる」「専門家の意見を聞く」「そのうえで適切な扱い方を考える」ってことでしかないんだけどね)。

これぐらいのことは、誰でもやってるよぉ
いや、もっと重要な問題があってさ。経営が成立しなくなったら、そもそも仕事がなくなるんだよ? オマンマの食い上げよ?
うるさいことを言ってると、仕事がもらえなくなるよ?
あなたがお客さん(読者・視聴者)のときも、その理屈で許せるんだったら寛大といえばいいのかもしれない。
だけど品質管理とそれ以外の問題は、ちゃんと両立させるのが筋だよね?
もっと大事なテーマだって、そりゃあるでしょう。メシも食わねばならないし、仕事の目標もあるし。そこは手を抜けないよね。「業界の正常化」みたいな話は、きっと業界団体とか監督官庁の仕事だよね(あるいは警察?)。でも、彼らがあなたの職場まで来てくれるときって、手遅れなときだったりしないかな? それまで、ただやきもきして過ごす?

どれほど神経を配っても、いつかどこかでどうしようもなく間違いは起きる。こりゃあ確率の問題としてはどうしようもない。けれども、ルールやノウハウが共有・継承されず、仕組みが機能していない結果なのだったら? その機能しない仕組みのまっただなかにいるのが、ぼくやあなたなんじゃない?

だからぼくは、科学的知識「だけ」に頼らないアンテナを磨きたい。そしてアンテナもアンテナの磨き方も共有したい。

■余計な心配と余談

ちょっとだけ余計な心配もしちゃおう。
最近ではミートホープ社や不二家のケースがわかりやすいけど、メディアやメーカーじゃなくたって、ニセ科学じゃなくったって、なんらかのお仕事をしていてお客さんや市場、取引先が存在する人は、似たり寄ったりなんじゃないだろうか。
「あなたの業界、ウソやゴマカシ、間違いとは関係ないですか?」
そんな業界、ないですよね。

教員の場合はメディア関係者と似ているかもしれませんね。
もひとつ、子どもをもつ親の場合も似てるよね。
じゃあ研究者は? 学者は?

以下余談。
これってDTPネタに携わっていた動機のひとつでもある。DTPネタ=パソコンで印刷用のデータを扱うことに関する記事は、まさに自分の仕事に関わる話なのだ。思い込みや知識不足、コミュニケーション不足で変なデータを作ると、後工程が困って、その結果、時間がなくなって品質をおかしくしていく。それは結局、読者の不利益になって、回り回って出版社の不利益になる。だから技術者じゃない人にも使ってもらえるような、基礎的な理解に役立つような本を何冊か作ってきたつもり。

でも、実のところ業界人の多くは「印刷会社の人が知ってればいい知識なんじゃないの?」という反応。
ちゃうねん。デザイナーって、印刷所に渡すデータを直接いじるでしょ? 営業マンや編集者の手元をデータが通って行くでしょ? イラストレーターやライター、カメラマンも、編集者やデザイナーに自分の作ったデータを渡すでしょ? 校正がPDFで来たりすることもあるでしょ? 業界のみんなに関係あることなんだよ?
「いや、それが仕事なわけじゃなくって、ぼくは『いい写真/いい文章/いいデザイン/いい絵/いい企画』を作るのが仕事で」という人も多いのだけど、道具(原稿用紙や画材、カメラ、フィルム、印画紙、指定紙、定規、赤ペンなどなどなど)の基本的な扱い方がわからんヤツはプロじゃないと、あなたも思うでしょ?

困ったDTPデータもニセ科学も、実は仕事にまつわるウソやゴマカシや間違いの仲間だったりするのだ。

ただ、DTPネタに関してはなんか繰り返しが多くなって、もう萎えていますけどね(汗
posted by 亀@渋研X at 22:46 | Comment(0) | TrackBack(0) | そもそも | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 仕事とニセ科学
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