
その後、学校で情報教育に携わっている先生方とお目にかかったときも「『ゲームであれなんであれ、勉強以外のことにハマっている子どもは勉強の成果が上がりにくい傾向がある』という当たり前の話以外のなにが見えるっつうんでしょうね」などと愚痴ってしまった。反応はなかったけど(^^;;
が、なんだかもうちょっと微妙な話をさっき見つけたのでメモっておく。
「全国学力・学習状況調査」の結果から見るテレビゲームとインターネットの付き合い方(ITmedia「オルタナティブ・ブログ」:『ビジネス2.0』の視点 2007年10月27日)
テレビゲームやインターネットの利用も「1時間未満」の一番正答率が高く、「全くしない」と「1時間以上2時間未満」が続いています。それ以上は時間がたつにつれて正答率が下がっていっています。え? えええ?
「全くしない」よりは、少しは利用したほうが正答率が高いということから、子どもたちがテレビゲームやインターネットをほどほどにさせることのバランスが必要であるということがわかります。(赤字は引用者による強調)
グラフは元記事でちゃんと大きいのを見て欲しいのだけど、なんか二重に「え?」と思ってしまったのだ。
ひとつは「そんな話、新聞報道には出て来なかったぞ」ってことで、もうひとつは「確かにわずかに差は出ているけど、この程度で有意な差と言えるの?」ってこと(ぼくは統計についてはど素人だ。学校で習ったことも大半忘れているので、たぶん中学校1年生程度の知識しかない。どれぐらいの差があれば有意だと言えるのかなんてわからないのだ。でも、元記事のグラフを見ただけでもトップのいくつかは差が大変に小さそうだ、1%か2%か、ということぐらいはわかる)。
元記事からもたどれるけれども、文科省の発表しているデータは、大きく4つに別れている。「調査結果のポイント」「【小学校】調査結果の概要」「【中学校】調査結果の概要」「調査結果資料」だ。ゲームやネットと正答率に関するクロス集計の結果はポイントや概要には出て来ず、小学校と中学校に別れた「調査結果資料」を見なければならない。他紙は調べていないけど、少なくとも朝日新聞は、ほんとにゲームやネットが悪者かどうかが気になる(あるいは悪者にしたい)ってことかね、などと思う。
ちなみに、小学校の調査結果資料(PDF)の該当部分は、こうなってる。

中学校の調査結果資料(PDF)では、こうだ。

上位の方は、ほんとに僅差だ。ひるがえって、正答率が低い方と上位ははっきり差がある。もっとも、これだけでなにが原因かなんてことは、もちろん言えないのだけど。
たまたまその後までめくってみたら、同じ資料の次ページとその次に「携帯電話で通話やメールをしていますか」とか「保健体育の授業時間以外に,普段(月〜金曜日),1日当たりどれくらいの時間,運動・スポーツをしますか」なんていう調査結果も出ていた。どっちも時間や頻度と正答率のクロス集計が出ている。
ちなみに、携帯電話の方ではわずかな差しかないものの「持っているけどメールには使わない」という子どもが最も正答率が低い。これは小学校でも中学校でも、どの問題分野でも同じ。
これ、ぼくにはさらにわからないことなのだけど、小学校でも中学校でも、そして、どの問題分野でも同じ傾向が出ている場合、統計の世界では「差が小さくても有意に相関がある」とみなすなんてことがあるのだろうか? ご存知の方でここをご覧になった方がいたら、教えてくれるとほんとにうれしい。
さて、運動の方は、小学校と中学校でも結果が違う。まあ「3時間以上」と「30分以上,1時間より少ない」が低い方の双璧のような結果になっているかな。「30分より少ない」とか「全くしない」よりも正答率が低かったりするのだ。これは「相関がない」ってことかなと思いつつ、でも、どの問題分野でも同じ傾向だったりすると、またよくわからなくなる。
この統計資料にはその選択肢に該当する人数や比率が併記されている。そこを意識しながら結果を見ていると、漠然とながら「同世代の平均的な生活から離れると正答率が下がっている」のではないか、なんて思いつきも頭をよぎる。そういえば、生活保護だか学費免除だかを受けている家庭と正答率に関する話も新聞で見たような、なんてことも思い出す。
もう時刻も遅いので今日は思いつきを書き留めておくだけだけど、そこら辺に着目しながら、また後で見返してみたい。新聞各紙の報道内容も、一度総まくりしてみたいと思う。
【学校とか教育とかの最新記事】
この調査は悉皆調査(全数調査)なので、このデータから、現在の小・中学生について何が言えるか、という事なのだと思います。ですから、「有意差」を考えるというより、データにどういう差があるかを見て、それが実質的にどんな意味を持つのか、というのを考えるべきなのでしょうね。
しかし、こういう調査でよく見かけるのですが、棒グラフが、解りにくいですよね…。ちゃんと、帯グラフで書くべきだと思うのですが。まあ、細かい事ですけれど。分母の違いもありますしね。
4時間以上する子どもが5%もいるのは驚異的ですが…(「ゲーム”や”インターネット」というのがポイントかも。何故この二つが纏められているのでしょうね)。
ご紹介の、ITmedia オルタナティブ・ブログの記事にある内容、ちょっと首を傾げます。調査結果として、「全くしない」人の平均正答率より、「1時間未満」の平均正答率が高いのは事実ですが、そこからただちに、「ちょっとゲームをした方が良い」、にはならないですよね。
そもそも(アンケートの際にどの様な教示があったかにもよりますが)、「全くしない」が、文字通りに、1秒もしない、という事なのか、という所とかを考えると、問いの出し方によっては、容易に変動しそうですので、「ちょっとはゲームをした方が」、は気が早いかな、と。
もしそれを言うなら、条件をコントロールした実験研究なりを行うべきで、それは、坂元章氏等によって、なされていますね。
一般論として、何事もほどほどにやらせた方がいい、というのは同意ですが、グラフから導かれる結論では無いですよね。
後は、ムツカシイ統計解析なりをすれば、もうちょっと詳しく、何かが見えるかも知れませんが、基本的には、シンプルな所から考えていくのが重要かな、と思っています。
全数調査の場合、「有意差」という考え方自体、用いることができないということのようですね。
昨日は時間がとれず、今朝になってちょっと調べてみたら、こんなページに行き当たりました。
「関係がある」と「関係がない」の間(血液型-性格関連説について)
http://www1.doshisha.ac.jp/%7Eyshibana/etc/blood/archive/research.htm
>これは、全数調査なので、統計学的推論の行えない領域で
>ある(こういうデータに「有意差」という言葉はありえな
>い)。要するに、このようなデータを評価する基準は、個
>々人で決めなければならないものなのである。
TAKESANのご説明とも合致しますね。
ということは、はがゆくても「どの設問領域でも同じ傾向が僅差で見られる」という事実が確認されたけれども、それがなにを意味するかはわからん(「まったくしない」から「2時間以内」では、ほとんど差がないと見ることもできる)……ということで我慢するしかないわけですね。
調査の詳細を見ると、四分位によるクロス=「回答者を正解数の上位から25%刻みでA層からD層までの4グループに分けたクロス集計」なんかもあります。また、「テレビを見る時間やゲームをする時間などのルールを家の人と決めていますか」(なんと半数以上が「ルールなし」または「ないも同然」のようです)、「普段(月〜金曜日),1日当たりどれくらいの時間,テレビやビデオ・DVDを見たり,聞いたりしますか」なんていう、関連があるんだかないんだか微妙な設問もあります。こういった部分をきちんと読み込んだりしたら興味深い結論が導きだせそうでもありますが、一方、なにかはっきりしたことを言うためには、また改めてそこから導きだせる仮説に特化した調査や研究を組み立てるしかないという段階のデータでしかないのかな。
文科省の「ポイント」や「概要」では触れられていないのは、そうしたことの現れでもあるのかもしれませんね。
ちなみに全国紙の報道では、朝日新聞以外に毎日新聞がゲームやネット利用の件を取り上げていましたが、産經新聞、読売新聞のサイト内検索では見つけることができませんでした。
朝日
http://www2.asahi.com/edu/chousa2007/news/TKY200710240895.html
毎日
http://mainichi.jp/life/edu/scholartest/archive/news/2007/10/20071025ddm010100157000c.html
これだけのことで朝日や毎日がネットやゲームを目の敵にしているとまで言うつもりはありませんが、コンピュータゲームやインターネットに対する関心の強さの現れではあるのでしょうね。
うーん,これ全数調査って言っていいんでしょうか?
確かに,"今年の" 小中学生全員の調査ですから,ここから「今年の小中学生はこんなかんじです」ということを言いたいだけなら全数調査と呼んでよいのでしょうが,これをもとに "最近(=近過去+近未来?)の" 小中学生の分析をしたいんですよね.多分,"最近"に含まれるのは,年単位なのではないかと.例えば,今年±5年とか.そうだとすると,母集団は「"最近の"小中学生」で,「今年の」はそこからの標本ですよね.
ところでこの棒グラフ,縦軸の最小値が 0%じゃなくて 30%なんですよね.なるべく差がありそげな印象にしたいんでしょうか.
この調査、すべての小6と中3が対象で、継続的にやるんだ、ということになっています(直近では来年もやることになっています)。が、ほんとうに全員かというと、ちょっと微妙でした(すっかり忘れていましたが・汗)。厳密には「公立校のほぼ全部」。私立は4割ぐらいが不参加だったんじゃなかったかな。あと、公立でもごく一部(たしか愛知県の犬山市教委)が不参加です。
人数的には、私立を含めても90%以上をカバーしていたと記憶していますが、全数ではないですね。
とすると、「1%の差は有意か」という問いも意味があるわけか……。危ない危ない。
ちなみに棒グラフの最小値がゼロじゃないのは、ご想像のとおりのもくろみだと思います。ただしグラフの作成者は「差をわかりやすくするため」と言うだろうと思いますが。
母集団の捉え方によるのだと思います。丁度、昼に、この事について調べものをしていて、こういうのを見つけたりしました⇒http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/mb-arc/arc020/027.html
この段落は、亀@渋研Xさんのコメントに対して。
社会調査なんかでは、文字通りの全数のデータが集まらなくても、調査しようとする対象が全数であれば、悉皆調査とは言うかと思います。国勢調査もそうですね。
当該調査の概要⇒http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/zenkoku/07032809.htm
母集団が大きいと、実際に全数を集めるのは不可能ですしね(国勢調査なんかでは、色んな理由から、調べようの無い人がいたりします…)。
で、たかぎFさんが仰るのは、単に、調査した時点での全生徒・児童を母集団として全数調査した、というだけでは無く、時間的に幅を持たせて、そこで存在し得る生徒・児童を母集団とすると、今回の対象をサンプルと看做す事が出来るのではないか、という事ですよね。
TAKESANさんが挙げておいでの掲示板のログは私も以前見つけたんですが、ちんぷんかんぷんでした(大汗
たかぎFさんのコメントについては、誤解していました、お恥ずかしい。お気づきのように「完全には網羅してない」「もっと長期に調査しないと」という意味なのかと思ってしまいました。違うんですね。
言われてみれば、「ある年の小6と中3を対象にした調査」で「ここ数年の小中学生全部の傾向」についてなにかを言おうとするのであれば、ぜんぜん全数じゃなくて、ふつうに標本調査なわけですね。
ああ飲み込みの悪い私。
下記も拝見しました。
http://seisin-isiki-karada.cocolog-nifty.com/blog/2007/10/post_d74b.html#comment-21250689
偶然による誤差とかそういうものを排除する、ってことだとは理解していたつもりですが、両方をあわせて考えることで、ちょっと自分の気持ち悪さの理由がわかった気がします。
いずれにしろ、「この調査結果からは、そんなこと(ゲームやネットを「全くしない」よりは、少しは利用したほうがいい)は言えない」わけで、ほかの部分についても「この年のこの学年ではそういう結果だった」というだけで、小さな差を根拠にして「子供たち全体の傾向」について云々するのは的外れというか早とちりというか、そんなもんだということですね。
ちがやまるさん、ほかのkikulog読者はどうかわかりませんが、ぼくはあそこを読んだのでわからなくなったのではなく、最初から「全数調査と標本調査の違い」がわかっていませんでした。また、調査の目的と調査対象の関係で全数調査といえるかどうかは変わるのに、ある対象に対する悉皆調査であれば全数調査なんだと勘違いしやすいということさえ頭に入っていませんでしたし、気づけませんでした。
統計についてちゃんと考えたり調べたりしたことのない人って、ぼく程度じゃないのかなあ、と思っちゃったらみなさんに失礼かしら(汗
> 「ある年の小6と中3を対象にした調査」で「ここ数年の小中学生全部の傾向」についてなにかを言おうとするのであれば、ぜんぜん全数じゃなくて、ふつうに標本調査
ということを言いたかったのでした.
そして,今回調査したのは小中学生全部じゃなくて小6と中3なんですね (^^; 勘違いしてました.
ということはつまり、メールを打つとき指を使うから、脳が活性化するってことでしょうか、川嶋先生?
パソコンメールの方が指5本使う分、より脳は活性化するんでしょうか?
それはさておき、何事もほどほどが一番なんですね、やっぱり。
ゲームは1時間まで、テレビも1時間まで、お菓子は500円まで。
バナナはお菓子ですかとはもう聞きません。でも、ドライマンゴはお菓子ですか?
って、それがいいたかっただけですけど。