平仮名の作文、「八つ」を「はちつ」=国語力低下、教師9割が実感−岩波書店調査この記事を参照してブログ記事を書いている人は、今の時点で30人ほど。ほとんどが「小学生の国語力は下がった」という話として受け止めて書いている。ううむぅ。
12月8日14時30分配信 時事通信
「八つ」を「はちつ」、平仮名だけで作文−。小学生の国語力が低下していると感じる教師が約9割に上ることが8日、「岩波書店」(東京都千代田区)が教師100人を対象に行った調査で分かった。同社は「現場の先生が危機感を持っている表れではないか」としている。
調査結果によると、国語力について「非常に低下」とした教師は15人で、「やや低下」の73人と合わせるとほぼ9割に達した。「全く低下していない」との回答は皆無だった。
具体例を挙げてもらったところ、4年生が「八つ」を「はちつ」と誤読したほか、数え方を知らずに、何でも「個」とする児童がいたという。
最終更新:12月8日14時30分
このニュースについて、TAKESANさんが
うーむ。と書いていた、
この記事を見せて、「他にどういう情報が書かれていれば、良い記事と言えるか、挙げてみましょう」、と問えば、いい練習問題になるんじゃないですかね。
投稿 TAKESAN | 2007年12月 8日 (土) 18:55
そこで、無謀にも必要な情報を補ったようなふりをした記事に、リライトしてみた。職業柄、やってみなきゃと思ったのだ。で、あっちに書いたのだけど、こっちでもご紹介して「ここが足りない」とかいうご指南をいただければと思う。ではご披露。じゃんじゃじゃーん。
-----以下、捏造記事------
岩波書店が、教員100名へ「児童の国語力低下」に関する意識調査
「岩波書店」(東京都千代田区)が行った「児童の国語力の低下に関する意識調査」によると、調査対象となった教師の9割が、小学生の国語力が低下していると感じると回答していることが8日、分かった。同社は「現場の先生が危機感を持っている表れではないか」としている。
【調査対象は、全国の勤続×年〜×年の小学校教員100人で、無作為に選んだ全国100校の小学校に依頼したもの。】【構成は、国公立小学校の教員が×割、私立小学校の教員が×割、40歳以上が×割、39歳以下が×割を占める。】【調査方法は、選択式アンケートと記述による回答の組み合わせ。】【設問は、現在担任している児童(小学校×年生から×年生)の国語力の低下に関する印象を、×〜×年以上前に担任した小学生と比較させたもの。】【「全く低下していない」から「非常に低下」の×段階の選択肢から回答を選択し、さらにその理由を自由回答で記述させた。】
調査結果によると、国語力について「非常に低下」とした教師は15人で、「やや低下」の73人と合わせるとほぼ9割に達した。「全く低下していない」との回答は皆無だった。
具体例を挙げてもらったところ、4年生が「八つ」を「はちつ」と誤読したほか、数え方を知らずに、何でも「個」とする【×年生】がいたという。
【東都大学教育学・山田一郎教授の話:サンプルが100人と少ないのでこれだけで児童の国語力の変化を語れないのはもちろん、全国の教員の意識を代表させるのも難しい。しかし、首都圏の小学校教員の多くが、小学生の国語力が下がったととらえている可能性が高いということはわかる。ただし、設問が低下を前提とした構成になっているために、ある程度は割り引いて考える必要があるだろう。彼らがなぜ児童の国語力が下がったと考えているのか、その原因が学校にあると考えているのか、それとも家庭やその他の要因にあると考えているのかといった部分まで踏み込み、さらにその印象が妥当なものかまで検証できるとおもしろい調査になったかもしれない。それだけに、安直な設問が惜しまれる。】
-----捏造記事ここまで------
もちろん【 】内は、ぼくが勝手に補った部分。
補った要素は、調査目的、調査対象とその選び方、調査対象の構成というか属性、調査方法や設問、選択式の場合の選択肢、比較を聞いているので比較対象、識者コメントといったところ。
ただし、調査目的については、勝手に補ったものだが【 】には入れていない。なぜなら、選択肢の一方の極のように「全く低下していない」が挙げられているので、「児童の『国語力の低下』」に関する調査であり、しかも、定量的でも定性的でもないようなので意識調査としか言えないのは疑いないところだから。
あ、そういうことを考えると、本当は同じ勤務地に継続勤務しているのかどうかも、データとして必要かもしれない。
TAKESANさんちのコメント欄には、【 】内の要素が変わった場合もちょっと書いてみた。いろいろ変えてみると、その部分がないことで(つまり、読者それぞれに撮っての期待値通りの理想的な記事を脳内に描いてしまうことで)どういう誘導が生じてしまうかがわかってくるんじゃないだろうか。
ほかに、いたずらなアオリや、誤解を生じそうな語順・説明などの表現も改めたつもり。その分、キャッチ―ではなくなってしまった。しかし「下がってるよね? ね?」と聞いたら「うん」と言われた、という話なのでなあ(そこは、ほぼ間違いない)。「下がっているとわかった」のではなくて、「下がっていると思っている教員が多いことがわかった」わけだし。そんなに派手な見出しをつけるのもどうかと思うぞ。
しかし、これ、必ずしも「時事通信はダメな記事を配信している」とは言い切れないところもある。派手な見出しを付けるのは、配信先の新聞社の目に留まって記事を買ってもらう(採用してもらう)必要があるのかもしれない(契約形態が「採用した数に応じて支払い」なのか「毎月決まった金額だけ」なのかを知らないから、間違っているかもしれないけど)。また、説明不足なのは、岩波とはいえ一出版社のごく小規模な、統計的にはあまり意味があるとも思えない調査の話だから、大きな記事にはされないと判断したためとも考えられる。
でもね、肝心なことがこの元記事では伝わってないんじゃないかとは思う。その点では、配信先に媚びすぎたんだと思います。
ちなみに、全国紙にはこの件についての記事は見当たらない。地方紙も、ネットに掲載している分にはなさそげ。ぶっちゃけ、時事通信系のニュースサイト以外ではyahooやgoo、exciteなどのオンライン・ニュースにしか流れなかったんじゃないかしら。さて、この営業戦術は成功したというべきか否か。
いや、実際に小学校で何年も教えている先生に話を聞くと、子どもと言わず親と言わず、国語力というかコミュニケーション能力が下がっている、いやいやお子ちゃま化・暴君化が進んでいる人が「一部にいる」「増えている」という印象を持っていることは、おそらく容易に確認できます。
しかし、そこから「小学生の国語力が下がっているのかどうか」なんて、わからんのですよ。「下がっているように思える」ということと、「本当に下がっている」は別の話なのであります。
追記:
こんな国語力なんて要らない(今日行く審議会@はてな)
岩波が何の目的か,全くの親切心か,こんな報道をさせ,それに乗って子どもの学力について嘆いてみせる大人がいるなら,そんな「国語力」なんぞ要らない。痛烈、苛烈。
(略)
こんな国語力などを心配する前に,目の前にいる,近くにいる子どもの顔を見て話しかけてみたらと思う。そうしたことをまずやればと思う。「はちつ」と言い間違えたその子どもの話をまず聞いてみたらと思う。
お家大事。(小学校笑いぐさ日記)
「もしかして教師の教える能力が低下してるだけではないのか?」報道の内容はともかく、目の前の子どもたちの話になると、やっぱり親の話になる小1の担任をしている先生のブログ。
とか言われると、返す言葉はないんですけど……。
でも、一体、家ではどんな会話をしてるんだろう、と不思議になります。
日本語が母語のはずなのに……。
引用した部分のあとに出てくる事例が、なかなかツーンと来ます。あるよね、こういうこと。
なんだかうれしいのでトラックバック!
が……むう。
送信失敗: http://d.hatena.ne.jp/filinion/20071210/1197291425
送信失敗: http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20071209/1197134733
送信失敗: http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/13103/6839277
なのであった……(-_-)
【学校とか教育とかの最新記事】
といえば、それはもう辞書を買いましょうってことですね。
昨日、食事してたら隣の席の兄ちゃんが、「赤なんとか……」って頼んでました。それって「赤味噌」なんですけど。そっか、そこらへんからもう分かんないんだ……と痛感。やっぱり本は総ルビにしないとダメ?
せっかくなので、こちらからトラックバックを送信し……た、はずなんですが……おや?
>「赤なんとか」
あー。
でも、私も、以前和食レストランに入ったら、「丼ぶり物」というカテゴリのメニューがあって。
「親子丼ぶり」「海鮮丼ぶり」などのメニューを“正しく”読めなかった、という経験が……。
赤だし、定食屋のみそ汁では定番ですね。ぼく、ふつうのみそ汁の方が好きです。って、そういう話じゃありませんね。
filinionさん、わざわざのお越しをありがとうございます。いつも拝見してます。日常ネタも好きですが、子どもたちとのやりとりを読むのが大好きで、周囲にもオススメしています(^^)
そちらからのTBは、ちゃんと表示されたようで。こちらからも再度挑戦……あ、今度は送れた。