2007年12月18日

PISA「科学リテラシー」の定義

2007年12月07日の〈PISAが測っているのは「学力」「応用力」ではない」〉に、何件かのトラックバックをいただいた。珍しや、ありがたや。
なかで、下記の記事で、ちょっとだけ気になったことがある。

科学リテラシー(2)(海洋学研究者の日常 2007年12月17日)

「科学的リテラシー」に関するPISAの定義を引用した後、こう述べられている。
ここでは、「科学的知識とその活用」は単なる暗記の対象ではなくて、「疑問を認識し、新しい知識を獲得し、科学的な事象を説明し、科学が関連する諸問題について証拠に基づいた結論を導き出すため」の道具であり、4項目の一つに過ぎないことが述べられており、かなり納得した。他の3項目には原則として同意するものの、その表現が抽象的で良く分からない。その具体的内容については、今後、さらに調べてから言及したい。
「え? 理系の研究者の方にとっても抽象的なの?」というのが最初の驚きだった。が、ひょっとすると使われている文言が身近な概念ゆえに、「この言葉をどういう意味で使っているのだろう」なんていう気になり方もあるのかなあ、などとも思ったり。

blog主のhiroichiさんは、すでにもっと詳細な情報にたどり着いているかもしれないのだが、「同じように『定義そのものがよくわからん』と感じている人は、ほかにもいるかも」「ていうか、日頃から科学がどうこう考えていない人間にとっては、なぞに満ちているかも」「確か、もうちょっと詳しい定義を、前に見たなあ」などとも思う。
そこでググってみたら、これだったかも、という資料を再発見したので、ご紹介する。

まずは、繰り返しになるけどPISA 2006での定義を再録。
科学的リテラシーは、個々人の次の能力に注目する。
  • 疑問を認識し、新しい知識を獲得し、科学的な事象を説明し、科学が関連する諸問題について証拠に基づいた結論を導き出すための科学的知識とその活用。
  • 科学の特徴的な諸側面を人間の知識と探究の一形態として理解すること。
  • 科学とテクノロジーが我々の物質的、知的、文化的環境をいかに形作っているかを認識すること。
  • 思慮深い一市民として、科学的な考えを持ち、科学が関連する諸問題に、自ら進んで関わること。
うーむ。「科学の特徴的な諸側面」とか「科学的な考え」とかって、自明ではないかもだなあ。

再発見したのは下記。

小学校理科・中学校理科・高等学校理科 指導資料
−PISA2003(科学的リテラシー)及びTIMSS2003(理科)結果の分析と指導改善の方向−
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05071301.htm

からリンクされている下記の資料が、先に引用したPISA 2006の概要よりもちょっと詳しい。

第1章 PISA2003調査−科学的リテラシー−
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku/siryo/05071301/001.pdf
1 PISA調査における科学的リテラシーの定義

科学的リテラシーとは,「自然界及び人間の活動によって起こる自然界の変化について理解し,意思決定するために,科学的知識を使用し,課題を明確にし,証拠に基づく結論を導き出す能力」である。

2 科学的リテラシー調査の能力設定と分析の観点

(1)科学的リテラシーの3つの側面
  • 科学的知識・概念: 物理学,化学,生物学などの各分野から選択され,力と運動,生命の多様性,生理的変化などの多くのテーマから導かれる。
  • 科学的プロセス: 次の3つのプロセスに分類される。
    プロセス1:科学的現象を記述し,説明し,予測すること
    プロセス2:科学的探究を理解すること
    プロセス3:科学的証拠と科学的結論を解釈すること
  • 科学的状況・文脈: 生活と健康,地球と環境,技術について,日常生活における様々な状況で科学を用いること。
前段はPISA 2006での記述と大差ないが、後段はより具体的と言えそう。特に「科学的プロセス」に関する記述は、科学の専門家にとっては自明でも、ぼくたち門外漢には自明とは言いがたい。

たとえば「科学的現象」というのは、あまり馴染みがない表現だ。狭く考えれば「科学の世界で名前がつけられているような現象」のことかもしれないが、ぼくら素人向きには「観測可能な事柄」「繰り返し確認可能な事柄」ぐらいの理解でも、大筋では間違っていないのではないかと思う。同じ項目に「記述し」とあるのは、その意味で「誰もが同じ現象のことを想起できるように明確に定義しながら記述する」というような含みがあるのだろうと思うので。
「科学的探究」というのも門外漢にはつらい。「科学的証拠」「科学的結論」も同様かな。しかも「探求」は「理解する」で、「証拠」「結論」は「解釈する」だよ。日常の生活感覚では、証拠はともかく結論は、たぶん解釈するものじゃないよね。

なんだか繰り返しみたいになるが、この「3つのプロセス」というのは、要は「科学的な方法とはどういうものかを理解して、使える」ということを言いたいはずだ。ということは、ここでいう「探求」も「証拠」「結論」も、科学的方法論に則った使い方で、というような意味合いがあるわけだ。つまり、科学的じゃない探求の方法や結論の導き方があるのだということは、すぐに想像がつく。
これもまた重言(「馬から落馬する」など)めくが、ぼくら門外漢にとっては「証拠に基づいた検討」ということと、「飛躍やすりかえのない検討」ということが重要だろう。

これ以上詳しい話は、「科学的方法」や「科学的方法論」をWikipediaGoogleででも調べてみよう。他力本願だけど。Googleの方は、ありがちな誤解まで出てくるよ。

あ、そうそう。調べるというのは、第一歩としてさらに重要かも(^^;;


posted by 亀@渋研X at 03:08 | Comment(0) | TrackBack(2) | 学校とか教育とか | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - PISA「科学リテラシー」の定義
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