2007年12月30日

雪は天からの手紙 - 中谷宇吉郎

2000年の番組ですが、さっき気づきました。Sky Perfect TV サイエンスチャンネル実験!発見!歴史科学館」の第一話です。

雪は天からの手紙 中谷宇吉郎」(29分。視聴にはReal Playerが必要です。Win版Mac版

伝記的な内容もおさえつつ、業績を紹介しています。もちろん、雪の結晶(水の氷結結晶、氷の結晶)の形状が決まるメカニズムや中谷ダイアグラム、「雪は天からの手紙」という言葉の意味も。家庭でもできる、ちょっとした実験も紹介されています。

さて、なんでこれを採り上げるのか。もちろん、いい番組だってこともありますが、たまたま見ちゃった下記の記事があんまりだと思ったのです。

江本勝の日記ウェブサイト( www.masaru-emoto.net/newemoto2/ )より。
2007年12月14日(金) 読者からの質問25
(略)
【質問】 (ジャエルさん、アメリカ、34歳、主婦)

愛、嫌悪といった感情を受けた水が氷結して異なる結果が結晶に表れるなら、空から降る雪片も同じことでしょうか?凶悪犯罪で知られる町からの雪は普通の町とは違う形になるのでしょうか?


【回答】
「雪は天からの手紙」という名言を、世界的に有名な雪の結晶の研究者である、故中谷宇一郎先生(北大の教授)は残しています。ですから答えはYESです。
もう、どっからどう突っ込んだものか。

江本勝(wikipedia)が中谷宇吉郎(Wikipedia)に言及すること自体が驚きです。彼の主張(言葉や思念が水の氷結結晶=氷の結晶=雪の結晶の形に影響を与える)は、中谷宇吉郎の業績と真正面から衝突するからです。

いったいどういうことか。
可能性1)江本は中谷宇吉郎の名前や『雪は天からの手紙』(amazon)という随筆の存在(あるいは、その言葉の断片)を知っていても、その内容までは読んだことがないのに上記のようなことを言っている。
可能性2)雪の結晶の形が決まるメカニズム(空気中の水分量と気温の関係)を明らかにした中谷ダイアグラムの存在も内容も理解し、自説が無茶なこともわかっているが、それをあえて無視して上記のようなことを言ったり、『水からの伝言』(wikipedia)だの『水は答えを知っている』なんてもんを書いた。
可能性3)中谷宇吉郎が「エラい人だ」という知識はあるが、研究内容が理解できなかったために、自説と相反するものだということがわからなかった。そのため矛盾を感じていない(前述の番組を見ればわかるが、雪の結晶の形状の話は、小学校高学年ぐらいで理解できる内容だ。江本の主張とは相反するということも含めて)。
可能性4)『水からの伝言』だの『水は答えを知っている』なんてもんを書いた頃は中谷宇吉郎も彼の業績も知らなかった。→最近知ったが理解できていない。→最近知ったが読んでいない。→最近知り理解できたが無視している。
可能性5)中谷宇吉郎の業績はとっくに知っていたが、「自説とは矛盾しない、両立すると考えている」と強弁すれば済むと考えている。

ほかにも組み合わせ方があるかもしれませんが、どれだとしても、ひどすぎる!

どれでもひどいけれども、いちばん悪質なのは「可能性2」か「5」で、同時に、最もありそうなのも「2」か「5」でしょう。というのは、氷の結晶について研究していて中谷宇吉郎を知らないってことは考えにくいし、彼の業績や、それが自説に対する最大の反論になるってことが理解できないとは考えられないし。

しかも、そうだとすると、ああやって言及しているということは、「全部わかってやってる」ってことがバレても構わないと考えている(たかをくくっている?)ってこと……かな??? いや、そうだろう、そうに違いないと考えてはいたものの、これって、あまりにもあからさまで……驚嘆を禁じえないというかなんというか……。

中谷先生がご存命なら泣くぞ!(いや、とっくに草葉の陰で、泣き、怒り、呆れておいでだと思いますけどね)
posted by 亀@渋研X at 21:52 | Comment(8) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 雪は天からの手紙 - 中谷宇吉郎
この記事へのコメント
今晩は。

これは…。
引用された「回答」、相当程度に悪質ですね。意図的にでも確信的にでも、いずれにしても、ちょっと考えられない援用の仕方だと思います。

質問者も、かなりナイーブですが…。

絶句する内容ですよね。コアではこういうやり取りがなされいるのを考えると、尋常で無い、と言わざるを得ないです。江本氏の日記を久しぶりに見ましたが、やはり、「実験」を仄めかしていますね。水伝の表面的な所に賛同している人が、あれを見たら、どう認識するでしょうね。なんだこれは、と思うか、これは凄い、と思うか…。
Posted by TAKESAN at 2007年12月30日 23:40
回答をよく読むと、「ですから」以降と前の文とは全然関係ないですね。
つまるところ、他の科学者も認めていると思わせる印象操作かと。

どちらにせよ悪質と言わざるを得ないですね。
Posted by OSATO at 2007年12月31日 00:59
TAKESANさん
〈2007年12月4日(火) 読者からの質問23〉で「それでは以下に研究所での実験方法を記します。」と説明していますね。明らかに実験のつもりなわけです。
一方で4日後の〈2007年12月8日(土) 「さあ5次元の波動へ 宇宙の仕組みがこう変わります」〉の対談?では、相変わらず「ぼくは、一言もこれが科学であるとか、言っていない。むしろ、ぼくは科学者ではありません、一介の研究者だと キチンと断っているにもかかわらず・・・・・・」なんて言っている。
「科学的方法論によらない物性に関する研究があり得る」とでもいうつもりなんでしょうか。そりゃ研究じゃなくて修行かなんかです。

OSATOさん
ひょっとすると「中谷宇一郎」という誤記も、ミスタイプとかじゃなくてツッコミをかわすためのテクニックなんじゃないか、なんて思ってしまいます。
Posted by 亀@渋研X at 2007年12月31日 01:59
ああ、やっぱり今さらな話だったのかも。
下記のページ、ファイル名から2001年9月のものと推測できますが、やはり中谷宇吉郎のが引用されています。

www.hado.com/LABO/mizu-kao%202001.9.htm

しかも、こんな調子。

> 「雪は天から送られた手紙である」雪の結晶研究で有名な中谷宇吉郎博士は、雪の結晶を分析すれば上空の大気の状態がわかることから、このような叙情的メッセージを残しました。水も同じように、様々な記憶を持っていることは、この「水の顔」のページで皆さんに紹介してきた通りです。今回は「天からの手紙」で、ある雨水を氷結結晶観察の視点から読んでみることにしましょう。

ちゃんと「雪の結晶を分析すれば上空の大気の状態がわかる」という話だと理解していますね。しかも、それを直後に「記憶」とすり替えている(一読しただけだと、比喩かと思ってしまいそうです)。
Posted by 亀@渋研X at 2007年12月31日 02:20
こちらでははじめましての、No.4560です。

1995年に発売された江本勝「波動と水と生命と」(PHP研究所)
http://www.amazon.co.jp/dp/4569546994
のp.175-p.177に、中谷宇吉郎の業績とともに、「雪は天から送られた手紙である」という言葉と中谷ダイヤグラム(図そのものは小林禎作によるもの)も掲載していますので、少なくとも95年以降に関して「可能性1」「4」はないです。
(氷結写真の撮影開始は、著書によれば94年。)


僕も同じく「可能性2」「5」な印象ですが、さらに個人的な妄想を付け加えると、
一連の(文字を見せた)氷結写真の撮影行為自体が、中谷ダイヤグラムと「雪は天から送られた手紙」という言葉から着想を得たのかな、と思うときもあります。

要は「氷結写真は江本勝氏からの手紙」というか、氷結写真の撮影具合のコントロールさえできれば、後は自分の波動思想を好きなだけ盛り込めるということに、撮影しながら気付いたんじゃないかなぁ、と。

もちろん、本人に聞かないと分かりません。
Posted by No.4560 at 2007年12月31日 07:20
こんにちは。

本来なら、中谷宇吉郎の研究を詳しく知れば、江本の話がたわごとであると気付いてしまうはずですが、「水伝」を信じてしまうような人の心理を鑑みると、江本自らが中谷宇吉郎の研究について多く言及することで、読者を「知ってるつもり」にさせ、1次情報に当たらせないことを狙っている・・・と考えるのは読みすぎでしょうかね。
Posted by A-WING at 2007年12月31日 10:27
No.4560さん
あらら、そんなに前から。10年以上経っても理解できないなんてことは、考えにくいですけど、言い続けているうちに自分のウソを自分で信じてしまうという現象があることも知られているし、そうなるとインタビューできても真相は闇のなかですが。

A-WINGさん
そこまで含めて全部計算づくっていうこともあるのかもしれませんね。
「全部わかっていて、どうすれば逃げ切れるかを考えている」のかもしれないと考えると、悪質とかいうよりも不気味ですが。
Posted by 亀@渋研X at 2007年12月31日 14:02
このエントリではあえて「両立すると本気で考えている」という可能性は挙げませんでした。見せかけはそういう言説をする人がいても、本気ではないはずだと考えていたのです。

が、両者は別々の話=両立すると言っている人の実在を思いだしてしまいました。御茶大乱訴事件の吉岡原告です。あの人の場合、本気かもしれない。
彼のサイト(minusionwater.com)のいくつかの記事で、このような主張をしています。

・中谷ダイアグラムは気相の話で、水伝は液相の話
・中谷先生がご存命なら関心を示したに違いない

で、北大の低温研で実験すればいいのに、とか言ってます。

いや、あの、水伝と水伝批判の両方を勘違いしているとしか思えない書きっぷりなのではありますが。

あああ、それが本当にあるのか! と驚愕したので記録。
Posted by 亀@渋研X at 2008年01月13日 07:35
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