2008年01月12日

実用としての「ニセ科学の見分け方」2

「見分け方」と定義の整合性について、もう少し思いをめぐらせてみる。

apj氏は、暫定的にと断りながらだがニセ科学を「科学を装う」かつ「科学でない」と定義している(ニセ科学の定義と判定について考える )。前記のような「見分け方」は、この定義とも矛盾しない。
というよりも、「科学でない」しかも「科学を装う」という表現は、前記のような基準を最も短くまとめた的確な要約となっているとさえ言えそうだ。

「装う」という表現は、人によっては意図を感じさせるかもしれない。主張Aの提唱者は、意図的に科学を装っているわけではなく、そもそも科学を理解していない場合さえありうる。意図はなくとも結果的に装うことになったということはあり得るのだが、これでは違和感があるという場合もあるだろう。
その場合、よりニュートラルな表現として、先の定義になぞらえて「科学であると誤解される可能性がある」とか「専門家は科学的でないと判断できても、ふつうの人は科学的な主張と勘違いする可能性がある」などと表現するとしたら、これは不適切な言い換えだろうか。

ここで「誤解する人などいない」「勘違いなどしない」「どれだけの人が誤解したのか」といった反論があるかもしれない。しかし、これは前記「見分け方」のような素朴な理解に対しては無力ではないか。「誰が」とか「何人」などといった問題ではないからだ。

言い換えれば、「科学でない」しかも「科学を装う」という表現や、「一般の人に科学であると誤解される可能性がある」とか「専門家は科学的でないと判断できても、ふつうの人は科学的な主張と勘違いする可能性がある」といった表現でも、実用上は特に問題はないことにならないか。


ニセ科学であるという指摘は、ある主張に「間違い」や「欺瞞」が含まれるという指摘となる。したがって自動的に批判を含む。このことを理由に、「その主張は個人や社会にとって有害か否か」「有害だとして、どういう害があるのか」といった点や、そうした場合の被害の程度がニセ科学か否かの判断に加わっているのではないか、あるいはニセ科学批判はそもそも道徳的問題であって科学的問題ではないのではないかという意見がある。
しかし、なにがニセ科学かという判定と、批判するか否か=ある主張を話題として採り上げるか否かの判定は、あくまで別の問題だ。なぜ批判するかは論者により、問題とされる主張によって異なっているからだ(この辺は、apjさんも前掲のエントリなどで同様のことをすでに指摘しておいでだ)。

たとえば「間違った言説を正しいかのごとく語ることは問題だ」というところを(倫理上、論理上、学問上のどの問題としてであれ)出発点としている論者は、批判すべき「間違った言説」の一部をニセ科学に分類していることになる。倫理的な動機にしろなんにしろ、「科学的かどうか」とは別の基準が先にあることには違いなく、この手の論者に限って言えば「そもそも科学的かどうかを問題にしているのではないだろう」という指摘は、あながち間違ってはいないことになる。
実はぼく自身がそうだ。「どこが間違っているか」という問題と比べると、「どういう要件をそなえていればニセ科学か」という問題は、どう考えても副次的なお題に過ぎない。つまり、論者によっては「それがニセ科学かどうか」は、ある問題の一側面に過ぎない場合があるのだ。
ということは、害の有無やその内容、程度に関する問いかけと、ニセ科学か否かという問いかけは、それぞれ独立しており相互に必要不可欠な要件ではないことになる。害の有無やその内容、程度に関する判定は、自分はなぜその問題を採り上げるのか、なぜ重要だと考えるかといった優先順位の説明には役立つが、それは個々の論者の個人的な問題でしかないわけだ。

さらに言うと、ニセ科学であるか否かという問いかけは、害の有無やその内容、程度を判定する不可欠な要件にもならない。どのように組み合わせてみても同じだ。害がなければニセ科学ではないということにも、ニセ科学でなければ害がないということにもならないし、ニセ科学でなければ批判されないということにも、批判されなければニセ科学ではないということにもならない。あり得るのは、ある論者は害が小さいとみなせば優先的には批判しないかもしれないとか、ある論者が批判していないということは、その論者は優先度を低く見積もっていたり、問題性に気づいていないのかもしれないということだけだ。

posted by 亀@渋研X at 04:48 | Comment(0) | TrackBack(0) | そもそも | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 実用としての「ニセ科学の見分け方」2
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