2008年05月18日

「波動」関連で集団訴訟の見通し

波動」関連商品の販売者に対して、「虚偽の説明で高額な商品を買わされた」と集団訴訟が起こされる見通しだという報道がありました(見通しであって、まだ訴訟が行われたわけではありません)。

「障害が治る水とだまされた」 主婦ら販売会社を提訴へ(asahi.com 2008年05月17日)[魚拓
http://www.asahi.com/national/update/0514/OSK200805140093.html

西日本では15日の朝日新聞朝刊社会面(31面)にも、ほぼ同じ内容の記事が掲載されていたようです。kikulogでは、その段階でエントリが上がっていました。
東京版では、まだ確認できていません。18日の朝刊には出るのかな? それとも17日の夕刊に出たのかな? 夕刊は取ってないからなー。

あ、念のため。「波動」は代表的なニセ科学のひとつで、物理学なんかでいう「波動」とはなんの関係もありません。「水からの伝言」の原理説明にも出てきます。ご存じなかった方は、「基礎知識」の「波動」あたりもご参照ください。

今回の訴訟、記事ではわかりにくいのですが、以下のようなことと読み取れます。

  • 訴訟を準備しているのは会員の一部(全体で約1万4千人の会員のうち約80人)。
  • 原告になるのは40〜70代の主婦や元会社員ら6人の予定で、知的障碍がある子どもの母親や高齢者。
  • 販売会社「バイオシーパルス」(福岡市博多区)、同社社長、「日本波動科学研究会」に対する損害賠償請求となる見通し。
  • 損害額は、総額約2億6千万円。賠償請求額は総額1億円。
  • 「バイオシーパルス」は「波動測定器」(約60万円)や、「波動」を水に転写するという「パワーウェーブ」(約18万円)を販売している。
  • 「日本波動科学研究会」は、「波動エネルギー」を研究して会員に情報を提供している。
  • 原告の主張は2点。ひとつは、販売者から「波動水を1日2リットルほど飲めば、痛みが消えたり、病気が治ったりする」という商品説明があったというもの。
  • もう一点は、購入時に、会員になることで大幅な割引が受けられ、再販売で利益を上げられる、売れなくてもバ社が販売すると説明を受けたというもの。
  • バ社側は、病気が治るとは言っていないし、販売方法も違法ではないと全面的に反論。
  • バ社社長は、医療行為のようなことをしていたのはごく一部の販売員。波動は民間療法。販売方法も問題はないと主張。
  • また、訴訟準備を進めている会員には、解約に応じる予定。ただし解約料や販売マージンなどを差し引くし、時間がかかるとしている。



いくつかのポイントがあると思いますが、治療効果をうたったマルチ商法だったとして、高齢者や障碍をもつ家庭がターゲットにされたという点が、悲痛だと思います。

こんなブログに来てくれる方はすでにご承知のことでしょうけれども、代替医療を選んでしまう人には、それぞれなんらかの理由があるわけです。必ずしも雰囲気で選んでしまった、検討不足な場合だけではないでしょう。ふつうでは希望が持ちにくい場合、その現実を受け入れ難いために代替医療を頼ってしまうこともあるわけです。一般の現代医療ではどうにもならないものは、いろいろあります。人間関係であったり、老いであったり、障碍であったり、治療法が確立されていない病気であったり、高額な費用がかかるものであったり。
代替医療の提供者は、そのつもりのない善意の人であっても、その、まさに「わらにもすがる思い」につけこむような想いにつけ込むことになってしまうわけです。

バ社の場合、「治るとは言っていない」という話と、「民間療法と説明している」という話は、つじつまが合っていないように思いますが、一定の期待をあおったのであれば、道義的にはもちろん法的にも免責されるようなものではないはずです。


asahi.comの記事を読むと、会員制の販売ネットワーク、いわゆるMLM(マルチレベルマーケティング、マルチ商法)と呼ばれるものみたいです。最近はマルチといわず、「ネットワークビジネス」と称するケースが多いようですね。
ちなみに、ぼくは「マルチ=違法」であって、「合法」と言っている人は勘違いか強弁しているのではなかろうか、なんて考えていました。しかし、これはぼくが間違っていたようです。

マルチ&悪徳商法 SOS-FILE「苦情の坩堝」
http://www.sos-file.com/

というサイトの「MLM・マルチ商法・ネットワークビジネスってなあに?」には次のように書かれています。
マルチ商法は「連鎖取引販売」と言う名称で、これ事態(原文ママ)は違法ではありません。ただ、販売を行う人たちが嘘をついたり、話を大げさに広げたりの違法行為を働くケースが多いのです。
まあ、「違法行為を働くケースが多い」というのであれば、変な目に遭いたくなければ手を出さない方が安心ではあります。「どっちにしろ危ない」という意味では、「違法」でも「違法なことが多い」でも変わりません。
ニセ科学やオカルト「かもしれないもの」と同じですね。


上記のサイト「苦情の坩堝」は、この訴訟についての情報を探していて見つけたものです。肯定派の意見も出ていたりして、なかなか興味深いサイトです。
掲示板にはバ社についての投稿もありました。今回の報道についても。

下記に同社についての過去ログがまとめられています。
http://www.sos-file.com/sossos/h_BaioCP.htm
http://www.sos-file.com/sossos/h_BaioCP2.htm


また、波動がらみの訴訟で、ちょっと古い話を見つけました。

「folomy化学の広場」( http://fchem.folomy.jp/ )というniftyの化学フォーラムを前身とするコミュニティでの、2002-03年のやりとりです。有名な話なのかもしれませんが、ぼくは知りませんでした。

化学の広場ホームページ>過去の話題>疑似>波動測定器敗訴
http://sci.la.coocan.jp/fchem/log/giji/5.html

投稿者のCOLT氏は、波動の総本家みたいな「サトルエネルギー学会」に入っては失望して退会ということを二度ほどされておいでなのだそうで、同学会のダメさについてもちょっと書いています。

ログの最後(2003/01/28)に当事者の一方(被告)から聴いたという、判決の概要が出ています。最初に出てくる概要は事実関係がかなり間違っていて、それを訂正するために投稿されたようです。
ちょっとわかりにくいので、ここに概要をまとめてみます。

原告は波動測定器の販売者H氏、被告は購入者であるY氏とされています。

波動測定器の購入に際して、購入者(被告Y氏)は販売者(原告H氏)に毎年3万円を5年間支払うという契約があった。しかし、被告である購入者H氏が支払わない。そのため、契約不履行で訴えられた。
しかし、二重盲検法による実験の結果、波動測定器には販売者がいうような機能は認められなかった。つまり商品説明が虚偽であったことが確認されたので、購入者に支払いの義務はない、という判決が出た。つまり原告敗訴ですね。一審、二審で原告が敗訴し、最高裁まで上告されたものの、棄却で結審……という流れのようです。

波動測定器といっても一種類ではないことは知っています。また、かつて実験が行われたことも(それとこれが同じかどうかはわかりませんが)。
ですが、こういう「実験で機能が否定された結果、裁判でも販売者側が敗訴している」という事例が、もう少し知られていてもいいのになあ、なんて思ったので書いておきます。
posted by 亀@渋研X at 02:42 | Comment(2) | TrackBack(0) | 渋研X的日乗 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする はてなブックマーク - 「波動」関連で集団訴訟の見通し
この記事へのコメント
京は墓掃除。
今日の朝刊にも出てませんでした。
Posted by 亀@鎌倉霊園 at 2008年05月18日 15:25
>京は墓掃除。

なんじゃそら。_| ̄|○
「今日は」であります。とほほ。
雑草除けシート、活躍中です。が、シートの上に土を盛っては効果が半減ですね、当たり前だけど。少ない量の土でも、そこに雑草が生える。いや、シートがないよりはずーっといいんですよ。抜きやすいし。でも、せっかくシートを敷くならさあ。
とはいえ、金を払って玉砂利を入れるのもなあ……。
Posted by 亀@渋研X at 2008年05月18日 20:23
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